Touch & Go 平和の空に必要ないといわれた元エースパイロットは、世界の空を旅する。
@flanked1911
決着から始まる物語
決着から始まる物語(1)
コルサック軍、ノイシュタットに迫る
首都上空で激戦、戦争の行方は如何に
12月5日発行 —
ベルヌーイ人民共和国連合とコルサック共和国の間で続いている戦争は、いよいよ決定的な局面を迎えています。この紛争は、ベルヌーイ軍がコルサック領に対する侵攻を開始したことから始まりましたが、現在ではコルサック軍が形勢を逆転し、ベルヌーイの首都ノイシュタットへと迫っています。
ノイシュタット上空では激しい空中戦が展開されており、両軍の戦闘機が一進一退の攻防を繰り広げています。ベルヌーイ側は防衛に全力を尽くしていますが、コルサック軍の猛攻により防衛ラインは次第に押し込まれている模様です。
ベルヌーイ政府は国民に冷静さを保つよう呼びかけていますが、戦況は非常に厳しいものとなっています。一方、コルサック側はこの戦争の終結が近いことを示唆しており、ノイシュタット陥落即ち、コルサックの勝利ということとなり、今後の展開に全世界が注目しています。
この戦いがどのように終結するかは、数日内に明らかになるでしょう。ベルヌーイの首都ノイシュタットは陥落するのか、それとも防衛を果たし戦争が続くのか、戦争の行方は目前に迫っています。
◇
ノイシュタット包囲戦
ノイシュタット上空、天候、雪、されど飛行に支障なし。
<地の利はこちらにある、押し返してみせよ!>
「敵の抵抗が激しい、航空支援を要請する!」
<第二守備所、応答せよ! 畜生!>
<第三防衛ライン崩壊! もう後がないぞ!>
「航空支援は不可能、繰り返す、当該地域への航空支援は不可能!」
陸では隊列を組んだ戦車が撃ち合い、海では艦隊からミサイルが発射される。そして、空では戦闘機が互いの背後を取る為に、優雅なループを描く。
その空を、一機のグリペン戦闘機が飛行していた。他の機体が入り乱れて、戦闘を行う中、その一機だけは孤独に、いや孤高に高い空を飛んでいた。
グリペンを操縦する男に無線が繋がった。
「
「
「よし、君の、いや、我々の宿敵が現れた。戦闘エリア2Aにおいて、黄色翼端の戦闘機が目撃された。どうやら、鷲のエンブレムが描かれていたようだ」
ビッグベアと名乗る司令官は、渋い声で伝える。
「黄色連隊の隊長機アドラーか。だが、一機だけなのか」
黄色連隊、コルサックとベルヌーイの戦争で脅威となったベルヌーイのエース部隊だ。コルサック侵攻、ライトニングボルテックス作戦など、多くの重要な任務に携わり、ベルヌーイの前進に協力した。
一方のコルサックも黙っているわけでは無かった。
「何故、一機なのかは分からん。
彼は国の最後を見届けにきたのかもしれん。
どうであれ、
「り、了解しました。アドラーに対する攻撃進路を送信します」
冷静沈着なウルフ、大熊大佐と違い、フォックスとよばれた女性オペレータは怯えた頼りない口調で誘導する。
オペラーターとパイロットで構成された黄色連隊に対抗する為に造られた飛行隊、それがネメシスだ。
「全く、フォックスはいつまで経っても……だが、此処まで来れたのだな」
「大佐。まだ終わっていない」
「ああ、終わらせるのさ」
「フォックスからウルフへ! アドラー機が進路を変えました、あなたの方へ向かってます!」
「了解」
「決着をつけよう!」
ウルフのグリペンは素早いロールと共に、低空に降りる。空の向こうからは、黄色翼端を持つフランカー・ターミネーターが真っすぐ向かってくる。
<黄色連隊のアドラー中佐、お供します!>
<お前達は下がっていろ、危険な相手だ>
「会敵まで30秒! ウルフ……勝利したら、ディナーに連れて行ってください!」
「ラジャー、ウルフ、
<アドラー、交戦>
グリペンに描かれた遠吠えを上げる狼と、フランカーに描かれた雄大な翼を広げる鷲が交錯する時、上空を舞う雪が蒸発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます