第63話 カップルとして
スマホで時間を確認し、深呼吸を繰り返す。待ち合わせの時間まであと30分。さすがに今日は早くきすぎた。
でも、気合が入るのも仕方ないだろう。なんていったって今日は、神楽坂と付き合ってから初めてのデートなのだから。
「……変じゃないよな」
近くにある店の窓で髪型を整える。神楽坂と出かけることが朱莉にバレてしまい、格好良くしてあげる! と朱莉がセットしてくれたのだ。
朱莉は器用だから上手くできたとは思うが、それが俺に似合っているかは分からない。
神楽坂と出かけるのは初めてじゃないけど……やっぱり今日は、いつもと違う感じを出した方がいいのか?
付き合ってるんだし、俺から手とかも繋ぐべきか?
昨日の夜からずっと今日のことを考えているのに、それでもまだ悩みは尽きない。でも、考えるたびについ頬が緩んでしまうような、幸せな悩みだ。
「先輩!」
神楽坂の声が聞こえて振り向く。そこにいたのは、いつもと違う神楽坂だった。
髪はツインテールで、綺麗に巻いてある。髪には白とピンクのリボンをつけていて、着ている服も白とピンクの可愛らしい服だ。
ロリータ、とまではいかないだろうが、ちょっと目立つような格好である。
「すいません、お待たせしてしまって」
「いや。俺が早くきすぎただけだから」
「私も実はもっと早くきてたんですけど、さっきまで化粧直しをしてて……」
目が合うと、神楽坂の頬が赤く染まった。初々しいその反応につられて、俺の頬も熱くなってしまう。
「……あ、えっとその、今日の格好、似合ってるぞ」
「本当ですか? 実はこれ、今日のために買ったんです。彼氏とデートだって言ったら、お母さんが一緒にお買い物に行ってくれて」
「そうなのか」
「はい。お母さんも先輩に会いたいって言ってましたよ」
「……それは緊張するな」
ふふ、と神楽坂が楽しそうに笑う。神楽坂の髪からは、なんだか甘い香りがした。
「でも、いつかちゃんと挨拶させてくれ」
「はい! 絶対ですよ? 言質とっちゃいましたからね」
そう言うと、神楽坂は俺の腕に自分の腕を絡めた。
「今日のデートプラン、考えてくれてありがとうございます」
今日はまず写真映えする可愛いカフェで昼食を食べ、その後写真映えするイルミネーションスポットを周りつつ、写真映えするスイーツを食べる……という計画だ。
もちろん俺はイソスタ映えするような場所や物に詳しくないから、今日のために必死にネットでいろいろ検索した。
神楽坂は可愛い物が好きだから、そういうのを喜ぶと思って。
それに、せっかくの初デートだ。たくさん写真を撮りたくなるような場所にいけば、それだけたくさんの思い出を作ることができる。
「ああ。神楽坂が楽しんでくれたらと思って」
「私は耀太先輩と一緒だったら、どこでなにをしても楽しいですよ。でも、こうやって先輩が私のためにいろいろ調べてくれたことがすごく嬉しいです」
「ありがとう」
そう言ってもらえただけで、今日の計画を立ててよかった、と思う。
「あの、耀太先輩」
「なんだ?」
「一個お願いというか、質問があるんですけど……」
すう、と神楽坂は大きく深呼吸をした。
「耀太先輩はいつまで、彼女のことを苗字で呼ぶんです?」
耳まで赤くなった顔で無理やり拗ねた表情を作ってる神楽坂が可愛くて仕方ない。
つい笑ってしまうと、なんで笑うんですか、と神楽坂が頬を膨らませた。
「ごめん、希美」
俺の言葉でまた、神楽坂の……いや、希美の顔が真っ赤に染まる。
幸せっていうのは、こういう時間のことを言うのかもしれない。
◆
「もうこんな時間ですね」
「ああ。そろそろ帰らないとまずいだろ?」
「……はい。本当はまだ帰りたくないですけど」
言いながら、希美はベンチから立ち上がった。
いろんなスポットを回って、最終的にイルミネーションが有名な大きな公園にやってきたのだ。
周囲はカップルで溢れている。そしてそんな光景に、今の俺たちは馴染んでいるんだろう。
「俺も帰したくない、とかは言ってくれないんですか?」
「親御さんが心配するだろ」
「そうなんですけど! 実際無理でも、言われたい乙女心ってありますからね」
まったく先輩は、と嬉しそうに文句を言うと、希美は不意に俺に顔を近づけてきた。
どうかしたか、と問うよりも先に、希美の唇をそっと頬に押し当てられる。
「口にする時は、ちゃんと先輩からしてくださいね?」
行きますよ、と希美が俺の手を引っ張って駅へ歩き出す。
「……分かった。その時はちゃんと、俺からするから」
「はい。よろしくお願いしますよ、先輩」
立ち止まって振り向くと、希美はにっこりと笑った。
俺からキスをする日なんていうのがいつくるのか、正直まだ今の俺には想像もできない。
でもきっと、いつかそんな日がくるんだろう。それから先も、希美と共に進んでいきたい。
「希美」
「なんです? 耀太先輩」
伝えたいことはたくさんあるはずなのに、上手く言葉が出てこない。胸の奥からこみ上げてくるこの温かい感情を、どんな風に表現したらいいのだろう。
上手く答えが見つかる時も、希美に隣にいてほしい。
「大好きだって、伝えたくなって」
「……私だって、大好きですよ」
頬を真っ赤に染めた希美の手をぎゅっと握る。
希美の手のひらは熱くて、なんだか、溶けて一つになれるような気がした。
たまたま学校一の年下美少女に懐かれた俺が、いつの間にか3人の美少女からデートに誘われるようになった話 八星 こはく @kohaku__08
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