第6話 生徒会に設立申請

 *** 生徒会室 ***


「あら、湊ちゃん。いらっしゃい」

 そう言ったのは湊の友達らしい生徒会会計の金持綾子かねもちあやこ。二年B組だ。

 二本の三つ編みをさげた女の子である。


「やっほー。あやちゃん、がんばってるに~。ぐ~」

 仮本屋杏奈は親し気に両手の親指を立ててエド・はるみの真似をした。


「杏奈ちゃんも一緒なの? なんの集まり?」

「前に話した文芸同好会のメンバーが集まったのよ」


「えー!!? そうなの……すごい意外なメンツだね」

「紆余曲折あったのよ。」


「顧問の先生は決まってるの?」

「国語の大倉先生に頼めることになってるの」

「そっか。じゃぁ書類に必要事項を記入してね」


 皆、自分の名前を書き込んだ。

(いよいよ、引き返せなくなってしまった。)


「具体的な活動目的の欄はどうするの?」

 一禾が訪ねた。


 湊が答えた。

「そりゃーもちろん、作家デビューでしょ!!」

「作家デビューを目指した創作活動……と」一禾が書いた。


 こうして生徒会に設立申請を出した。


「じゃぁ。審議の後、校長先生に提出するから、数日待ってね」

 こうして俺たちは生徒会室を後にした。


 *** 生徒会室前 廊下 ***


「ん~~~っ、やったー!! これでひと段落着いたね!」

 湊が声を上げた。

「これからどうする?? 部活動する? それともお茶する??」

 湊は元気が有り余っているようである。


「わーい。杏奈、お茶したーい」


「私は帰るわ。早く家に届いているはずの新刊が読みたいの。」と言ったのは一禾。

「ボクも帰りまスー」啓太郎も同調した。


「俺も、原稿を投稿したいから今日は帰るよ」


「分った、じゃぁまた明日、放課後コンピューター室に集合ね。――じゃぁ、私たちはガスト行っちゃう?」

「いくいくぅ~♪」


「あ、その前に皆でライン交換しよう。スマホあるよね?」

 湊の提案で俺たちはスマホを取り出した。


「これでいつでも連絡取れるね。じゃぁまた明日」

「ばぁいばぁ~い♪」


 帰宅後、俺は無事に郵便局へ赴き完成原稿を投稿することができた。


 かくして、俺の薔薇色の学園青春ストーリーが始まるはずだった。


 *** 翌日 2年B組 ***


「おまえ、部活始めたんだってな?」

「内申のためか? がんばるねー」

 優斗と健介が絡んできた。


「で、何部?」

「文芸同好会」


「マジかよ。メンバーは?」

「C組の根本湊が部長で他が、同じくC組吉井啓太郎、D組仁井野一禾、B組仮本屋杏奈、そして俺」


「うわぁあwwww」

「やばい有名なメンツやんwww」


「やばいって何がだよ」(いや、何となくわかるけど)


「まず根本湊は普通の子だけど、いつも杖を突いていて体育は休んでる」

「ひどい事故にあって、それ以来走る事が出来ないって話。それで有名なんだよ」

「へー。(まぁ見たまんまだな)」


「吉井啓太郎はやばい」

「やばいが服着て歩いてるくらいヤバイ」

「どうやばいんだよ」


「めちゃくちゃ虐められてる」

「制服燃やされたとかでいつもジャージ。ナイフを隠し持ってるって噂がある」

「ナイフだと!!??(誰か刺すつもりか??!)」


「仁井野はD組のクールビューティーで男子から人気があるんだけど、告白全部断ってるって」

「同性愛者なんだって聞いたよ」

「ど、同性愛!!?(わが校でも秘密の花園が咲いているのか!!?)」


「仮本屋杏奈に至っては語るに及ばない」

「アイツ、授業も受けずに校長室で校長と一緒にお茶すすってるんだぜ。ずるいよな」

「あはははは(それは校長が駄目だ)」


「そして葛間創太」

「陰キャ街道まっしぐら」


「頭が痛いな……。」


 ――俺、このまま文芸同好会に入って大丈夫なのかな……。

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