第3話
装備やらを作るにあたって【物質生成】という能力を使うわけだが。
この能力は0から魔力を使って物質を作ることもできるが、もとからある素材を使って物を生成することもできる。
素材を使うことによって消費する魔力を軽減することができるのだ。
正直今の俺の魔力は0から物質を作るのには心もとないので、その辺は魔力の消費をケチっていこう。
とりあえずボロッボロの布切れを集めてそこから丈夫な服を作る。
この世界の低級冒険者がよく着ている服だ。
茶色とベージュの中間の地味ぃーな色合いをしていて少し野暮ったい感じの服だな。
そして冒険者に扮するなら武器も作っておく必要がある。武器を持ってない冒険者とかいないからな。
そこいらの木切れを集めて圧縮して木刀を作る。
こんなものでも低級冒険者の装備の中ではましな方に分類されるのが、この世界の低級冒険者の底辺っぷりを物語ってる。
低級冒険者はそれこそ何回か殴ったら折れるような、そこらへんで拾った木の棒を武器に使ってたりするからな。
逆に言うとこんな装備でも食っていける分、そこまで過酷じゃないのかもしれん。
いや低級冒険者の9割くらいが低級冒険者のまま抜け出せずにスラムに転がる死体になると考えればそんなことないか。
あとはそこそこデカい背負い袋も作っていく、できれば内部拡張系の魔法を使って容量を増やしたいのだが……魔力が足りない。
【物質生成】は魔力さえあればなんでも作れるチートな能力なんだが、さすがに元となる魔力が足りなければ大したものは作れないからな。
今の俺の魔力量ではしおしおになるまで魔力を込めても無理だった。
とりあえずこれで装備がととのったわけだが。
次に何をするかと言うと。
何はなくとも能力の向上というか戦闘能力の向上が急務だ。この世界で戦闘能力の向上に手っ取り早い方法は魔力を上げることだな。
何せ魔力を使うことによって筋力やら敏捷性やら身体能力を上げることができる世界なので。
もちろんジョギングや筋トレなんかをして身体能力を上げることもできるが、魔力を上げるほうが恩恵が大きいのだ。
それを置いといても俺の場合は魔力の量が重要だが。
この世界で手っ取り早く魔力を鍛える方法はモンスターを倒すことだ。特に迷宮産のモンスターを倒すのがいいらしい。
迷宮産のモンスターは倒すと霧散しつつドロップアイテムを落とすのだが、この霧散するときの魔力を吸収することによって人間も魔力を上げることができる……らしい。
原理はよくわからん、少なくとも死体の記憶にはなんでそうなるのかの情報はなかった。
ともかく、この世界の冒険者はまずは各都市の雑魚モンスターしかいない迷宮で経験を積みつつ力を溜めていくらしい。
そうやってモンスターを倒して魔力を鍛えていっても、能力に有意な差がでるのは年単位の時間がかかるらしいが。
強くなるのには時間がかかるのだ。
俺の場合は【超級死霊術】で若干ズルができる。ぶっ殺した相手の魔力を吸収するのに【超級死霊術】の技術が応用できる。
【超級死霊術】を使えば倒したモンスターから効率的に魔力を吸収することができるのだ。
といっても現状だと他の雑魚冒険者の10倍程度の効率しかない。
これは俺が【超級死霊術】の扱いに慣れてないのと【超級死霊術】を十全に運用する魔力が足りてないからだ。
魔力を集めるための魔力が足りない! ここはコツコツ鍛えていくしかないな。
10倍って結構すごい効率に見えるが、才能のある人間なら最初からこれくらいの効率で能力が上がっていったりするので……。
この手の魔力を効率的に吸収する能力はチート臭いがそれほど珍しい能力ではない。何故なら魔力や魂を取り扱う技能持ちなら大体持ってる能力だからだ。
雑魚モンスターを狩るレベルでしかない駆け出しが持ってる分には珍しい能力なので、その辺は他の低級冒険者と比べたら有利ではあるけどね。
基本的に能力は高くなれば高くなるほど魔力吸収による能力上昇の有意な差、つまり能力の上昇を実感するのが難しくなる。
なんで上位の実力者になるほど今より強くなるためには、効率強化系の能力を手に入れ、かつより強いモンスターを狩る必要が出てくるわけだ。
だから上位の実力者はこの手の魔力を効率よく鍛える能力をいくつか持ってたりする。
あと英雄とか天才とか言われる連中は魔力を鍛える効率が普通の人より高い。【理想の肉体】持ちの転生者なんかもそうだろうな。
この辺は死体の知識と自分の能力からの推察だから実際はどうだかわからんがな。
スラムの死体から得られる知識程度だと英雄譚に出てくる連中はものすごい勢いで強くなるってことくらいしかわからんし。
効率と言えばRPGとかに慣れた人ならパワーレベリングとか考えるかもしれんが、これ自分よりはるかに強い人間と組むとそいつのが魔力吸収の効率いいので魔力をほとんど持ってかれてしまうから逆に効率が悪い。
なので魔力を鍛えたいなら一人でやるか自分と同程度の実力者と組むのがいい、さらに言うなら才能のあるやつより才能ない奴と一緒の方が能力が上がりやすい。
才能のない強い奴がいるならそいつと組むと効率がいいぞ、それも自分よりちょっと強いくらいがいい。才能がないのに強い奴とかめったにおらんだろうけどな。
さて装備も整ったし、さっそくダンジョンに突入と行きたいところだが……。
雑魚モンスターが闊歩しているダンジョン、つまりは都市が管理しているダンジョンに入るためには冒険者ギルドなるものに登録をしなければならないのだ。
そして登録には少量だがお金がかかる。金……もってねぇんだよなぁ。
登録に必要な額は銅貨10枚。
最底辺の冒険者が一日中ダンジョンに潜って稼げる額が銅貨7~8枚ってところだから決して高くはない額なんだが。
素寒貧の状態から稼ごうと思うと厳しい額でもある。
何せ俺は無職の住所不定の人間。まともな仕事の斡旋をしてもらおうとしたら身分証明が必要だ、つまりは冒険者登録が必要になる。
ここでいうまともな仕事っていうのは犯罪にならない仕事っていう意味だ。つまりは犯罪を犯さずにお金を得ようとしたら何かしらの身分を証明する手段が必要なんだ。その最低ラインが冒険者証なわけだ。
一応冒険者ギルドが登録料の立替をしてくれる制度もあるんだが、利息がえげつないうえに返せないと奴隷落ちが決定してるんだよな。
まあ借りてみるとわかるんだが……いや利息自体はえげつないとはいえそこまでひどくないんだが。
まあ酷いことには変わりないか……。
えっ【物質生成】でお金を出せばいいんじゃないか? だって?
勝手な貨幣鋳造は犯罪だよ……とか【超級死霊術】とかいうアウトローな能力使ってて今更いう気はないが、今の俺の魔力だと銅貨10枚出すのも無理なんだよなぁ。
無から魔力だけでものを創り出すのは現状不可能と思っていい。それに金属は生成コストが高いんだ。
いきなり借金生活になるが立替は必須だなこりゃ。
さて、そういうわけで冒険者ギルドへとやってきました。
見た目はデッカイ宿屋といった感じで酒場が併設されている。
これまたデッカイカウンターがあってここで冒険者がもろもろの手続きを行うようだ。
まわりを見渡してみたが今は冒険者達は出払ってるようで閑散としている。
とにかく登録をしなければ始まらないので、カウンターにいる受付嬢に冒険者登録をしたいと申し出る。
手続きに関する情報に関しては死体の記憶から入手済みだ。
特に戸惑うことはないので問題なく登録が終了する。
登録料の立替については、受付嬢がまたか……みたいに眉をひそめたが普通に立て替えてもらえた。
これで身分証明賞にもなる冒険者の証、鉄製のプレートをもらうことができた。
ようやく迷宮へと繰り出すことができるようになったわけだ。
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