第6話 あたしとナマ中とにいさま
「・・・アバカムっ!」
「でかい声出すな、さっさと入れ」
「おお、開いた。お疲れさま、にいさま」
「早いな、今日は」
「にいさまのクルマが見えたからすぐ来たの」
「どうした、行き詰まってるのか?」
「あい〜」
◇
「にいさま、お膝っ」
「はいはい」
「ごろりん♪」
「で、どうしたって?」
「あい。カレがね、ナマ中したいからピル飲めって言うんだけど、どうなのかなあって」
「えっとナマ中ってのはゴム着けず生で中出しってことでいいか?」
「あい」
「ふうん」
「にいさまはどう思う?」
「どう、とは?」
「えっとね、カレの要望を聞いてあげるべきかってことと、女子高生がピル飲んでも大丈夫なのかなって・・・あれっ・・・にいさまがあたしを見つめてる♡」
「お前さあ」
「あい♪」
「口がめっちゃサカナくさいんだけど」
「ええっ、そんなことうら若き女子高生に言う!?、ふつう」
「晩メシなによ」
「北海道産ホッケの開きだよ、すっごいでかかった♪」
「そっかお前んち、動物タンパクはサカナオンリーだもんな」
「うん、お肉禁止」
「あの
「冷凍食品もファミレスも禁止、食べていいのはオーガニックに無農薬の自然食品だけでち」
「友だちづき合いで困らないのか?」
「困るよ、ハンバーグもポテトも食べれないんだもん。あたしだけ紅茶〜〜」
「こっそり食えよ」
「ムリムリ、バレる。ママ、すごい鋭いの。それよりにいさま、あの瘴気マスク取ってよ」
「N95のことか、どうした?」
「だってにいさまがあたしのお口がクサイって言うから・・・しょぼん」
「いや、サカナの匂いがするって言っただけで、臭いわけじゃないぞ。晩メシまだだから腹すいてんだよ。お前やけに早かっただろ」
「にいさまのお夕飯は、テーブルの上でいいニオイを放っているアレでつか?」
「そうだな、今晩はチキンカツみたいだな」
「ち、チキンカツ、ジュルルル・・・」
「く、食うか?、少し」
「・・・いいんでちか?」
「あの
◇
「にいさま、あーん♪」
「膝まくらで寝ころんだまま食べるのか?」
「あい」
「頼むから誤嚥するなよ」
「若いからだいじょぶ、モグモグ・・・おニク・・・おいちいよ♪」
「ホント、うまそうに食うなあ。肉に飢えていたんだな〜」
「棒太郎すごくて♪」
「肉欲って言え、誰もわかんねえよ」
「モグモグ、にいさま」
「もっとほしいのか?」
「それもなんだけモゴ、あたしこれ、ごっくんできないの・・・絶対ママにバレるから」
「ええ、どういうこと?」
「たぶモゴ、明日くらいカラダの匂いとか、トイレの匂いとかでバレるモゴ・・・だから」
「まあ仕方ないな、ペッしてもいいぞ。ほらティッシュ」
「ううん、にいさまが食べてあげてほしいの。お料理のために殺された鶏さんのためにも」
「ええっ!?」
「このままゴミ箱じゃ、鶏さんがかわいそう。お願いモゴ」
「うーん、仕方ないか。で、どうする?、まさかの口移しじゃないだろな」
「ドキモゴ♡」
「まあ、さすがにお前が皿に吐き出したのを食べるほど変態じゃないから、それしかないか」
「モキューン♡」
「じゃあ、早くよこしな」
「あい、モゴモゴ。どうぞでち」
「いやこれヤバいやつだよな、大丈夫かなオレたち」
「にいさま、ごっくんした?」
「ああ」
「ありがとう、にいさまとチキンカツ間接キッス♡」
「間接?、いや、くちびるもふれてたけどな」
「ええっ!?、にいさまとのファーストキッスはまだ取っておきたいから、これは間接キッスというカウントでお願いでつ」
「ハイハイ」
◇
「まあ実際のところな」
「あい」
「締めつけ厳しいけど、お前の食生活がやたらと健康的なせいなんだろうな」
「あい?」
「お前って、女子高生ってことを抜きにしても、肌つやも髪の毛も、正直かなり綺麗だよな」
「ええーっ!」
「なんだよ」
