物置から行ける、ディストピア世界飯~今日の朝食は謎のペーストと謎肉、あとクラッカーと錠剤~

常闇の霊夜

第1話『謎のペースト、謎の肉』


 私が住んでいる家のアパートには、妙な物置がある。私の部屋の隣にあるのだが、誰も使っていない。大家さんに聞いたところ『あそこはねぇ。元々は別の人が入ってたんだけどいきなり行方不明になってキミが悪いから使ってないのよ』と言っていた。まぁ別にそんなところに入る理由もないので無視をしていた。


 その日は大変酔っぱらっていた。会社で三次会まで無理やり付き合わされ、そして無理やり酒を飲まされた。何とかアパートにやってきたという記憶は覚えているのだが……目が覚めてみると、何やら不思議な世界にやってきていた。


「おいあれナマの人間かよ?」「やっべぇ……どうする?」


 頭が機械で出来た人間や、仰々しい機械などを付けた人間が目の前にいたのだ。そのうえ明らかに文明レベルが高すぎる。何とも言えない世界に目を奪われていると、何やら警察のような人がやってきた。完全に頭が機械の人だった。


「……迷い込んできた奴か」


「あの……ここはどこなのですか?」


「ここかぁ?ここは『第八都市』さ、しっかしどうするかなぁ……マザーに聞いても関係者じゃないから無意味だしなぁ……」


 正直よくはわからないが、それでも一つだけ確かなことはあった。……腹が減っている。グウと腹の虫が鳴ると、警察の人はため息のエフェクトを画面に表示したのち、私をどこかへ連れていくと言い出した。


「オッサン腹減ってんのか?そろそろ配給の時間だし飯でも食っていくか?俺も飯にするからよ」


「あ、ありがたい……」


「俺と同じメニューになるけどいいよな?」


 そう言って彼らの食事処のような場所へ連れていかれた。ほとんどが体の一部を機械に改造されているのが見える。中には全身機械の人間?もいた。警察の人に隣に並ぶようにと言われたので食事を受け取ろうと列に並ぶ。


『本日の配給です。残さず食べるように』


 そう言って出されたものは、何とも言えない物質だった。

 そういえば彼はどう食べるのだろうかと思っていると、機械の下から人間の口を模したモノが出てきた。これで食べるのだろう。


「今日はまぁアタリな方かな。ほれスプーンな」


「あ、どうも……」


 まず第一に目につくのは緑色のベチャベチャだろう。なんのペーストなのだろうか、スプーンで掬った感触はやや液体に近い物。匂いは……ほのかに果実の香りがする。他の人は普通に食べているので、恐る恐る口に入れてみた。


「どうよオッサン?」


「野菜ジュースを半固体にした触感ですね……」


「まぁコイツは『三分の一日野菜』だからな。ほれクラッカーと一緒に食うと旨いぞ?」


 そう言われ、クラッカーに手を伸ばす。クラッカーはこの世界でもクラッカーだった。小麦粉を焼き固めた、何の変哲もないクラッカー。口にしても塩味が薄いクラッカーだ。

 それに緑ペーストを乗せ、一口。


「どうだ?」


「まぁ……。食べられはする」


「そっか」


 少なくとも味は悪くない。悪いのは見た目だけである。ひとまず緑ペーストは後で食べるとして、次に気になったのは謎の肉。

 ……肉なのか?やや赤みがかった色をしているがちゃんと中まで火は通っている様子。コンビーフのようで……触った触感は相変わらずペースト状だ。レバーペーストなのかとも考えたが、匂いは良い。


「……なんだこの味は……」


 口にしてみたが、何とも言えぬ味わいだ。肉の味は確かにする。だが触感が何とも、煮た豆をミキサーか何かで砕いてそれを焼き固めたような……。悪いわけではない。しかし肉かと言われると何かが違う。


「なんだこれは……」


「『ソイミート』だな。大豆を肉状にした奴。昔は養殖合成肉とか言うモノだけだったんだが変な奴が来てからはマシになった方さ」


 これで?と言いたくなったが、確かに肉の味がするだけ良いのかもしれない。少なくともクラッカーには合う。ペーストをクラッカーと共に食べ進め、上に見えていた錠剤を『完全なHOH』で流し込む。


「しかしどっから来たんだオッサン?」


「あぁ……。日本と言う国から来たんだ」


「ニホン!?そりゃ俺らのメシ改善に励んでる奴のとこじゃねぇか!そいつのところに案内してやろうか?今日は暇になっちまったからな!」


 プレートに乗せられたすべての物を食べた所で、警察の人はそう言いだした。私としては会社が気になるところだが、どう帰ればいいのかもわからない現状ついていくしか選択肢がない。


「わかった。……ところで名前はあるのか?」


「俺か?俺は『2349』番だ」


「……ニサ君と呼んでもいいか?」


「なんでもいいぞ!」


 と、言う訳でこの頭部が機械の彼と共に、私はこのディストピア世界に来た日本人を見つけに行くのであった……。

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