2︰機巧剣タクティクス
俺はコレクター魂を燃え上がらせ探索を始める。
するとさっそく、キラリと輝く何かが落ちているのを発見した。
ラッキー! アイテムじゃないか。
さっそく見つかるなんて幸先いいじゃん!
そう思い、駆け寄り拾ってみる。
「うーん……前にも手に入れたな、これ」
だけど、それは前に手に入れたことがある謎のガラクタだった。
使い道があまりないし、換金アイテムとしても価値が低いんだよな、これ。
俺は肩を落としながらもひだまり迷宮をいつものように探索しているんだが、なかなかいいアイテムが手に入らない。
どれもこれもすでに持っているものばかりだし、しかも売値がとても安い。
ポーションや薬草といったものなら探索中に使いまくるから有用なんだけど、ヒビ割れた魔石ばっかりだから使いようがないというのがミソだ。
これは参ったな。
せっかくの休みでなけなしの小遣いを使って入場料を支払ったのに、全部が無駄になっちゃうじゃないか。
まだ時間があるけど、これはもしかしてもう手に入れるアイテムがないのか?
そんなことを考えていると視界の隅でスススッと動く何かを俺は発見した。
俺は気になって逃げるように動く何かをしっかりと視界に捉えると、それは虹色に輝くスライムだった。
「こいつは、レアスライムだ!」
レアスライム――そいつは倒すとレアアイテムを落としてくれるというなかなか出現しない名前通りのレアなモンスターだ。
迷宮に眠る宝箱の中身が復活していることがあるが、それはレアスライムが手に入れたアイテムを保管する習性を持っているためだと言われたりそうでなかったり。
何にしても、レアスライムに出会えたのは超ラッキーなことなんだ。
特にアイテムコレクターの俺としては願ってもない状況でもある。
ということで、俺はすぐに戦闘態勢を取った。
「アイテム寄こせぇぇぇぇぇ!」
「ぴぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
腰に携えていた木刀を握り、レアスライムに向かって振る。
レアスライムは案外動きがトロく、俺の攻撃は簡単に当たった。
そのまま力尽きたのか、ボンッと小さな爆発をするとに煙を上げて身体が消え、代わりに一つの宝箱が出現する。
虹色に輝く宝箱だ。
これはレアアイテムの香りがプンプンとするぜ。
というかこれはもう、期待しないほうがおかしいだろって思えるぐらい神々しい輝きが空間に溢れていた。
「にししっ。さてさて、中身を拝見しようかな」
俺はちょっとだけ手もみをしながら宝箱を開く。
一体どんなレアアイテムがあるのか。
それはどれだけの価値が存在するのか。
いろいろ楽しみにしつつ、中に眠るアイテムに目をやる。
「ん? これは、剣?」
それは片刃の剣。なんだかメカメカしく、全体が漆黒に染まっている不思議な剣だ。
これはアイテムというより武器だ。
「確かこれは、迷宮武器って言ったな」
迷宮武器は人が持つ心音やら体温やらで相性が決まるって性質があり、相性がよければ使用できる存在だ。
ならこの武器はとんでもないレアだ。
しかし、どのくらいのレア度なんだろうか?
ちょっと気になったのでスマホを使って手に入れた剣の画像を撮って調べてみる。
すると検索結果の一番上にこんな名前が表示された。
「機巧剣タクティクス?」
なんだか仰々しい名前だな。
そんなことを思いつつ、タップしてサイトを開いてみるとそこにはとんでもない情報が書かれていた。
「え!? 世界で二つしか確認されてない!!?」
機巧剣タクティクスはとんでもなくレアな武器だった。
レア度でいえばアルティメットウルトラレア。つまりUURという最高ランクに当たる存在だ。
だけど、タクティクスの場合は今までその性能を発揮した人間はいないという情報が書かれている。
だとしてもタクティクスは迷宮武器であることに変わりない。
そんなレア武器が、こんな近場で手に入った。
もしかしたら俺、知らない間に来世の分まで運を使っちゃったか?
「…………」
ま、まあ、そうだとしてもすぐに死ぬことはないはず。
そうだ、ここは冷静になろう。
そう、冷静だ。冷静になるんだ。ビー・クール、ビー・クール。
よし、落ち着いたぞ。
ひとまずタクティクスはアイテムボックスにしまっておこう。
「ボックス」
俺は自分のスキルを発動させ、アイテムボックスを呼び出した。
ちなみにだけど、このスキルは迷宮が出現した時に人々の中に出現したらしい。
詳しくはわからないけど、なんでも自分の中にある大きな欲望がスキルとして発現するとか。
俺の場合はコレクションを手に入れたいって欲望があったから【アイテムボックス】がスキルとして発現したって感じさ。
ただこのスキルには大きな弱点がある。
それは戦闘向きじゃないってこと。
アイテムボックスの出現自体は瞬時なんだけど、どのアイテムを取り出すかに時間がかかる。
前もって決めておけばすぐに手にすることができるけど、検索をかけて選ぶとなるとその分だけ隙ができてしまう。
だからモンスターとの戦闘には事前に準備をしておかないと使えないスキルでもあるんだ。
収納するには非常に便利なスキルなんだけど、そういった手間を考えるとすぐに使いたいものはリュックに入れるか手元に置いていたほうが早い。
だから俺はアイテムボックスを持ちながらリュックを使って迷宮探索をしているんだ。
もっとスキルを使い慣れればリュックなんて必要ないと思うけど、現状はそんな感じである。
それはさておき――
さてさて、昨日まで収穫したアイテムコレクションを確認してみようか。
うん、いい感じにアイテムがそろっているな。
武器や防具、あとアクセサリーもそれなりにそろっているけど、こっちは後回しだ。
お、懐かしの深淵シリーズがあるじゃないか。
これ、ちょっとゴテゴテしているけど見た目が結構カッコいいんだよな。
装備ボーナスもすごくて、特に俊敏性が爆上がりする。
前に装備したくて集めたんだけど、肝心の俺のレベルが足りなくてダメだったんだよな。
今だと装備できるのかな?
そう思って自分のレベルを確認してみたけど、全然足りなかった。
これだと深淵シリーズは装備できないや。
おっとそうだ、そんなことを考えている暇はなかった。
俺はすっごい運を使っちゃったかもしれないから、とっとと迷宮から脱出しないといけなかったよ。
ひとまずタクティクスをアイテムボックスにしまって、と。
ひと昔のことを懐かしみつつ、俺はすぐに探索を打ち切り迷宮から脱出しようとした。
だけど、いや確実に不運ってものは襲ってくる。
そう、神の意地悪ってやつだね。
人によっては試練と呼んでいるかもしれないけど、何にしても叩き落としに来たことには変わりない。
なぜなら、そんな騒動に俺はすぐに巻き込まれることになるからだ。
そうなることを知らずに俺はのんきに来た道を引き返そうとしていた。
だが、それが思いもしない出会いになるとは、この時の俺は知るよしもない。
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