前半パート

 博物館の中を逃げる学生たち。その中でも、肩を組んで走る女子学生2人にカメラはズームする。1人は足をくじいたらしく、上手く歩けずにいた。

「ねえ砥石ちゃん!もういいから、早く逃げてちょうだい!」

「嫌だよ!!私絶対置いてかない!美錠ちゃんのこと見捨てたくないもん!」

ショートボブの少女・砥石がロングヘアの少女・美錠を背負い、よたよたと歩き出す。

「逃がさないんだモン〜」

背後の展示室からゆったりと怪人が姿を現す。背丈は平均的な男性より少し大きく、姿はまるで遮光器土偶のようだった。

「土偶ビーム!」

怪人は目から光線を乱射する。逃げ惑う人々はそのビームによって茶色く染まりまるで焼き物のように固まってしまう。

「危ない!」

振り返った美錠は砥石を庇おうと身を逸らす。バランスを崩して転ぶ砥石。ビームが掠った美錠の左半身が土に変わる。

「美錠ちゃん!!」

振り返った砥石が悲鳴をあげる。怪人がすぐそこに迫っている。

「お嬢様は連れてくんだモン!そっちのちんちくりんはとっととひっこむジョ〜!」

怪人は半身が固まった美錠の腕を持ち、引き摺っていく。

「いーやだー!!渡さなーーいーー!」

砥石は反対側の腕を持ちそれを引き止める。その姿はまるで大岡裁きのようだった。

「ああもう面倒だジョ〜!食らえ!土偶ビーム!!」

再び怪人の目が光を帯び、思わず砥石は目をつぶる。誰か、助けて!!

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