Chapter5 女忍者はつらいよ

Chapter 5-1

 コタローたちがダンジョンから出ると、出入り口だった黒い靄は霧散して消えた。ダンジョンクリアだ。コタローがそう告げると、アズサがハイタッチを始める。


「コタローくん、いえーい!」

「い、いえーい……」


 コタローはどぎまぎしながら、アズサとハイタッチをする。やわらかいような、痛いような、むずかゆいような、不思議な感覚だった。これがハイタッチ……!


「ん……」

「む、コボルトが」


 小さな声に反応したのはみっちょんだった。コタローたちが見やると、コボルトの身体が変化していく。

 体毛が縮んでいき、身長も伸びていく。やがて、コボルトだったそれはスーツ姿の男性に変わってしまった。


「ど、どういうこと!?」

「わ、私もわからないですよ! か、影ノ内くん?」

「ごめん、委員長さん。俺もわかんない」


 一体何が起きているのか。コタローたちが混乱していると、男性がむくりと起き上がる。


「キミ、たちは……。あ、いや、なんとなく覚えているよ……。助けてくれて、ありがとう」


 まだうつろな表情の男性は、コタローたちに頭を下げる。どういうことかと聞いてみると、男性は数日前、テレビから出てきた黒い瘴気に取り憑かれてしまったのだという。

 そしてダンジョンのボスとなり、時間が経つごとに身体はコボルトに変化していったのだと。


「それじゃあ、僕は帰るよ……。キミたちも、気を付けて……」


 男性はふらふらとした足取りで、路地裏を後にしようとする。


 だが、彼が角に差しかかったところで、その首と胴体が真っ二つに分かれて倒れた。


「えっ――」

「――下がって!!」


 アズサたちが戸惑う間もなく、コタローは叫んだ。そしてストレージから刀を取り出し、前方から迫り来る一陣の風と交錯する。


「……ほう。やるな」

「それはどうも……!」


 ガキンと金属音を鳴らし、コタローの刀と刃を交えたのは、クナイだった。そのクナイの持ち主は瞬時に距離を離し、コタローたちにその姿を晒した。


 それは全身を黒い布で覆った人物だった。体つきからしておそらくは女性。その出で立ちと武器から連想できるのは。


「忍者……?」

「ご名答。賞品の代わりにお命頂戴」

「させるか……!! みっちょん、二人をお願い!!」

「う、うむ!」


 そしてコタローと女忍者は、再び刃を交えた。

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