星と丸の王国

七月七日-フヅキナノカ

プロローグ


 これは夢?

 ここはどこ?


 目を開けると青空が広がっていた。

まぶしっ、えっ?‥‥‥そ、ら、?‥‥‥」


 寝る前に、お気に入りのエッセイを読んだ。孫娘が祖母を連れてロンドンを旅するお話だ。作者の名前が私と同じなので余計に親近感があり、何度も読み返して、いつかロンドンに行ってみたいと思っていた。その記憶はハッキリと残ってる。

 それで夢を見たんだな。きっとそうだ。

 まだ頭がボーッとしている。夢の続きか。


 そっか、ここはロンドンなのか?

 待てよ、草の上?ロンドンの草むら?


 土と草の匂いがする。

 半身を起こしてあたりを見まわした。

 私は赤いジャージの上下を着ていた。パジャマ代わりにいつも着て寝るやつだ。昨夜も着ていた。


 ほっぺたをつねってみる。大昔から変わらない、夢か現実かを確かめる方法だ。他のやり方は知らない。

「痛っ」


 夢ではない?いや、夢の中でほっぺたをつねったのかも。

 もう一度つねってみる。やっぱり痛い。

 訳がわからなかった。

「えっ、待って待って待って」

 誰に何を待てって言ってんだ、私?



『ミチルはこんらんした』

 ポケ○ンの台詞せりふが頭をよぎる。よくやられたなぁ。これやられると自分で自分を攻撃してしまうのだ。

 しばし、小さい頃やり倒していたRPGに思いをせる。主人公にミチルという名前をつけてた。あれはDSだったかなぁ。


 待て待て、馳せてる場合じゃないだろ。

 こんな前代未聞の大ピンチでも、全く関係ない思い出にひたれる自分のメンタルの強さに敬服した。凄いぞ、自分。


 横に目をやると真っ黒な細長いかたまりが横たわっていた。人だ。

 え?学ラン?誰?


 顔を覗き込むと、その人物も目を開けた。よく知った顔だった。


 それは幼馴染おさななじみの同級生、慶太だった。

 しかも慶太は、高校生に戻っていた。

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