第3話 村……村? ハァン

「ん? おいそこのアンタ、旅人か? にしても荷物が少ないな……ちょっとフードを取ってもらえるか?」


 遠目に見えた村にたどり着いた俺は早速門番に止められていた。怪しいやつじゃないかの確認だろう。


「ほら、コレで良いか?」

「おぅ、魔族じゃねぇな……その仮面は何だ?」

「呪いの装備っぽくてな、外せないんだよ」

「そうか……それは、何と言うか……御愁傷様?」


 めっちゃ哀れな目で見られてしまった。

 確かに呪いの装備ってとんでもない効果を持つ奴が多いっぽいし、こんな反応をされても仕方ないと言えば仕方ないんだけど……うん。


「それで? アンタは何を求めてここに来たんだ? ここに住んでる俺が言うのもなんだが、此処は何も無ぇ危険地帯だろ? 物好きにしても限度があるってもんだ」

「ちょっと道に迷ってしまってね。いつの間にかこんな場所まで歩いてきてしまったんだよ」

「そりゃまた不運な……て事は王国への帰り道をご所望か?」

「そう言う事だね。王国までの道って分かる?」


「あー……すまねぇが俺はこの村から出た事がなくてな。村長とかなら知ってるかもしてねぇな。村長の所まで案内してやろうか?」


 門番の青年はそう言いながら俺に見えない様に後ろ手で何やらサインを出した様だ。

 普通の人間なら気付かないだろう……けれども俺はハイスペ魔王さんボディを持っている。


 この魔王さんボディには特殊な眼……厨二病的に言うなら魔眼があるのだ。見た目は普通の眼だけれども、透視能力とかもあって結構便利だったりするのだ。勿論服だけを透かして見る事もできる。

 ……千里眼と透視の魔眼を併用して見た四天王の1人のお姉さんがエッチだった。流石はサキュバス。


 そんな透視の魔眼で人体と服を透視して後ろ手で送ったサインを見分けたと言うわけだ。それと、サインを受け取って何処かへと歩いて行ったオジさんが1人……


 薄汚れていて、ギリギリな生活をしているにも関わらずなんとも獰猛な目付きをしていた。あれは人を殺してる目だね、うん。


「そうだね……案内して欲しいかも」

「おぅ分かった。それじゃあ付いてきてくれ」


 とは言え、別に悪い人達であると決まってるわけじゃ無い。そのままなんとも胡散臭げな笑みを浮かべた門番さんの後をついて行く。


 村長さんの所までの道のりを歩きながら、村を観察する。

 ボロボロの家屋に、ポツンとある井戸。常備してある薪も非常に少なく、本当にギリギリの生活をしているかの様だ。


 正に寒村。ギリギリの生活をなんとか維持できてるととしか言えない状態だ。

 けれども、住民の目は鋭い。俺と目があった住民はまるで獲物を見定めるかの様に見てきている。


 ……ただ物珍しいからって可能性もあるけど。


「此処が村長の家だ。ちょっと待っててくれ……話をしてくるからよ」

「わざわざありがとうね」

「なんの、いいってことよ」


 門番さんが村長さん家に入って行って、俺は1人となる。

 にしても、なんとな〜くだけど血の匂いがする。この魔王さんボディは吸血鬼な事もあって血の匂いには敏感。だから微妙に血の匂いが感じ取れるのだ。


 血の匂いの発生源は……村長さん家の裏庭かな? んー、死体でも埋めてるのかねぇ。


 そんな風に考えながら待っていると、鐘の音の様な物が鳴り響いた。それもかなりの音量で、だ。

 不思議に思っていると、先程から少し遠目のところで様子見していた村人達が俺を包囲するのようしながら近付いてきた。


 ……その手に様々な武器を持って。うーん、めんどくさいったらありゃしないね。


「すまねぇなぁ、旅人さんよ。アンタの見ぐるみ全部剥がせて貰うわ。これも俺達が生きるためだ、許してくれよ?」

「許しを請うくらいならやらなきゃいいと思うんだけど?」

「それは無理な相談だなぁ」


 村長さん家から出てきた門番さんが鋭い剣を俺に向けてくる。


 そして奇襲がごとく、背後から迫ってきてた1人の男が首を狙って刃物を振ってきた。


『ガンッ』


 その刃物は、俺の首に直撃し————刃が潰れた。

 流石は魔王さんボディ、この程度の金属じゃ傷を付ける事すら叶わないってか。


 一応魔王さんの記憶ではこの程度の攻撃で傷つく事はないって分かってたけど、実際に体験してみると少し怖い。

 こんな殺意マシマシで刃を向けられたのはゴブリンを含めて二回目なのだ。慣れてるわけがない。


「ねぇ、これって俺と敵対するって事で良いんだよね?」

「……おい、なんでお前は無事なんだよ。なんで死んでいないっ!」

「そりゃあだって……ダメージになってないからでしょ」


 ノーモーションで回し蹴りを放ち、先程首を切ろうとしてくれた男を吹き飛ばす。

 見事に回し蹴りが横腹に直撃した男は、そのまま血飛沫となってしまった。……ありゃま、思った以上に人間って脆いのね。


「ヒッ……! な、なんなんだお前はっ!」


 門番さんが典型的な三下悪役の言葉を放ってるけどガン無視して地魔法で村全体を土の壁で囲んで逃げれない様にする。


 ……うん、みんな顔を青くさせてるね。人を殺して奪おうとする事はできても、自分が死ぬ事はできないっと……


 まっ、別に全員殺すって訳じゃないけどね。


 精神魔法を発動させて、村人全員を昏睡させる。この魔法、正義の心が強ければ強い程効き目が薄い。そのせいもあって勇者には全く効かないのだとか。やっぱ勇者って凄いんだね。


 ん? 此処にいる人達? さぁ……でも多分、一ヶ月近くは寝るんじゃないかな? だって正義の心なんて無い様な盗賊っぽいし。


「さてと、物色でもしますかねぇ」


 村人総員でこちらに敵対したとなれば、物を漁るのにも罪悪感が沸かないからありがたい。

 まずは目の前にある村長さん家からにしようかな〜

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