第22話 首都にやってきました!前編(ミネッタ視点)

「ミネッタちゃん、ほら目的地が見えたよぉ」


「わぁ……あれが首都フェテニスかぁ! さっすがおっきいー!」


 村から荷車便を使って丸二日、ようやくやってきました首都フェテニス!

 故郷とは規模が違い過ぎてもう驚きしかないよー。


 ――という訳で荷車に揺られながら遂に街の中へ。

 乗り場まで辿り着くと、御者さんに感謝をしてから荷台を降りた。


 街の中はもう人、人、人だらけ!

 村ではほぼいない冒険者もちょーっと眺めるだけで何人も見つかる! すごい!


「あの冒険者さんたちが少しでも村にきてくれていたらブルーイッシュウルフにも困らされなかったんだけどなぁ。ま、そのおかげでネルルちゃんに出会えたからいいんだけど」


 こんなことをぼやきつつ大通りを進む。

 確かこの辺りに待ち合わせ場所の神像があったはず――あ、あった!


 大通りは十人が並んでも塞ぎきらないくらい広い。

 そんな道の中央にポツンと至高神オーヴェルの像が立っていて。


 それで像の傍に歩み寄っては辺りをキョロキョロと伺ってみる。


「ここで合ってる、よね?」


「お、いたいた! おーい、ミネッター!」


 するとすぐに聞き慣れた声が。

 振り向くと知った顔の男が手を振って走って来た。


「あっ、ファズ! ひっさしぶりーっ!」


 よかった間違い無い、幼馴染のファズだ!

 でもちょっと筋肉質になったかな? 顔も少し大人びたなー。


「久しぶりだなぁミネッタ、元気そうじゃん」


「えへへ、最近色々と面白いことがあってますます元気になっちゃったよー」


「ははっ、お前らしいわ」


「ファズはファズでなんか変わったね。さすが兵士って感じ。もう働き始めて二年くらいになるの?」


「まだ新米っ気は抜けないけどな。それでも総隊長の遣いっぱしりとかやらされてるからそれなりの出世筋だとは思うぜー?」


「へぇ~~~さすがだねぇファズは。昔っから頑張り屋だったもんね」


「あのアホ家族どもに付き合えてるお前の方がスゲーわ」


「ププッ、それだけが私の取り得だけどっ!」


 ハッキリ言う所はあいかわらずだ。ウチの兄貴たちに対する嫌悪感も。

 さすが、あのお父さんと兄貴たちがのさばってるから村にいたくないって理由で上京しただけのことはあるわー。


「それにしても、お前もフェテニスに来るとは思わなかったよ。いきなり手紙が来た時はビックリしたもんだ」


「あはは、ちょっとやりたいことがあってさー」


「俺を呼びつけたのもそれが理由だろ? 何がしたいんだ?」


「それがねー」


 やっぱりファズに嘘は付けないなー。

 こういう所もちゃんとお見通しなんだから。


 ま、隠すつもりは毛頭ないんだけどね。


「実は私さ、冒険者になろうと思って」


「ほぉ」


「実はさ、最近とある友達が出来て。それでその友達にね、『ミネッタさんは魔獣使いの素質があるかもしれません』って教えてもらったの」


「あぁ、そうかもしれないな。ミネッタは昔から動物に好かれること多かったし」


「うん。だからそのお友達のためにも冒険者登録して、魔獣使いのライセンス取っておこうかなって思って。ほら、村の外も何かと物騒だからさー」


 その方がきっとネルルちゃんの役にも立ちそうだしね。

 あんなちっちゃい子を放っておく訳にもいかないし、危ない目に遭う前に守ってあげるための力を付けなきゃ!


「すごいな、ミネッタは」


「ええ~? なんで~?」


「だって一人で何でもやろうとしちまうし、実際出来るんだからさ。俺だってそこまで器用なことは出来ないよ」


「いやぁ~~~それほどでもぉ!」


 あらあら、ファズ君なんだかホント大人びたねぇ。

 前はこんな褒めてくれることなんて無かったのに。


「もしかしてその友達って……男、だったりする?」


 うん?

 なんでそんなこと思うんだろ?


「違うよー女の子だよ」


「そ、そうか! ホッ……」


 なに胸をなでおろしてるのかなぁ。

 村に他の男友達がいるのはファズだって知ってるはずなのに。

 何か心配事でもあるのかな? よくわかんないけど。


「それでね、ファズには道案内をしてもらいたくて。私この街初めてだからさー」


「あ、ああ、冒険者組合本部でいいか?」


「うん、確か今も冒険者登録の受付期間中だよね」


「期間は春先から夏にかけてだし、まだ春になりたてだから問題無いだろ」


「おっけーじゃあ案内よろしくぅ!」


「よぉし、任せろ! ついでに飯の美味しい店にも連れてってやるよ!」


「わお! 楽しみぃ!」


 ふふっ、さすが都会っ子ファズ君だわ。

 頼るべき者は幼馴染ってね!


 あ、でもお腹空いたし、先にご飯でもいいかなー?


「んじゃこっちに――」


 けどそう思った途端、ファズの背後に大きな人影が。

 しかもその人影が大きく両腕を掲げると、「ドズンッ!」と彼の両肩に両手が押し付けられた。


「んッゴォ!!?」


「あぁ~~~っとぉ悪いけどデートのお時間はここまでになりまぁす! いいですねぇファズ=デシカ一等補佐官殿ぉ?」


「え"ッ!?」


 しかもファズ君、なぜか「ギギギ」と首をひねって振り向いていて。

 見上げた傍から顔が驚愕と畏怖で震えてる。


「あ、ああ、ジェイル総隊長、殿ォ……!?」


「おーうファズ君。探したよぉ?」


 話からしてこの人はファズの上司かな?

 言われて見れば兵士らしく凄い屈強。


 だけどニタニタしていてなんだか妙に緩いというか。

 渋めのがっしりした顔付きで無精髭だからか少し格好悪い感じ。


 ただあのファズ君が怯えすくむ辺り、きっとすごい人なんだろうなぁ。

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