第13話 ちょっとした置き土産
「――よし、撮れ高!」
ゴブリンの群れを倒すのと引き換えに、ボロボロと崩れていく〈虎徹〉を眺めながら、僕が思わず笑みを浮かべた時、だった。
:すごい!
:今のスキルですか?
:かっこいいよかったよー!
:待ってください今の技はなんですか?
類似する技が全く思いつきません!!
ぜひとも詳細をお願いします!!
:さっきのって刀じゃ
:ライきゅん最強!ライきゅん最強!ライきゅん最強!
:武器、壊れちゃった?
:強すぎるwww
:ゴブリンざぁこざぁこ♡
:初心者って言ってたの嘘だったの!?
:お姉ちゃんはライきゅんのこと信じてたよ!
:なんで1階にモンスターハウスがあったんだろ
:ライ様、しゅきぃ……♡
:無事でよかったー!
:かっこよかったです! ファンになりました!
これまで以上の勢いで、雪崩のようなコメントが押し寄せる。
内容も「賞賛七割、疑問三割」という感じで、つかみは悪くない。
(モンスターハウスにはびっくりしたけど、結果的には成功、かな)
リスナーさんたちの関心を引けたみたいだし、それに、
:かっこよすぎてチャンネル登録しました!
:あっずるい! わたしも登録します!
:登録しました!
:もう登録してます(ドヤ
:もちろん登録済みですわー!
:お姉ちゃんも当然登録済みだよ!
:姿を見た時にはもう登録してました!
:放送始まった瞬間にはもう登録してた
:前前前世から登録してた
:ここは嘘松が多い配信チャンネルですね
この一件で、僕の配信チャンネルに登録をしてくれた人もずいぶんと増えたみたいだった。
これは素直に嬉しい。
というのも、
「それじゃあ幸いなことに見せ場も作れたことだし、これから少しみんなの質問に答えたあと、今日の配信を終わりにしたいと思います」
今日はそろそろ時間切れ。
続きは次回にしたいので、チャンネル登録してもらうのは非常にありがたいのだ。
:えっ!?
:あっ、そういえば初回の枠は20分って
:ライ様行っちゃうんですか?
:もうそんなに時間経ったの!?
:えっ泣きそう
:まだ五分くらいかと思ってたはwww
:もっと見ていたい!
:お姉ちゃんライきゅんと別れたくないよ
:あの!次の配信はいつですか?明日ですか?明日ですよね?
:毎秒配信して?
:あと5時間だけ延長してくださいなんでもしますから!
:強欲で草
:ずっと一緒にいようって言ってくれたのは嘘だったんですか?
:さびしいです……
:急にメンヘラ湧きすぎだろこわ・・・
コメント欄に流れるのは、想像以上に別れを惜しむようなコメントが多い。
(思ったよりも反応いいし、もう少し続けたい気持ちもあるんだけど……)
もともと、初開配信の時間は二十分で予告していた。
ボロが出ないように、とか、情報は可能な限り小出しにしていきたい、とかブランディング的な理由もあるけど、何より、
(あんまり長く家を空けると、家族が、ね)
多少は収まったとはいえ、まだ過保護モードが続いている。
もし家を抜け出しているなんてことがバレたら、二度と外を出歩けなくなってしまうかもしれない。
(……っと、ぼーっとしている場合じゃないな)
別れを惜しむコメントもそろそろ落ち着いたし、今後の配信のとっかかりにするためにも、少し情報を開示していくことにする。
まずは、
:さっき使ってた武器って刀?
と、ちょうどよく流れてきた質問コメントに、軽くうなずいて……。
「お、知ってる人もいるみたいですね。はい。これは〈刀〉という武器種ですね。というか、ジョブの縛りでこれしか装備出来ません」
そう答えると、また一瞬にしてコメントがワッと沸く。
:刀! 聞いたことある!
:えっ? ほんとに!?
:刀はどのジョブも使えないゴミ武器って……あっごめんなさい
:本当に刀使えるの?
:ドロップした時のがっかり度はナンバーワン
:自分じゃ使えないし売れないしでゴミと言いたい気持ちはわかる
:実際使ってたじゃん
:ライ様はやはり選ばれし存在なのですね!
:現役探索者もよう見とる
ざっと流し読みした限りでは、刀を使うジョブは僕以外にいないらしい。
薄々そうかな、と思っていたけれど、これは僕にとっては大きな追い風だ。
そして、当然のように僕のジョブに話題が移ったところで、
「じゃあ最後に、皆さんが気になっているステータス……あ、バーチャルステータスの一部を公開して今日の配信を終わりたいと思います!」
そう口にして、コメント欄の様子を伺う。
:あぁぁ、ライきゅんが行っちゃう!
:バーチャルステータスwww
:次もぜったい見ます!
:これで本当に未発見ジョブだった日には
:とってつけたようなバーチャル草
:バーチャル設定忘れてた
:レベルいくつくらいなんだろ
:職業楽しみ!
:戦士とかってオチじゃないよね?
:ワクワク、ワクワク!
概ね好意的な反応が返っていることにほくそえんで、僕は最後にちょっとしたイタズラをしかけることを決めた。
(次も見てほしいし、ちょっとは爪痕残さないとね)
僕は素早く設定を操作して、画面共有機能を使ってステータスの一部を視聴者に公開する。
そうして、次の瞬間、
―――――――――――
レベル : 5
ジョブ : サムライ
性別 : 男
―――――――――――
配信画面が悲鳴のようにコメントを吐き出す中、僕はにこやかに手を振って配信を終了したのだった。
―――――――――――――――――――――
でもバーチャルだからセーフ!!
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