「にいさまがっ、にいさまがっ、にいさまがあたしのこと、キレイって言ったあ!」
「コラ、でかい声出すな。あと3回もにいさま言うな」
「だって、だーって、だって♪」
「なんか歌みたいだな、なんだっけソレ」
「翼くん。あたし、キレイ?」
「肌とか髪とかな」
「プーン、顔はどう?、芸能人だったら誰に似てる?」
「・・・うーん、誰に似てるかな」
「モーニング娘。だったら?」
「なんであえてモー娘。だよ?」
「TWICEとかNiziUとか、にいさまはおじさんだからわかんないでしょ♪」
「まあなあ」
「道重さゆみさんは?」
「ああ・・・若い頃に似てるかも」
「えへへ、にいさまがあたしを道重さんに似てるって言った〜♪」
「それよりも、本題忘れてないか。ナマ中とピルだろ、たしか」
「あっ、そうだった。忘れてたでち」
「で、お前のその不倫カレがナマ中出ししたいからピル飲めって?」
「うん、どう思うにいさま?」
「どうもこうも、クズだなまったく」
「やっぱり?」
「オレの考えを先に言うと、ピルは飲んでもいい。けどナマでヤるのはやめた方がいいんじゃないか」
「ピルは大丈夫なの?」
「身長なんぼ?」
「158cmでつ」
「まだ伸びてる?」
「もう止まってると思う、関係あるの?」
「まあな、じゃあピルは飲んでも問題はないだろうな」
「そっか、メリットは?」
「生理痛が楽になるー、PMSとかも楽になるー、月経移動しやすいー、あたりがとりあえずわかりやすいメリットかな」
「フムフム」
「長期的には卵巣がんになりにくいー」
「フムフム」
「統計的に少し子宮頸がんのリスクが上がるのは、ゴムしなくなるやつが一定数いるからってわけだけじゃねえみたいだけどな〜」
「ワクチン受けてるよ、子宮頸がんワクチン♪」
「おりこう、でもゴムもしとけよ」
「あい」
「つまりピルは自分のために飲んでいいと思うけど、だからってそのクズにナマ中出しさせてると性病とかパピローマウイルスまみれになるぞって話」
「クズクズ言わないでよ、性病かどうかもわかんないじゃん」
「あのね、既婚者でお前と不倫している時点で、他の女ともヤってるからそいつ」
「ええ〜、そうなの〜!?」
◇
「そりゃそうだろ、お前、自分だけがカレの不倫相手だって思ってんの?」
「あたしが一番大好きで、あたしだけ愛してるって言ってくれるよいつも♡」
「・・・それみんなに言うやつだから、あと、今は妊娠中で嫁さんメンタル不安定だから、出産したら離婚するから、とか」
「・・・言ってた。にいさま、あたし騙されてるのかなあ?」
「まあ不倫って時点で騙すも騙されるもないから、そういう関係でいいって思えるんならいいんじゃないか」
「そっか、前向きな不倫だね♪」
「ただし嫌われたくないからって無茶な要求を聞くのはよくないな、どうせ向こうは最悪切れてもいいって思ってるからな」
「にいさま、あたしのことを心配してる?」
「いろんな意味で、お前は限りなく心配だよ」
「やったあ♪」
「・・・」
「やっぱり他にもカノジョ、いるかなあ?」
「いるだろ、お前のめっちゃ近しい友だちもそうだったりするよ。こういうのって」
「コワッ」
「つまりな・・・お?、お前のスマホ鳴ってんじゃないか?」
「ええ〜、いいトコだったのにぃ。あ、ママリンだあ」
「まあまた今度、覚えていたら話してやるよ、さっさと帰んないと怒られるぞ」
「あい〜、オヤスミにいさま。貴重なお話ありがとう。せーのっ、ルーラ!」
「おお、怒涛のように去っていった・・・と思ったらすごい勢いで戻ってきた!」
「忘れてたっ!、チュッ♡」
「ちょ、おまっ、コラ、ほっぺにっ」
「エヘヘヘヘ〜、やってやったあ♪」
「・・・まったく、あいつめ〜」
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