ポポさんと、わたろうさん

夢ノ命

第1話 【ぽぽさんとわたろうさん】 


 黄色いもじゃもじゃの頭をぶるっと、ふって、ポポさんは、ついさっき自分の頭に落ちてきたばかりの、つばめのふんをはらった。


 そしてポポさんは、目を一度しばたかせ、もじゃもじゃな黄色い頭のかどの、たんこぶに、そっと手をふれてみた。


「なんて、まあ、今日はついてないのかしら」


 今まで夜空のお星さまの数くらい、鳥たちはきたないものを落としていった。


 みんなつんとすましたり、得意そうな顔をして。

 もううんざり、こりごりした。

 ポポさんのたんこぶは、ぷうーとふくれあがってきた。



「いやだ、いやだ、これじゃあ、あの、わたろうさんみたいじゃあないの」


 ポポさんはとっさに、雪のように白く、まるい大きな頭をした、隣の家の男の子のことを思った。


 わたろうさんほど、年がら年中、鳥のふんを頭にかぶって、へらへらしている方も、珍しいのではないかと、いつもポポさんは思っている。


 ある時には、わたろうさんは、ハトポッポのお友達ができたとか言って、頭に三つくっついている、目玉焼きの潰れたのみたいな、へんなのを、得意気に自慢していた。



 昨日もそうだった。

 すずめが砂場で穴を掘っているのを、一緒に手伝ったとか言って、おでこの所にへんな染みをつけて帰ってきた。


 本当に、おっとりして、素朴すぎるお方らしい。


 そんなわたろうさんも、前に一度だけ、凄いけんまくで怒っていたことがあった。

あれは、確か雲がお日さまをパクリと食べた日のこと。


 わたろうさんは、朝浜辺へ散歩にゆくと言って、出ていき、夕陽の沈む頃に帰ってきた。見ると、わたろうさんは、かたっぽの手で、頭のつむじのところを押さえている。



「わたろうさん、そんなに大事そうに頭をおさえて、どうなすったの? 」


「どうしたも、こうしたもないんだ、あの悪魔みたいな鳥がやったんだ」


 わたろうさんは、そっと頭から手をはなした。


「あのトンチクリン、ぜったいに、ゆるせない!」


 わたろうさんは、いつもはおとなしそうな顔つきをしているのに、今日に限っては、シリアカバッタのように、顔を赤くゆがめていた。



 なるほど、わたろうさんの、頭のてっぺんには、いつもの柔らかな、白髪がなくなっていて、まるく、はげていた。

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