VTuberのユニコーンは地獄へ落ちるバットエンド物語

赤地 鎌

第1話 VTuberとの出会い


 ぼくのオジさんは、YouTubeに詳しい。

 VTuberという動画に詳しくて、楽しそうに話している。

 母さんは、オジさんの妹で、ぼくは甥っ子という事だ。


 そんな甥っ子のぼくを大切にしてくれる。

 だからこそ、自分の失敗を語ってくれる。

 

 オジさんがVTuberで失敗した事を話す。

「絶対に、ガチ恋やユニコーンになっちゃダメだぞ」


 ガチ恋、それは画面にいるVTuberに本気で恋心をお金も生活も差し出してしまう人達らしい。

 ユニコーン、VTuberに過度な幻想を抱いて、VTuberが清らかな乙女、処女である事、素晴らしい存在である事を強要する危険な人達らしい。


 ボクは、そんな存在なんてほど遠い世界の住人だと思っていた。


 今日、この日までは…。



 十五歳の少年、正之は中学受験で燃え尽きて、第二志望の高校に通う事になった。

 本命の高校には受かる事はできず、凹んだ日々を過ごしていた。

 第二志望の高校でも、別に問題ではない。

 ただ、必死に頑張っても…届かなかった事、内申点が低い事、自分の実力の無さを徹底的に教えられて落ち込んでいた。


 だから、学校生活にも馴染めてはいるように見えて、表面的な感じでしかない。

 何処となく空っぽな気持ちを抱えて、満たされない心の隙間を持ったまま日々を過ごしていた。


 学校からの宿題を終えて正之は、自分の部屋のベッドに寝っ転がり、スマホを見る。

 だいたい、見るのは自分の好きな宇宙やロケット関係、ゲームや、ゲームの実況配信。

 そんなYouTubeの動画なので、必然的に男性が多い。

 そんな中…とあるVTuberがAIの選別に出てきた。


「こんにちは、わたし佑月ユイ、新人のVTuberです。色んな配信を頑張って行きたいと思っています。主に…」

と、VTuberの広告が流れる。

 そのVTuberがやる事が偶然にも、正之の興味がある事ばかりだった。


 その佑月ユイは、黒髪で清楚な感じで、何処となく大人しい。

 

 正之は

「ちょっと、見て見るか…」

と、そのVの佑月ユイの動画をタップした。


 そして、何か…気が紛れた。

 凄くゲームが上手い訳でもない。凄い知識や技術がある訳でもない。

 ただ、必死に頑張る姿が…良かった。


 正之は、上げられている佑月ユイの動画を見るようになった。

 必死に頑張る姿が良くて、その頑張りが報われると、自分のように喜んだ。


 佑月ユイが告げる

「私の目標は、みんなにもっと楽しんで貰える事です。だから…応援をよろしくお願いします」

 

 目映かった。

 こんなに良い子がいるなんて…。

と、正之がVの佑月ユイの好感度が上がっていく。


 そして…Vの佑月ユイの生配信を見に行く。

 Vの佑月ユイは配信を開始して五ヶ月、登録者は二万人で、佑月ユイがいるのは大手のVの事務所とは違う中堅クラスのVの事務所だ。


 正之は初めてコメントする。

”はじめまして…”

 

 Vの佑月ユイは

「あれ? もしかして…初めての方ですか?」


 Vはデビューして最初の頃は…色々な人達がコメントに来る。

 だが、それも二ヶ月を過ぎれば…ほとんどが固定されたアカウントになる。

 

 VTuberは何万人といる。

 その大半は、女の子のVばかりで、多くの視聴者は固定ではなく。

 その日その日で面白そうなVへ流れて行く。

 登録者は二万人のVの生配信で、視聴してくれる人数も百人前後が開始五ヶ月目のレベルだ。

 それでも多い方だ。

 大抵は、二桁、十人も視聴してくれる人がいれば良い方で、数人かゼロがVの界隈での視聴者数の90%だ。


 幸いな事に佑月ユイは、記憶力が良かった。

 だから、正之のアカウントが新しい人だと分かり

「初見さん、こんにちは」


 正之の気持ちがホッと明るくなる。

”こんにちは、いつもアーカイブで見ています”


 佑月ユイが優しく

「今日は来てくれて、ありがとうございます」


 コメント欄も新しく来てくれる人達に賑わって、優しく迎えてくれた。


 正之は、安心するような気持ちを持つ。

 ここにいていいよって、感じを受けていた。


 佑月ユイが色んなゲームに挑戦して、頑張る姿を正之はコメント欄の人達と一緒に応援する。


 これが正之のVの始まりだった。


 十六歳になる少年、心に空いた穴を埋めるように、Vの佑月ユイへのめり込んでしまう。


 人は心にできた穴を埋めたがる。

 でも…それは…

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