覚醒者と契約者が嘲笑う狂った世界で最強の死霊神の俺は世界を裏から支配する

ダークネスソルト

少年は狂った世界の戦場に立つ


 消炎と血と油と腐敗臭が入り混じった地獄の中で今日も俺は銃口を敵に向ける。


 ダダダダダダ


 最初は鼓膜が破れるかと思う程にうるさかった筈の銃声が戦場に響き渡る。

 慣れとは本当に恐ろしい物だ。今では自動車の排気音程度にしか気にならない。

 前を向ければ人間、いや人間の形をした俺を殺そうとする化け物が銃を持って襲い掛かってくる。

 そう思い込まないとメンタルがやられるからそう思い込んでいる。

 

「よお、戦友調子はどうだ?」

 仲良く隣で銃を撃ってる友軍が話しかけてきた。もちろん顔を見る余裕なんてないし、声も知らないから名前も知らない誰かだ。

 とはいえこんなクソったれた状況だ。喋って気を紛らわせるくらいは許してもらえるだろう。


「どうって、最悪も最悪だよ。クソったれな上層部が。明らかに向こうの数の方が多いじゃないか。援軍をとっとと寄越せ」


「ハハハ。それは間違いないね。とはいえ戦友。残念なお知らせだ。この状況援軍なんて優しいプレゼントは期待出来そうにないぜ」


「そんなものは百も承知だよ。でも希望を持って生きた方が楽しいだろ」


「それは、間違いないな。じゃあこの戦場から生き延びたら浴びて溺れる酒を呑もうぜ」


「お生憎様俺は未成年でな。ジンジャーエールでいいなら付き合うぜ」


「未成年たぁ。珍しい。まあこの部隊の立場を考えれば珍しい範囲で収まっちまうがな。それじゃあジンジャーエールで付き合って貰おうか」


「もちろんお前の奢りで頼むぞ」


「ハハハ、もちろん年上の俺が奢ってや    パン    r」

 

 バタン


 足元に生暖かい液体が流れてくるのを感じた。

 ズボンに染み込み、嫌な温度が伝わってくる。


 相も変わらず隣を見る余裕はなかった。


 戦友を殺した目の前の敵を殺す為に銃を放つ。


 ダダダダダダ

 ダダダダダダ

 ダダダダダダ


 よくあることだ。

 このクソったれな戦場では昨日まで飯を一緒に食べてた戦友が次の日には身元確認すら難しい肉塊になっていることが、少し話して仲良くなった戦友が次の瞬間に物言わぬ肉塊になってることが、頼りになる先輩が死体すら上がらずに二階級特進することが。

 よくあることだ。


 嗚呼、そうだ。よくあることなのだ。


「クソったれがぁぁぁぁぁぁ」

 叫んで銃を撃つ。

 敵の頭めがけて銃を撃つ。

 

 撃って殺せば俺が死ぬ可能性が減り、俺の戦友達の犠牲が減る。

 だから俺は一人で多くの敵を殺さなければならないんだ。


 カチン

 カチン


「クソ、弾切れか」

 即席の塹壕に身を隠しつつ、隣の死体の銃弾を漁る。


「お前、そんな顔してたんだな」

 さっき喋ってた戦友の顔に手を当てて瞼を閉じさせる。


「さて、弔い合戦といくか」

 俺はまた銃を撃つ。







 パン





 右肩を撃ち抜かれた。

 激痛で気が触れそうになるが、アドレナリンのせいかおかげか、動けない程じゃないし意識もしっかりとしている。

 でも、銃を持って撃つという行為は出来なくなった。


 塹壕に身を隠しながら周りを見る。

 想像以上に死体が転がっていた。

 

「ああ。これは負けかな」

 さっき見た敵の数はこちらのおよそ3倍あった。

 こちらの方が武器の質が良いとはいえ、数は力だ。数の力で劣る我らが単純な塹壕間での打ち合いで勝てる道理がないというものだ。

 全くもって指揮官は何を考えてるのやらやら、とんでもない無能だな。いや、指揮官も所詮は上層部の命令に従ってるだけ本当に腹が立つので安全な椅子の上からふんぞり返ってるカス共だな。


 ここから勝てる可能性は、援軍が来るか、敵が欲をかいて攻めて来て白兵戦に持ち込めてワンちゃん・・・。

 

「ハハハ。絶対に無理だな。ただまあ、精々最後まで意地汚く生き足掻いでみるか。地獄でアイツ等に笑われない為にもな」

 そして俺は慣れた手つきで包帯で肩の部分を縛り止血してから痛みを無理やりこらえて銃を握る。

 目の前にいるクソったれな敵兵を殺す為に。




――――――――


 今日はキリの良い所までである3話まで更新します。

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