崩壊不条理世界のストーリーテラー
白河夜船
プロローグ
「どうしてこうなった……」
古い造りの西洋の建物物がひしめく町に敷かれた石畳の道。
歴史を感じさせる中世ヨーロッパ風の街並みが続く大通りを俺、『栗寺 日月』は肩を落としながらとぼとぼと歩いていた。
「勇者様!」
「頑張ってください、勇者様!」
「応援しています、勇者様!」
古めかしい昔のファッションに身を包んだ道行く人々に、すれ違いざまに声援を掛けられる。その人たちは心から応援しているようで全く悪意は無いのは分かっているが、『勇者』と呼ばれる度にぐさぐさと心にダメージが入る。
「勇者様って凄い違和感あるね、栗寺くん」
一緒に隣を歩く少女が亜麻色の髪を揺らして笑う。
彼女の名前は『千歳 理亜』。小学生時代からの友達である女の子だった。
その少女はとんがり帽子に長いローブ、木で出来た大きな杖を持った、いかにも魔法使いといった出で立ちをしていた。
だが、コスプレをしているのは彼女の趣味ではない。
こんな格好をしている原因は俺にあり、土下座して謝りたい衝動に駆られる。
そして彼女と同じく俺も鎧の胸当てにマント、ブロードソードにラウンドシールドと言った中世ファンタジーな格好をしている。
西洋の武具なんて生粋の日本人高校生である俺が似合う訳もなく。
合わないのは自分でも分かっているし今すぐにでも脱ぎ捨てたいが、残念ながら身につけなければならない理由がある。
「どんな罰ゲームだ……。魔王討伐とか勘弁してくれよ……」
何の因果か、これから俺たちはこの世界を滅ぼそうとする魔王を討伐する旅に出なければならない。
勇気ある若者が巨悪に立ち向かう。
これが王道なファンタジーものならば、大冒険の果ての英雄譚になるかもしれない。
そう、ここが『不条理とバグにまみれた自作ゲームの世界』でなければ……。
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