二人の娘と揺れる心
奈緒美は、翔太から莉奈を「友達」として紹介されたとき、彼女を一目見てすぐに感じ取ったものがあった。
若くて可愛らしい莉奈を見て、心の中である種の欲望が芽生え始めたのだ。
それは翔太と同じように、彼女も自分の「娘」として迎え入れたいという強い思いだった。
奈緒美は、穏やかな笑顔を浮かべながら、莉奈に好感触な対応を見せた。
「莉奈さん、今日は来てくれてありがとう。翔子がいつもお世話になっているみたいね」
「こちらこそ、翔子とは本当に仲良しで。お招きいただいて嬉しいです」
莉奈は礼儀正しく奈緒美に挨拶を返しながら、翔太をちらりと見た。
女装した翔太の姿は、彼女にとってますます魅力的に映っていた。
その後、奈緒美はリビングに二人を残して、少し席を外すふりをした。
これは、二人きりで話す機会を作るためだった。
奈緒美は二人がうまくいくことを期待しながら、遠くから様子を伺っていた。
「翔太、でいいよね?今日の格好もすごく素敵だよ」
莉奈は翔太に微笑みながら近づいた。
女の子らしい服を着た翔太にますます惹かれていく彼女は、積極的に彼にアプローチを続けた。
翔太はそんな莉奈の言葉に胸が高鳴りながらも、複雑な気持ちを抱えていた。
莉奈の視線は、完全に女の子としての自分に向けられている。
男として彼女を好きになり始めていた翔太にとって、女として生きている状態の自分を好かれているという事実は、どうしても受け入れがたい部分があった。
「ありがとう。でも…このままで本当にいいのかな、俺たち…」
翔太は勇気を出して、自分の心に浮かんでいた疑問を口にした。
「どういう意味?」
莉奈は少し驚いた表情を浮かべ、翔太の目を見つめた。
彼女は翔太が何か悩んでいることに気づいたが、その答えが予想外のものであることを感じ取っていた。
「俺、莉奈のことが好きだ。でも、今の俺は…こうやって女として生活してる自分を、好きでいてくれるのかどうかが分からなくて…」
翔太の声は少し震えていた。
彼の言葉には、自分の素直な感情と、女として見られていることへの葛藤が混ざっていた。
莉奈はその言葉に少し考え込みながらも、優しく微笑んだ。
「私は、翔太が男でも女でも関係ないよ。今の翔子としての姿も可愛いし、そんな翔太も好き。でも、もし本当の翔太を見たなら、それもきっと好きになれるよ」
彼女の言葉は、翔太にとって救いでもあり、同時にさらなる葛藤を生んだ。
莉奈は女装した状態の自分を好きだと言ってくれたが、それでも男としての自分をどう受け入れるのかは、まだはっきりしていなかった。
数日が経ち、翔太は莉奈との関係を続けながら、心の中で葛藤を抱え続けていた。
学校では相変わらず女装したまま過ごし、家でもセーラー服を着る日々が続いている。
しかし、莉奈との時間は楽しく、今の生活をある意味で楽しんでいる自分もいた。
奈緒美は、そんな翔太を見て微笑ましく感じながらも、彼の変化に気づいていた。
翔太が莉奈に惹かれていることは分かっていたが、それ以上に、彼が女装を受け入れつつあることも見逃さなかった。
ある夜、奈緒美は翔太に問いかけた。「翔子、最近楽しそうね。莉奈さんともいい感じじゃない?」
翔太は少し照れながらも、「うん、まあ…」と答えた。
奈緒美はその返事に満足そうに頷きながらも、ふと真剣な表情を見せた。「もし、もっと女の子として自然に過ごせるようになりたいって思ったら、いつでも言ってね。手助けは惜しまないわ」
その言葉に、翔太は一瞬驚いたが、奈緒美の優しさを感じ取った。
彼女が自分を見守り、支えてくれていることは分かっていたが、その言葉が持つ意味がどこまで深いのかは、まだ理解しきれていなかった。
翌日、翔太は莉奈との待ち合わせをするために学校を出た。
二人きりで過ごす時間が増えるにつれ、翔太はますます莉奈への感情が深まっていったが、その一方で、自分の正体と向き合うことにまだ答えを見つけられていなかった。
「翔太、これからもずっと私たち、このままでいいよね?」
莉奈の言葉に、翔太は答えられず、ただ曖昧に頷いた。
その曖昧さが、彼自身の心の中に潜む悩みを反映していた。
彼女との関係を楽しみながらも、翔太はこれからどうすべきか、ますます迷い始めていた。
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