記憶

「早智ー!部屋の片付けしたの?その汚い部屋のまま出ていったら全部捨てちゃうからねー。」

下の階から母さんの声がした。私はその間も手を止めずにいらないプリントをまとめていた。

「わかってるよー」

何故親という生物はこうも心配性なのだろうかと思いながら年賀状が入っている箱を開けると、そこには驚くほどキラキラしている黄色の封筒があった。

誰から送られたのだろうか。私は思い出せないまま封筒を裏返す。

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鏡町 桜坂  3-4-5 2244-1625

花本 早智様


鏡町 桜坂 1-4-2 2244-1625

榊 恵利華

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さかきえりか...。私は頭の中でひとつの記憶を取り出した。えりかちゃんは少し背が高くて、元気な子だった。小学生のときずっと同じクラスだったけれど内気な私とはグループが違うからあまり遊んだことはない子だった。中学生以来は会っていない。

封筒から手紙を取り出した。手紙は兎の柄が入った可愛いものだった。

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早智ちゃんへ


応援の手紙くれてありがとう!

小学一年生から同じクラスだったけどあんまり話さなかったね...。もっと早智ちゃんの事知りたかったな~。日本から離れるのはさみしいけど、あっちでも頑張るね。


良かったられんらくしてね!

Gardnanz 33125 Illinois

U.S.A Sakaki Erika


恵利華より

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そうだ。恵利華ちゃんは六年生の夏ごろにアメリカへ引っ越したんだ。父親の転勤だった気がする。そこで私たちクラスメートはそれぞれ手紙を書いて渡したんだ。私は手紙を封筒に閉まって年賀状と一緒に保管しておこうと思ったのだがベッドの上に置いてまた断捨離を始めた。

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