第1話【レジスタンスの世界】

 物語の中に入ったばかりの私は、周辺を見渡し状況を整理する。


 中世ヨーロッパ風の街並み・・・・・・異世界作品では、お馴染みとなった舞台設定だ。


 そして、この舞台設定の時に、まず最初に訪れるのは『冒険者ギルド』と呼ばれる場所だ。作品を取り巻く環境や情勢、その他情報を集めることが出来る。


 まあ、冒険者ギルドを中心に、ストーリーが進む作品が多い都合上、此処を訪れないのは論外なのだけれど。


 ・・・・・・・・・・・・


「へー!ネェちゃん、異国から来たってのかい!」


 何処の冒険者ギルドにも大概いる、語りたがりの酒を呑んでいるオジさんに話しかける。


「よく来たな!・・・・・・って、言いたいところだが、最悪のタイミングで来ちまったなぁ」


「最悪?どうしてですか?」


「レジスタンスだよ、レジスタンス・・・・・・!近頃、レジスタンス活動が活発なせいで治安が悪いったらありゃしない。特にネェちゃんみたいな余所者にはすぐに勧誘が湧いてくるから気をつけな。・・・・・・ほれ、早速おいでなさったぞ」




「やぁ、君・・・・・・可愛いね。無所属なら僕のレジスタンスに入らないかい?」


 私たちの会話に青髪の男性が入ってきた。


「無所属だけど、入らない」


「・・・・・・冗談のつもりかい?今や、反抗期を迎えた男女の殆どがレジスタンスを志すと言われる『大レジスタンス時代』に無所属なんて。それとも僕が、レジスタンス『漆黒の翼』のリーダー、ミツルギだということを知らずに言ってしまったのかな?」


「お前がミツルギか・・・・・・!漆黒の翼と言えば、レジスタンスランク4位に位置するレジスタンス!構成員の全員が、毎日王宮に足を向けて寝るという不敬者の集まり!」


「ほう・・・・・・!詳しいね、オジさん。いいでしょう!アナタも僕のレジスタンスに招待しましょう!」


「普通に嫌だが?」


「何だと!?」




「ハッハッハッ!どうやら勧誘に失敗したようだな!ミツルギ!」


 今度は、赤髪の男性が会話に入ってきた。


「俺の名前はブライト!レジスタンスランク3位『漆黒のアギト』のリーダーだ!どうだい?君は、俺のレジスタンスに入るべきだ」


「入らない」


「・・・・・・冗談を言っているんだろ?それは、俺たちのレジスタンスが、国の備品、建造物に片っ端から殴る蹴るを繰り返すパワー系のレジスタンスだと知らずに言ってしまった言葉じゃないのか?」


「それを聞いて、尚のこと入りたくない」


「何だって!?」




「良い、実に良い・・・・・・!上位ランカーからの誘いを一蹴する、その傲慢さ!・・・・・・気に入った、俺様のレジスタンスに入れ」


 さらに、金髪の派手な格好をした男性が会話に入ってきた。


「入らない」


「・・・・・・貴様、つまらない冗談は大概にしろ。まさか、俺様がレジスタンスランク2位『金色の鎧』のリーダーである、ギルカード様だということが分かっていての愚弄じゃあるまいな?」


「ギ、ギルカードだって・・・・・・?」


 ギルド内にどよめきが走る。


「・・・・・・でも、金色の鎧ってあれだろ?表の活動はサッパリで、ネットの掲示板で王国の悪口を垂れ流してる続けてる連中」

「ああ、リーダーのギルカード自身も、その見た目の派手さとは裏腹に、年に数回しか目撃情報が上がらないって話だ」

「何でも、オオクワガタより見つけるのが難しい連中なんだとよ」


「貴様ら・・・・・・、良い度胸だな。よし、いいだろう!今日は祭りだ!スレタイはそうだな・・・・・・『冒険者って低学歴の奴多いよなw』で、どうだ?」


「ああ・・・・・・!?オオクワガタのクセにテメェ!」


「金色のオオクワガタが何処にいる。そういうところが低脳だと言っているんだ、愚か者め」


「この野郎!やっちまえ!!」


 これを皮切りに、ギルド内で大喧嘩が始まった。




「・・・・・・はぁ、ネェちゃんすまねぇな。最近はいつも、こんな調子なんだわ」


「あはは・・・・・・。そう言えば、ランク1位の人も流れで現れるかと思ったら来ませんでしたね」


「ん?ああ、1位の奴なら、もう来てるぞ?」


「?」


「レジスタンスランク1位『漆黒の闇』は[働いたら負け]を理念とし、働かないことこそ、国家に対する最大の叛逆だとした無職の集まりだ。団員数は5万を超え、最も勢いのあるレジスタンス・・・・・・。そして、そのレジスタンスを束ねるリーダーこそが・・・・・・俺だ」


「お前かい」

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