味方
天川裕司
味方
タイトル:味方
彼女「きゃあああ!!この人痴漢です!!」
「えっ?いやちょっと待てよ…なんだよそれ」
こうして俺は捕まった。
満員電車に乗っていた時、
付き合って2年経った彼女が俺を痴漢呼ばわりし、
周りから責め立てられた俺は
そのまま逮捕の運びへ。
「そんなこと絶対にやってません!俺たち付き合って2年間経ってるんです」
警察「ふぅむ。何か最近トラブルは?」
「僕と彼女の間にってことですか?」
警察「ええ」
「いやそりゃまぁ、多少喧嘩したり、浮気を疑ったり…そんな事はありましたけど。でも普通にどこのカップルもやってることだと思いますけどね」
警察「ふぅむ。その浮気と言うのはどんな?」
「え?…そんなことまで話すんですか」
警察「理由を正さなきゃならないので」
初めはそれなりに納得の行く事情聴取だったが、
そんな警察の事情聴取が全く関係の無い様に、
俺は書類送検され、裁判に掛けられるまでになったのだ。
彼女側の訴えがあったから。
「冗談じゃないですよこんなの!」
裁判官「静粛に。被告人は訊かれた事だけ答えるようにして下さい」
その裁判はなぜか、彼女側に圧倒的に有利。
彼女「あの人、急に変わったんです。私がもう付き合いきれなくなって別れ話を切り出したとき、あの人、人が変わったようになって、そのあと私を追い回すように…」
「いやちょっと、そんな事してねぇだろ俺!」
裁判官「静粛に。被告人は訊かれた事だけに答えるようにして下さい。2度目です。何度か注意して聞かないようでしたら退廷させますのでそのつもりで」
「そ、そんな…」
裁判は、あっと言う間に終わった。
現場検証とかそんなのほとんど出来ないらしい。
彼女の感情だけが1番有力な武器になり、
ほとんどそれ1つで裁定が決まったようなもの。
「冤罪だ…これは絶対冤罪だよ!?みんなこんなの信じるの??嘘だ…嘘でしょう…」
彼女「あの人にやられました。あの人にやられました。あの人にやられました。あの人にやられました。あの人にやられました。あの人にやられました。あの人にやられました」
彼女の弁護士「彼女は、それまで付き合っていた元彼氏のあの方に、これ程の事をされたと訴えています」
メディア「えー、本当にひどい事件が起きた模様です」
世間「最低な奴だなぁw」
世間「そんな奴、一生、監獄にぶち込んでろ」
世間「こんなのが実際いるから怖いんだよね。私も元彼との間にそんな事があったんで、これからは気をつけようと思います」
世間「でもさぁ、あの彼氏の言い分、ほとんど聞かれてないんじゃない?」
世間「現場検証とかちゃんと捜査もしないで、あの男を痴漢呼ばわりするのはちょっとどうかなぁ?」
世間「冤罪じゃないもしかして?」
世間「ちゃんと捜査しろよ警察!んで裁判もちゃんとやれよな!」
メディア「ほんっとにこんな事件は無くしてほしいですね!」
メディア「火の無い所に煙は立たないと言いましてね…」
メディア「彼女さん、可哀想だと思います。だって普通に愛し合って付き合ってて、こんな裁判沙汰になるほどの事件を起こす人って居るでしょうかね?」
メディア「まぁそう言う事を本当にされたから彼女もそう言ったんじゃないかなぁって、私は思いましたけどね」
(別個として存在するメディア側の暗躍)
「今、数字取れそうだからもっと煽っとけ…」
「今度はこの事件報道をテーマにシナリオをよろしくお願いします。10分ぐらいの動画にしたいと思ってますので、できるだけ肉付けして、話題を膨らませる感じでお願いしたいんです」(YouTubeドラマのクライアント)
「視聴者離れしないように、ちょっと誇張して書いて頂けませんか?…ええ、この元彼氏側の言動をもっと派手なものにして『え?こんなひどい事を?』みたいな感じで書いて頂けると良いと思います。こちら参考動画になりますのでぜひお願いします」(YouTubeドラマのクライアント)
裁判官「主文、被告人を…」
有罪判決を受け、
そのまま多額の賠償金を支払わされることになった。
それだけでも人生終わったと言える程きついものだったが、
それ以上にあとに残された風評によるバッシング、
世間からの疎外とダメージ、
生涯付き回るレッテルみたいなものは、
生きながらにして俺を棺桶の中に入れるような
核弾頭ほどの強さを誇ったのだ。
「………何でこんな目に遭わなきゃならないんだ…あいつ、俺を貶めるためにか…初めからこれが目的だったんだろう…」
「……だったら、俺だってそうしても良いよな…もうどうせ終わったようなモンなんだ……今更あいつやったって、守るモンなんてねぇだろ…」
「…こんなの、なった奴にしかわかんねぇよ、この悲惨と絶望…。裁判も結局はイイ加減なもんなんだなぁこんな時。だったら俺がこれからする事もさぁ、イイ加減な裁判で終わらせてくれや…」
(元彼女の自宅)
友達「フフ♪やったねエリカ」
彼女「うんw」
友達「すごい金額だよこれw一生遊んで暮らせんじゃない?wまぁ一生って事はないかwでも随分助かるよねぇ?あいつがああなってくれたお陰でさ」
彼女「うんw…でもさぁ、あんたも共犯だからね」
友達「え?」
彼女「わかってると思うけど、私から離れようとしたらこうだからね?w」
元カノは刃物を持って、その友達を脅す真似をした。
友達「な、何よ急に怖いこと言ってw大丈夫よ」
彼女「ふふんw冗―談wこれから何して遊ぼっかな〜」
その時キッチンから、別の刃物を持った俺が現れた。
女2人は、目をまん丸くして俺を見ているだけ。
相変わらず警察のセキュリティも緩い。
「…その気になればすぐ侵入できるんだよ。お前らが次の人生不安がる事ねぇぞ。ここで終わるんだから」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=GVxwHXnJ97U
味方 天川裕司 @tenkawayuji
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