【長編】悪役令嬢・幸宮祈里は平々凡々とした生活を送りたい。【連載中】
椰子カナタ
Chapter1 転生したけど、没落回避とか全くする気がありません。
Chapter 1-1
読者のみなさん、ごめんなさい。
何を言っているんだお前はと思われるかもしれないが、ふとしたきっかけで前世を思い出した私・
自慢じゃないが前世の私は引きこもりのオタクだった。そのお蔭か記憶が蘇った瞬間、ドハマりしていた乙女ゲーム『恋なんてした事がない君へ』――略称は『恋君』――の世界に転生した事を瞬時に悟ったのである。それも悪役令嬢として名高いキャラクター、幸宮祈里に。
同時に、前世の私は悪役令嬢転生ものが好きでそれなりの数を読んできたと思う。それが高じて、私が転生するなら『恋君』の祈里がいいかなぁなんて妄想した覚えも確かにあるけれど!
もう一度言おう。読者のみなさん、ごめんなさい。
多分これはフィクションだ。いや、私にとっては紛うことないリアルなんだけどさ。まさか自分が悪役令嬢として転生したなんて、フィクションじゃなきゃありえないでしょ。
私にはこの仮定が正しいのかどうか一生分かりえないけど、もし正しいのだとして読者の方がいらっしゃるのなら、私は一言謝っておかなければと思ったのだ。私の声が文字になっているのかも分からないが、どうか届いてくれると嬉しい。
私、没落を回避するつもりも没落するつもりもありません。
自分の身に降りかかってみると分かる。正直ダルい。
人一倍努力して、苦労ばかり重ねてようやく大成功を掴むのは辛い。かと言ってゲーム通りに何の努力もせずやりたい放題に生きた結果、恋のバトルに負けた挙句に没落してしまうのもご免だ。
この幸宮祈里というキャラクター、中身は選民意識の塊で高飛車。自分より身分の低い人間は全て足元にひれ伏す存在だと思い込んでいたり、目的の為なら手段を選ばないなど、テンプレ悪役令嬢そのものである。
しかしその反動故か、有するスペックはゲーム内最強と称されるほど高い。幸宮グループという大企業の社長令嬢である彼女は、勉強もスポーツも万能、艶やかな亜麻色のロングヘアに抜き身の刀のような美貌とグラビアアイドル顔負けのプロポーションを持つ、神から全てを与えられた完璧美少女なのだ。
このスペックさえあれば転生したらなんでもできるよ、というのが私の妄想の原動力だったのだが、それはさておき。
これだけのスペックがあるのだ。だからこそ、私は普通に生きたい。普通に生きて、人並みの幸せを得たい。前世で引きこもりだった私の、これは切実な願いだった。妄想の中ではいっぱいやらかしたけどね!
と言う訳で、私は没落回避の為に決して頑張ったりしないし、かといって没落したい訳でもないのでそういうのを期待している方には全力で誤っておかなければならない。
もし私のこの想いがちゃんと文章になっているのだとしたら、それはきっと真面目にやる気がない作者の言い訳に使われているというだけの事なので、叱っておいて頂ければなと思うのであった。
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