第3話 はじまりの物語
蓮くんが亡くなってからの1年は、目の前が真っ暗で何も見えなかった。蓮くんがいない世界なんて無意味なものだ。蓮くんとの約束を自分は守れない、私には蓮くんしかいない。そう思い、蓮を失った悲しみに暮れて生きていた。
そんな私に想像もつかない出来事が起こった。
──優翔との出会い──
どん底の1年を終え、私の心は大きく変化した。
一歩ずつ前に進み始め、アニメーションの会社に転職した。毎日絵と向き合う日々が楽しくてしかたなかった。やがて夢中で絵を描くことが習慣となった。
そんなある日、私は、アニメによるmvを作ってほしい、との依頼を受けることになった。
私はその依頼の打ち合わせをするために今日はカフェに来ていた。
自身初挑戦となるこの大きな企画に、期待と緊張感でソワソワしながら待っていると、ようやく打ち合わせをする人がやってきた。その人はとても綺麗な顔立ちの男性だった。
「遅れて申し訳ございません。大変お待たせしていまいましたよね、すいません。⚪︎⚪︎ミュージックレコードの有田優翔(ありたゆうと)と申します。本日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いいたします。⚪︎⚪︎アニメーションの佐倉紗璦(さくらさあ)です。では、さっそく話を進めさせていただきますね」
この打ち合わせと雑談が終わる頃には、私たちはすっかり意気投合し、話は大盛り上がりしていた。
こうやって誰かとお話しして盛り上がって大笑いしたのはいつぶりだろう。
この感覚久しぶりかも。なんか、楽しい!
そう思うと、自然と笑顔になれた。
その後、相手の会社と上手く連携を組みながら、作品は順調に完成に向けて進んでいる。もちろん、有田くんとも一緒に仕事をする機会も増えていき、私たちの距離も少しずつではあるが、縮まっていった。
いつも通り打ち合わせを終え、おしゃべりに花を咲かせていると、有田くんは突然切り出した。
「佐倉さん、良かったら…その、えっと連絡先交換してくれませんか?」
「はい。大丈夫ですよ。」
この瞬間、私たちの運命は動き始めた──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます