実想世界

反家

出会いと不帰の理

第1話 

 「今日はいよいよ入学式か...」すこし緊張した様子で俺はひとり呟いた。これから何度も通うことになる道を歩きながら、期待と憂鬱を膨らませながら、歩いていた。

”県立鷹宮たかみや高校入学式”と書かれた看板が見えてきたころに「ねぇ君、新入生だよね?」後ろから声をかけられた。「えっと...」困惑していると「私は御影みかげさやっていうの!よろしくね!」と自己紹介をしてきた。あいては白髪のショートカットが特徴的な少女であった。「僕は、鶴城陽つるぎ ようって言います、よろしく」緊張と少女の容姿に見惚れかしこまってしまった。(緊張しすぎだぞ、俺...ああ失敗したぁ)と内心で自己嫌悪に陥っていると。「入学式はまだ1時間は先だけどずいぶん来るのが早いね」と言われ、「あれ、ほんとだ!」高校の時計を見るとまだ7時前であり、入学式までは1時間以上も時間が空いていた。「自分の時計がずれていて気付かなかったみたいだ、でも御影さんはどうしてこんな時間に?」彼女は自分よりもあとに来たのにもかかわらず、入学式までまだ時間があることに気づいていた。「まぁちょっとね、あと私のことはさやでいいよ」理由をはぐらかされた気もするが、特に気にもせず「じゃあ僕も陽って呼んでよ」と返した。「わかったよ!同じクラスだったらよろしくね!」といい去っていった。

 玄関前に掲示されていたクラス分けを頼りに教室へと向かうとまだ誰も来ていなかったようだ。黒板に書かれた席にカバンを置き、少し校内を探索しようと思い教室をあとにした。(それにしてもきれいな校舎だよな)鷹宮高校は今年に校舎が新しくなったばかりであるため、入試倍率が高かった。一通りまわった頃に時刻を確認するとまだ7時半であった。最後に屋上を見ておくかと思い扉を開けるとそこには”何かの儀式を行うかのような様子の御影さや”がいた。

 「あれ!?陽くん!?どうしてここに!?」慌てた様子の彼女は次に「あ...やば」と口にしたと思った瞬間あたりが光に包まれ衝撃を受け気絶した。そして目を覚ましてあたりを見回すと、何の変哲もない屋上が広がっており、時計を見ると7時55分であった。(やば、時間だ)と急いで教室へと戻った。教室にはもう全員そろっていたようで自分が最後の一人であった。クラスには彼女もおり、(さやも同じクラスだったのか...)と思いつつ席へ座った。すると教室に身長180くらいで眼鏡をかけたすらっとした男が入ってきた。「皆さん、おはようございます。このクラスの担任となる坂本倫太郎です、1年間よろしくお願いします。」そういうと男は続けて入学式の段取りを説明し始めた。

 入学式が終わり、教室に戻った後、自己紹介が始まり、ついに自分の番になり、(緊張する...失敗したくない、失敗したら高校生活終了だぁ)と内心つぶやいたあと「僕は鶴城陽って言います、好きなものはミルクティー嫌いなものは炭酸飲料です。中学ではサッカーやってました、よろしくお願いします。」(よっしゃー!噛まずに言えた!)そして全員の自己紹介が終わると配布物が配られ、そのまま解散となった。帰ろうとカバンをもって教室を出ようとしたとき、また彼女に声をかけられた。

 「放課後少し時間ある?ちょっと話したいことがあって...」少し不安そうな様子の彼女に声をかけられて、特に予定もなかったので了承すると、ほっとしたような表情になった。そして再び屋上に行き彼女は扉の鍵を閉めた。「さっき屋上で見たものを忘れてほしいの、陽が本気で忘れたいと思ってくれれば私はそれを忘却させることができるから」それは答え合わせのようであった。「君は、さやは魔法が使えるのか?」その質問に「魔法、まぁ似たようなものだよ、でも全部忘れてもらうから」俺は体験したことへの好奇心はありつつも深入りすること、要求を拒否することに危険を感じ、それを受け入れることとした。「わかったよ、さやに迷惑をかけるくらいなら忘れるさ」そう答えると彼女は俺の額に手を当てなにかをした。

 (あれ、なんで屋上にいたんだっけ)さっきまで何をしていたのかが曖昧になったために自身の行動を振り返っていると「陽くん校内探索つき合わせちゃってごめんね!帰ろっか!」(あぁそうだった、放課後に校内を見て回らないか誘われたんだった。)何をしていたか思い出した俺は、下校するのであった。

 それから2か月が過ぎた。中間考査も終わり、梅雨の時期になっていた。「陽!」呼ばれてそちらを向くと1本のペットボトルが飛んできた。「あぶねぇなぁ悠太」ボトルを受け止め相手をジト目でみた。「いやぁテスト勉強付き合ってくれてサンキューな!」こいつは加賀美悠太かがみ ゆうたクラスメイトで友人だ。バスケ部に入っていて、スポーツ推薦で入学したらしい。「次は自力で乗り越えられるよう頑張るんだな」というと「そんなぁ次も頼みますぜ!」と調子のいいやつである。そんな雑談をしていると「陽くん!ちょっと手伝って~」とさやから呼ばれ、「じゃあ俺行くから」といいその場を後にした。

 「何手伝えばいい?」そう聞くと「坂本先生に掲示物の張替え頼まれちゃってさぁ」といわれ「なんで俺?それならクラス委員の藤沢に頼めよ」と返すと「あいつ部活のほうの用事で駆り出されてるみたいでさ、頼むよ」というのでしぶしぶ了承することにした。半刻程作業し終えたころには校内にはもう人が残っておらず、「今日はやけにみんな帰るの早いな...」とつぶやくとそれを聞いていた彼女はすこし焦ったような様子で「今日は早めに帰ったほうがいい」とだけ言って走り去ってしまった。

 そんな彼女を見届けてから少し遅れて自分もそのあとを追いかけた、無意識であった。(あんな様子でどうしたんだよ...)そう考えながら追いかけると気づいたら屋上にたどり着いていた。扉を開けるとさやと和装の女性がいた。「御影さん、今日からこのかなめは私たち三条の家が管理することになりました、ですので、これからは、要に触れないでほしいのです。」女性が言うと「そんな勝手な、ここは代々御影の管轄だったはず、なんで急に...」とさやが困惑していると「協会はすでに了承済みですよ」と女性が続けて言う。俺は聞いてはいけないことを聞いてしまった気がしてその場を離れようとしたとき、”ガタッ”と少し大きい音を出してしまった。「っだれだ!人払いの結界を張っていたはず、術士か!」女性はそういうとともに何かを撃ち出し攻撃してきた。「うわぁぁ!」その衝撃によって階段から落ちた俺は捕まり2人のもとに晒されてしまった。「陽くん!?なんでまた!?」彼女が言う(また?...そうかそうだった)その言葉がきっかけとなり忘れていた記憶を取り戻した。彼女の反応をみて女性は「あら知り合いだったんですか?術士の知り合いが学校にいるだなんて報告聞いてませんけど?」と言い「彼は、陽くんは一般人です。」彼女はそういうが「彼はマナを知覚できるようだけれど」と返すと「うそ!?さっきまでは違ったはずなのに!?」とうろたえる彼女に「彼に適正があったとはいえ一般人を短期間に何度もマナにあてて目覚めさせたのは問題よ、これどう責任を取るのかしら?」と言い続けて「要の管理の権限移譲、これをなにも言わず受け入れてくれるなら、彼は自然に目覚めた能力者ってしておいてあげてもいいけど?」と言い彼女はしばらく悩んだ後「...わかりました」と絞り出すように答えた。その返答に満足した女性は「じゃあそういうことですので」と言い去っていった。「さや、その迷惑かけた...」と謝罪すると「いや、いいよ。人払いがかけられているのに聞いてない陽くんをみても気づかなかった私のミスだし。それに、目覚めたのもたぶん私の暗示が下手でマナを使いすぎたせいだし。」続けて彼女は「それに、これから大変なのは陽くんだよ」と言う「俺?」と言うと「うん、君にはこれから術士になってもらうので!」と彼女は言う。

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