物知りさんと、なつきちゃん
街が見渡せる丘。
ポツンと置かれているベンチにいつもその人はいる。
「こんにちは、ものしりさん。」
『こんにちは。また来たのね。』
「うん。」
『またいじめられたのね』
「うん。」
『そう。』
「ねえ、ものしりさん。」
『なに』
「わたしってぶさいく?」
『いいえ。』
「みんながぶさいくって言うの」
『そんなこと気にしなくていいわ』
「わたし、可愛くなりたい。」
『どうして』
「そしたらみんなに好きになってもらえるでしょ?」
『見た目が可愛いくなきゃ好きになれないような人に好かれたって、なんの意味もないわ。』
「それでも、好きになってもらえたら、可愛いって言ってもらえたら嬉しいもん」
『可愛いって言ってくれるひとはいないの?』
「ママとパパは言ってくれるよ。那月は可愛いねって。」
『それでいいじゃない。十分よ。』
「でも家族だもん。そりゃ可愛いって言うよ。』
『言わない家族だっているわ。』
「そうなの?」
『そうよ。あんたがもらってる可愛いは、何よりも価値のある特別なものなのよ。』
「とくべつ、、?」
『愛がたくさんこもってるからね。そこら辺に落ちてる空っぽの可愛いなんかと比べ物にならないくらい特別。本物よ。』
「ママとパパの可愛いは特別なんだ。」
『そうよ。羨ましいわ。あんたは特別なものを毎日もらってる。』
「へへへ、そうかな」
『もう帰りなさい。日が落ちてきた。』
「ものしりさんのママとパパは可愛いって言ってくれる?」
『、、、どうだったかな。じゃあね。』
彼女に背を向ける。
「わたしはものしりさん可愛いと思うよ!またね!」
駆け足で帰ろうとする背中に声をかける。
『ねえ。』
「なーに?」
『あんたは可愛いわよ。』
「へへへ、ありがとう!!」
照れくさそうに、嬉しそうに笑うその顔は、後ろの夕日よりも眩しかった。
結局、明日も生きる選択をする私へ はなかわ ゆうに @hankawa_yuni
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