次元を渡る者

第四章: 隣町の危機 後編

アユが村人の治療を続けていたが、ふと遠くで轟音が響き渡り、彼女はその音の方を見た。そこには、村の中心にある広場で、巨大なドラゴンが炎を吐き出し、逃げ遅れた人々を次々と焼き尽くしていた。

アユはその光景を見て恐怖に凍りつき、全身が震え始めた。「なぜ、ドラゴンが…こんなところに…」

彼女は治療を続けるべきだったが、その場から動けなくなり、恐怖に打ち勝てなかった。身を隠しながら、震える声で呟いた。「誰か…助けて…」

その時、空気が裂ける音が響き渡った。アユが恐る恐る顔を上げると、目の前に突然現れたのは黒髪の美少年だった。彼の冷たい瞳はドラゴンを鋭く見据え、口元には薄い笑みが浮かんでいた。

彼は何も言わずに、ゆっくりと手を前に差し出すと、次の瞬間、ドラゴンが一瞬で粉砕された。まるでその存在が最初からなかったかのように、ドラゴンの身体は風に散り、消え去った。

「…な、何が…？」とアユは驚愕し、恐怖と混乱の中で呟いた。

少年は一言も言葉を発することなく、ゆっくりと歩き始めた。彼が進むたびに、周囲の魔物たちがまるで無力化され、一瞬で消滅していった。村人たちはその光景を目にして震え上がり、少年の力に恐怖を抱いた。

その圧倒的な力の持ち主に対し、勇敢な村人が震えながらも声をかけた。「あ、あなたは…一体何者なんですか！？助けてください！村を守ってください！」

しかし、少年は一瞬村人に目を向けたが、その瞳には一切の感情がなかった。まるでその願いが無意味であるかのように無視し、再び歩き出した。そして、次元を切り裂くように空中に手を振りかざすと、黒い裂け目が生じた。

「俺には関係ない」と低く呟くと、裂け目に足を踏み入れ、そのまま姿を消した。

その場にはただ静まり返った村が残され、アユは震えながらもその光景を見つめていた。彼女の目には恐怖と同時に、圧倒的な力への興味と憧れが芽生えていた。

「すごい…あの人、誰…？」とアユは小さく呟き、その方向をじっと見つめ続けた。

その頃、ジュンヤはオーガとの激戦に苦しんでいた。彼の剣技では、オーガの圧倒的な力に対抗することができず、何度も攻撃をかわすだけで精一杯だった。

「くそ…こんな奴に、負けるわけには…！」とジュンヤが叫んだその時、背後から力強い声が響いた。

「ジュンヤ、下がれ！増援が来たぞ！」

ルシウスが部下たちを率いて到着し、ジュンヤの前に立ちふさがった。ルシウスは剣を構え、オーガに向かって突進した。「ここからは俺が相手をする。お前たちは周りの魔物を処理しろ！」

ジュンヤは疲労した体で頷き、フィオナと共に周囲の魔物たちを倒し始めた。ルシウスの部下たちもそれぞれ魔物と戦い、村を守るために全力で戦闘に臨んでいた。

ルシウスはオーガと一対一で向き合い、その剛腕を見事な剣技で受け止めながら、反撃の機会を狙っていた。そして、隙をついて剣を振り下ろし、オーガの胸を貫いた。巨体が地面に倒れ込むと、ようやく戦いは終わりを迎えた。