超鋼機整備士の静かな暮らし

@keysmash

第1話 主人公、出社する。

朝7時、いつもの時間にアラームが鳴った。

軽やかなリズムを立てながら、起床時刻を知らせる時計に対して

何とも言えない表情で視線を送る。


"また朝が来てしまった、、、"


布団の中からえいやと手を伸ばし、かろうじてアラームを止めた。

止めたアラームをホーム画面に戻すと、時計は7時5分を示していた。

布団にはいったまま、先ほどまでアラームを鳴らしていた小型端末を操作すると

1時間前に入電があったことに気づいた。


しょぼつく目をこすりながら誰からの電話だったか確認すると、

上司からの電話であった為、露骨に嫌な顔をしてしまう。


この人からの電話に一度目で出れなかった場合、

出れなかった理由を考えてかけなおす必要があり、

必然、表情も暗くなるというものだ。


後でかけなおしてもバチは当たるまい。

口実づくりを後回しにし、ひとまず布団を下げて起床した。


既に朝の貴重な30分を眠る時間に費やしたため、家を出る時間が近い。

朝食を割愛することで時間を稼ぎ、さっと身支度を済ませ、ふと鏡の中の自分に目をやると、やや痩身の中年男性の姿があった。

目の下にはクマがあり、もつれ気味の黒髪と眠そうに垂れた目が

仕事の疲労を訴えている。櫛とドライヤーを使って何とか髪を押さえつけ、

鏡の中の自分に声をかけた。

「今日だけ乗り切ればいいから、、、」

これは自分を励ますために、あえて口に出すようにしている。


靴を履き、玄関まで行ったところで小型端末に着電。

画面を見ると上司からであったため、軽くため息をついたのちに浮かぶ応答ボタンを押した。


「はい、宮本です」

と答えると、焦ったような上司の声が端末から響く

「なんで電話にでなかった!」

言い訳が準備できていない為、

回答を選んでいると相手が答えをまたずにしゃべり続けた。

「まぁいい。今回は見逃すが、次から確実に出るように」

この男がこんなことを言うとは珍しい、さては何か頼みがあるなと予感が働いた。

「昨日から状況が変わった。起動テストを月曜日に前倒しとする」

若干焦りながら答える。嫌な予感がする。

「月曜日というと、いつのですか」

計画では1月後、少なくとも30日の猶予があったはずだ。

「2日後だ」

向こうからの回答は、宮本のクマを深くするのに十分だった。

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