窓辺の猫

学生作家志望

大きな人間

「かわいいねー」



「外見てるの!」



………今日も今日とて人間のお世話。猫というのはとても大変な生き物。毎日毎日、人間を構ってあげないといけないんだ。


今だってほら、窓から外を見てるだけなのに「可愛い」だの言ってきた。



「お外は何が見えるかなー?ちゃんと観察してえらいねー!」



何が偉い?いや、ほんとに。何もえらくなんてない、ただ退屈だからここにいるだけ。別に何か世界の役に立つような研究をしているわけでもない、ただ、寝転がってひっくり返った空を見てるだけ。


ただの青を見てるだけ。



「うえーん、」



顔より先に耳がその大きな声に反応した。振り返ってみると、うちの小さな人間がどうやらまた泣き出したらしい。


いつものことだから別にびっくりはしない。また大きな人間が世話する。



そう思ってゆっくり顔をまた外の方向へ戻した。するとそこには普段見慣れない景色があった。ベランダから見えるコンクリートの道に1人の大きな人間がいた。その大きな人間は、泣いていた。



1人、泣いていた。


なんでかはわかんないけど、あの人間の感情がなんとなく伝わってきた気がした。


うちの小さな人間は白いあれを飲ませれば簡単に泣き止んだりするけれど、きっとあの人間にそれは通じない。


だって大きな人間だ。大きな人間が泣いているんだぞ。


よほどの何かが起きた。そう考えることくらい猫であっても普通だ。



あの人間は何をすればあの涙を止められるのだろう………



そんな考えても仕方のないことを頭に入れたとき、うちの大きな人間が小さな人間の世話を終えて無理やり体を抱えてきた。



「ほら、こっちきましょうねー。たまには甘えてもいいんだよ?」



頭を撫で撫でしながら人間がそう言った。



いつものことだけどこの日は少しだけ人間に甘えてみることにした。


あの人間にも優しい言葉をかけてくれる、心の底から甘えられる人間がいるのだろうか。


心を許せる人がいれば、きっとあの涙も止まるんだろう。

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