第2話
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7時16分発の電車に乗り、彰彦と落ち合う。それが僕らのルーティンだったのだが、どういうわけか彰彦はいなかった。不思議に思っていると、スマホの通知音が鳴り、満員電車のなか、どうにか身体をひねってポケットからスマホを取り出して画面を見ると、「わりい、今日は1便遅れちまったわ、ファミマの前で待」というLINEのプッシュ通知が表示されていた。プッシュ通知なんで文章は途中で切れているが、意味はわかる。スマホを再びポケットに仕舞おうとすると、隣の香水臭いOLに痴漢と間違われる危険性があったので、そのままスマホを握りしめて、下車駅まで身体を固めて待つのであった。
ファミマの前で、アイスを2本持ち待っていたら、彰彦がやって来た。彼にしては、めずらしく浮かない顔をしていた。彼も僕の夏休み明けの憂鬱な気分が理解できるようになったのだろうか。
「わりい、待たせたな」
「うん、ちょっと心配したよ。アイスおごるから、食べながら行こうよ」
このコンビニで、朝食代わりの菓子パンやら唐揚げなどを買い、だべりながら登校するのがいつもの日常だった。
「あ、今日ちょっと食欲ねーんだ、おまえ2つ食っていいよ」
え、ソフトクリーム2つを一気に、、、
9月になったとはいえ、太陽の日差しも激しいから、溶けるのも早いし、胃ももたれそうだし、なかなかきついんですけど。
「自分で食べるのしんどいなら、誰かにやればいいだろ」
そんなコミュ力があったら、彰彦に言われる前に実行してるよ。
「なあ、おまえB組の神田が夏休みの間に転校したって知ってた?」
一個めのソフトクリームのコーン部分に噛み付いた瞬間、それまで黙っていた彰彦が唐突に口を開いた。神田和佳菜、僕と彰彦と同じ中学の出身で、去年は同じクラスだったが、2年になってからは別々になったのだった。そもそも女子生徒とまともに話せない僕だから、神田ともろくに話すらした事がない。だから、いきなり転校したと聞いても、ふーん、そうなんだね、とつまらないリアクションを彰彦に返すしかなかったのだ。それからも、彰彦は意気消沈したままだったので、僕は無事に二個のアイスクリームをたいらげることに成功したのだった。
教室内に入る。髪の色や肌の色が夏休み前と変わっていた生徒もちらほらいたが、神田が転校したという話題は、このクラスではさほどバズる話題でもなかったのか、一部の女子からその名前が話題に上がるくらいであった。
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