第2話
急にきらきらとした虹色の光を四方に放ち、妙な電子音が鳴ったかと思うと、彼は目がくぼんで表情のない人の仮面をつけて立っていた。
正義を振りかざす理想家らしからぬ風貌の面である。
なぜそれをチョイスしたのだろうか。
彼は、私の強い視線とその考えに気づいたにちがいない。呻きながら不機嫌そうに手足を大げさに振り回す。
暴力で私の主張を封じようとしているのだろうか。そんなのが正義を名乗るとは実におこがましい。
「天空キーーック!」
両足を投げ出すようにキックを繰り出してきたが、要はプロレスでいうドロップキックである。
私がさっと身を引くと、天空というのは名ばかりで飛行距離はほとんどなく、彼は地べたに落下し、無言で悶えていた。
変身したらパワーアップするのかと身構えていたが、誤差の範囲のようだ。
骨でも折ったのだろうか。あるいは頭を強打したのだろうか。
彼が、いつまでもうずくまっているので、私は救急車でも呼ぼうか迷いながらその顔をそっと覗き込んだ。
すると、彼の突然繰り出してきたストレートパンチが私の顎を撃ち抜いた。
心配して損した。なんて卑怯な男だろう。
ひどいめまいに見舞われ、身体の力も入らなくなり、私はよろめきながら尻尾を引きずりつつ後退した。
「お前、なんてことを……それでも正義の味方か?」
彼は、そんな私の恨み節を笑った。
「へっへっへ、勝てば官軍よ」
ちょっとお茶の間のテレビを観ている子どもたちには聞かせたくない台詞である。
最近こんな自分の立場をわきまえないのが大手を振って街を闊歩しているが、これも時代なのだろうか。
「必殺バブルバスター!」
彼は、ショート動画でよく目にするようなパラパラダンス系の軽薄な運動をしたあと、私の腰をつかみ持ち上げようとした。
相手を論破できないからといって暴力で臨んで短絡的に解決を図るところを子どもたちに披露するとは、教育的に大いに問題がある。
「止むを得ん」
私は背中に手を回し、柄のついた棒状のものを抜き取った。
彼は、驚きのせいだろう。動きが固まる。
「アジアツーカキキ・ブレード!」
何だか語呂が悪いが、それで躊躇することなく彼の横っ面を狙った。
しぱーーん!!
まさに会心の一撃。
要はハリセンであるそれが見事に決まる。
彼の身体が膝から崩れ落ちた。
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