転生の1985〜転生したらwww〜

沼津平成

第1話 かくれんぼの結末

 僕、音無裕太おとなしゆうたはかくれんぼが得意である。今日は友達のヨーちゃんの家に遊びにきていた。

 揖子かじこが虚ろな目をして僕を見た。(ねぇ音無くん……この隠れ場所僕にちょうだい?)

「えっと……」

「だめかぁ」

 揖子はまたむなしそうに笑いながら、立ち去った。揖子には悪いけどこの隠れ場所僕のお気に入りなんだよね。この前ヨーちゃんの家に来た時に見つけたのだけれど、まだかくれんぼでは一度も使っていなかった。


       *


「残り一分!」

 と声が飛んだ。

 声をひそめていた僕には、もう一つ声が聞こえた。

 後ろの階段の影の小さな穴に隠れていた揖子が、僕に聞いたのだ。——「生き残れるかな?」と。

(うん……)僕は小さく頷き返すと、前を向いた。影を動かすのを慎重にした。見つかってはいないらしい。鬼は僕らの方を向いていない。

 僕は大きく前を向いた。コン、と小さく音がした。不運にも天井に登っていたハル太郎が見つかってしまった。大本命だったのに。僕が捕まったら彼に生き延びてもらおうと思っていた。

 揖子はさっきの人狼鬼ごっこでなんとか逃げ切って、疲れ果てていた。もっとも、そのせいで荒れた状態の家でかくれんぼしたから僕も揖子もこんなに耐えられているのだが、揖子がうたた寝をしそうだったので、僕は揖子の顎を慌てて押さえた。

「あぁ……音無くん」

 まあまあの声で、揖子が起きた。

(どこにいるんだ)

 とでも鬼は思ったに違いない。僕らの方を向いて、ニヤリと笑みを浮かべた。

 冷房の空気が寒い。漫画の親父ギャグが決まらなかったときのように寒い。

 それはこの気もそぞろな僕のせいだろうか。

「タッチ」

 肩に手が触れた瞬間、僕は埃っぽいテレビの裏から、テレビの中へ入って行った——。

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