そこらへんの大学生、種族王になる。
@KiikaUnasaka
ルビー村編
死にました。
西暦20XX年。
日本は戦禍に巻き込まれていた。かねてより仮想敵国とされ、領土問題、貿易摩擦を生じていた国が宣戦布告もなしに攻撃をしてきたのだ。
生じた被害は甚大。その国に近い
そしてそれは平井翔が住んでいた埼玉県にある103号室のマンションも例外ではなかった。
昼寝していた翔は携帯の緊急速報で目が覚める。
「まったく、びっくりさせやがって。日本にミサイルなんて来るわけないだろ?」
冗談半分、寝ぼけ眼のまま窓の外を見た。そこにはまるで赤い隕石のようなものがあった。いや、迫っていた。
「うわっ綺麗……」
それが翔がこの世で見た最期の光景となった。
○□△×
「以上が俺が覚えていることだ」
どこまでも続くような真っ白い世界で翔は目の前の男に言う。
男の名前はゼドリスというらしい。白い髪と黄色い瞳、服は白い軍服のようなものを着ている、明らかに日本人ではない男。
そしてなんと言っても特徴的な天使の羽。
もうここまで読んだらお気づきだろうが俺、平井翔は死んでしまったようだ。つまりこれは死後の世界か何かなのだろう。
……夏休みだから気持ちよく昼寝してただけなのに意味がわからん。
「なるほど、それは奇妙な攻撃魔法だな。私も習得できるようにせねば。……それで話は変わるが、お前がここに来たのには理由がある。お前にはこれから……」
待て、その先の言葉には聞き覚えがある。
そう思った翔は片手で静止させた。
「異世界転生をしてもらう、だろ?」
「ほう、よく分かったな?」
ゼドリスは興味深そうに口角を上げる。
「何故わかったかよく分からないがお前の言う通り、これからお前には転生をしてもらう。それも違う世界でな」
……だっていかにもな展開じゃん。
「どんな世界なんだ?」
「五種族が暮らす大陸、ケルト大陸だ。そこにはお前と同じ人間種も住んでおり、五種族のうちの一角を担っている。しかしお前にはこれから"エルフ"として新しく生を受けてもらう」
「エルフ……?」
思わず翔は声を漏らす。
……エルフって言えばあのラノベでよく出てくるやつだよな?耳がとんがってて、長寿で美人の?
「当然お前は知らないだろう。エルフは長命種で魔力が高いのが特徴だ。基本的に森に住んでいるが開拓して街を築いている者もいる」
「まぁ俺の想像範囲内だな。ところでヒトとエルフ以外にどんな種族が……」
「それは言えない」
即答だった。翔が言い終わるよりも早くそう言われた。
「なんでだ?」
「それはお前が行って確かめろ。そしてここからが重要事項だが、各種族一人づつに五種族を制覇するよう我が宣告を行った。そしてお前はエルフ代表だ。故にお前はエルフの王となり、他の種族を統一しなくてはならない」
「ということはヒトだったり別の種族にも転生者がいるってことか?」
「お前以外にも転生者はいる。しかし転生者だけではなく、現地人にもお告げを行った」
選ばれし各種族の5人。
その5人がこれから種族の王になるために殺し合いをするということ。それで翔はエルフという種族で選出されることになった。……わかりやすく言えばそうなるのか。
「競争ってことか。それに俺だけが優遇されてるって訳じゃないようだな」
「ただ私としてはお前に勝って欲しいと思っている。また転生者は現地人に比べて不利なため特別な力を授けることになっている」
つまりそれは、
「なんか強力な武器だったりチート能力がもらえるってことか!?」
途端に翔の目が輝く。
だってそうだろう。異世界転生といえばチートの代名詞だ。逆にそんな過酷な世界でチートの一つや二つなかったらやっていけないのだ。
「お前に与えられる能力は──"極める力"だ。何か一つや二つ集中的に努力してみろ。それがお前の力になる。それと一つ注意点を。最初に努力したものが強制的にお前の力になるので後から変更できないと言っておこう。例えば最初に剣を極めたが、やっぱり槍を鍛えたいなんてことは不可能だ。その場合は否が応でも剣がお前の特技になってしまう」
……なんだよ。あまりチート能力とは言えないな、縛りが多いし……。
「思ってたのと違うけど……まぁ使いようか」
あくまでもこれは競争なのでバランスを持たせるためなのかもしれない。仕方ないといえば仕方ないのだ……納得できないが。
「お前に伝えるべきことは以上だ。では早速、転生を始める」
すると、途端に翔の体は光の粒子となって分解され始めた。
「うわっ!?なんだっ……ちょっと待って!!」
「もう手遅れだ」
ゼドリスはニヤリと笑う。
「さらば、次なる世界でまた会おう」
それが翔という人生で最期に聞いた言葉だった。
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