仕事を終え、土曜に舞い降りる女神。
結局、夕食を食べた後は3人で談笑し、終電近くまで飲んでしまったので泊ることになった奈々。
昔使っていた布団を押し入れから引っ張り出し、俺の部屋で寝た。
さすがに親が居たので事には至らなかったが、結局セミダブルのベッドに侵入してきた奈々と寝ることに。
高校のときは泊りはしても同衾はしなかったので、すこしだけ恥ずかしかった。
日曜日は家でまったりして、残りのカレーをうどんと一緒に食べ、奈々を駅まで送り届けた。
その後は通話をしながらのんびりとした時間を過ごす。
俺はやることはなかったが、奈々がレポートの提出期限が近いとのことなので、一旦通話はお開きになった。
一人になった途端に暇になってしまい、虚しさが込み上げてくる。
「これが日常だったんだけどな~……。なにやってたっけ?」
たぶんなにも考えてなかったんだと思う。
ただ時間を消費してただけ。
でも、そんな日々も嫌いではなかった。
「まぁ、明日の仕事早いからゆっくりしてよ……」
ベッドの上で再び目を瞑る。
どんどん意識が遠のいていく。
目を覚ましたのは朝方の4時。
かなり爆睡してしまったらしい。
リビングへ向かうと母さんの書置きと晩御飯が置いてあった。
『爆睡してたから起こさなかったわ~。温めて食べてね~』
準備されてたのは生姜焼き。
レンジで温まるのを待つ間、ご飯をよそって温まった生姜焼きと共に食べる。
そのあとはシャワーを浴びて7時の仕事に間に合うように家を出た。
☆
長い1週間だった……。
突発的な忙しさに残業も含め、毎日12時間仕事に夢中になった。
家に帰っても奈々と少し通話などをしてはすぐに寝る生活。
頑張ったかいもあって、土曜出勤は免れた。
久々に疲れた気がする……。
「ココア飲む?」
「頼むわ」
「牛乳でいい?」
「おう」
んで、土曜日。
朝起きたら奈々が来ていた。
基本土日は仕事の母さんは既に出勤しているようだ。
目を開けたら奈々が視界に入ってびっくりした。
くすりと笑う姿が女神のようだった。
「お仕事大変だったんでしょ?」
「あぁ……。作ってる製品にトラブルが出て一から作り直しだし、再発防止のための対策考えないといけないわでてんやわんやよ」
「フミくんって工場勤務だったよね?ライン業務?じゃないの?」
「あー、工場ってたしかにそういうイメージ多いよな。俺が居るところはな……」
工場ってのは、大まかに分けると生産・加工・組み立ての三組織から成り立っている。
生産ってのは形を作り、加工は作ったものにネジ穴などを加工、そして前二工程を組み付ける部門だ。
んで、俺が担当してるのは生産系。
とくに生産でも過酷な鋳造ってのをやってるんだ。
「鋳造?聞いたことないわね」
「うーん、簡単に言えば子供のお菓子で型に流し込んで動物を作って食べるようなものがあるだろ?それのアルミ版だよ」
まぁ厳密にはちょっと違うが、そこは気になったら調べてくれ。
んで、これがまた過酷でな。
アルミの融点が約660℃なんだよ。
そしてそれを維持するために溶解炉っていうアルミの温度を維持する機会があるんだけど、その維持する温度ってのが680℃くらいあるわけ。
夏は暑いんだわ。
工場のシャッターを開けてたってサウナ状態。
そのくせ、冬になると工場そのものが冷え込んで寒くなる。
品質的に空調設備を導入できなにので、かなり過酷な環境である。
「ふぅん……。お仕事も大変そうね」
「まぁ加工組立にいるよりはやりがいもあるし、歩き回れるからいいけどね~」
「やりがいねぇ……。わたしはなんで大学に通ってるんだろう……」
「なんか嫌なことがあるのか?」
「嫌なことってわけじゃないんだけど……」
ソファに座ってココアを手にゆっくりと語り始めた。
☆
私は大学では孤立している。
美容系の短大を選んだのであと1年とちょっとで卒業だが、それでもこれまでの行いが仇となっていた。
「おい、綾瀬!金曜メールの別れるってどういう意味だよ!」
「そのまんまの意味よ。あなたとは別れたのよ」
見つからない様に逃げ回ってはいたけど、さすがに逃げ切れるわけないわよね……。
彼に手を引っ張られ、対面した。
「なんで俺が綾瀬に振られたみたいになってんだ!」
「知らないわよ。私は友達がいないもの」
「ちっ!それより何故別れねぇといけねんだよ!俺がお前にいくら注ぎ込んだと思ってんだ!」
「私はなにも貢物をお願いした覚えはないわ。そもそも私はあなたに興味なかったもの。勝手に彼氏面してただけでしょ?」
私の世界が灰色だったとき、告白されても勝手にしなさいとしか言わなかった。
それから勝手に彼氏面されて、勝手に貢いできたとおもったら勝手に愛想つかれて別れて。
そんなことが何度もあって。
フミくんと遭遇してなかったら今も変わらない生活をしていたんだと思うと少し恐怖を覚えた。
「もういいでしょ?私にはあなたたちは眼中じゃないの」
そういって立ち去っていった。
あいつはなんか言ってたけど、無視して次の講義室へ向かった。
翌日。
みんなが私を見てなにか言っている。
耳を少し澄ましてみる。
『やっぱりオトナやってるみたい』
『そうだよね。じゃないと鳴島くんに興味ないなんてありえないよね』
『俺らみたいな大学生のガキには興味ないってこった』
『でも、土曜に街で男と歩いてるの見た人がいるってよ』
どうやらフミくんとのデートを見た人がいるみたい。
最悪ホテルから出てくるところを見られているわけじゃないので放置でいいでしょう。
それにしても今日はやけにみられるわね……。
「おい、綾瀬!お前、別れた次の日に男と歩いてたんだってな!」
昼。
弁当を食べようとしていたら、あいつに捕まった。
「そうね、間違ってないわ」
「あいつと付き合うから俺と別れたってことか?!」
「そうね、そういうことよ」
「ちっ!くそビッチが……」
「言ってなさい」
気分が悪くなったので弁当を纏めた。
結局、次の講義を受けるのも嫌になってきたので家に帰った。
その次の日以降も同様の視線を浴びたが、開き直って今週を乗り切った。
☆
「くそビッチではないです。フミくんとしかやったことないですもん!」
「大学なんて大人になりきれてない子供の箱庭。よく言うわ」
「箱庭、言い得て妙ね!大学辞めたいわ……」
「まぁ約束は守ってね……?手伝えることは手伝うから」
「そう?……ふふ、じゃあ甘えちゃおうかな」
横向きに倒させて膝枕をしてあげる。
サラサラの髪を撫でる。
目を細めて気持ちよさそうにしている。
まるで猫のように。
「やっぱこの時間が一番幸せ……」
「じゃあ今日はゆっくりしてようか」
「……うん」
一番幸せでゆっくりできる時間が心地よかった。
~~~~~~~~~~~~~~
忙しくて内容薄いです。
ごめんなさい!
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高校時代に偽装カップルだった相手に同窓会で本物のカップルになりたい言われました ペンネーム @noa3189
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