一般通過自己犠牲全体回復魔法持ち魔法少女

マッキーイトイト

救済の始まり

救済の魔法

夢見る日記

・・・



x月a日

私は、魔法少女になった。


魔法。そう、魔法!

魔法が使えるように、なった!


アニメや漫画みたいな、ファンタジーな力でみんなを助ける。

そんな存在に、ついに私はなったんだ……!


と、思ってたんだけど、別に魔力に目覚めたからといってすぐに特別な魔法が使えるわけじゃないらしい。

いま使えるのは、簡単な魔力弾を撃つことと、ちょっとした身体強化くらい。

それでも前の弱っちい私とは比べ物にならないくらい強くなってるのだけど、こんなんじゃ全然戦えないそうで。


私たちの敵、魔獣は凶悪で、凶暴で、強力な固有魔法に目覚めないと前線には出してもらえない。


そんなわけで、私も新人魔法少女の例に漏れず後方勤務からのスタートだ。私の所属は第十二支援部隊。

ほんとはバリバリ戦ってカッコよくみんなを守りたいけど、まあ裏方もみんなを助けることには変わりないもんね……。


よし、明日から頑張るぞ!



・・・



x月b日

なんか思ってたのと違った……。

魔法少女の組織の裏側って思ったより殺伐しててちょっと怖い。

でも、みんなを守る魔法少女を、私たちが陰ながら守ってるってことで、それも当然なのかな。

一つのミスがみんなを危険に晒すのだから、気を引き締めていかないと。


連絡とか、救援とか、補給とか、折衝とか、ほかにももろもろ。やることはいっぱいだ。

私は新人だから責任のあることはやらせてもらえない。

正直、先輩の補助というか雑用ばっかりだけど。

それでも人が少なくて猫の手だって必要な、結構忙しい雰囲気だった。

こんな私でもきっと役に立てるんだ。


うん、頑張ろう。



・・・



x月d日

友達ができたかもしれない。よかった。

私の味方をしてくれる人が一人いるだけで、なんとかなるって気になる。


上手くいかないことが多くて、へこたれそうになるけど。

きっとできる。頑張れ私。



・・・



x月f日

今日もミスをした。小さなミスだけど、そんなの言い訳にならない。

そのミスが大きなミスにつながって、被害が増えるかもしれないのだから。


先輩たちにも、たぶん見限られ始めてる。

すれ違いざまに、舌打ちされたり、邪魔って言われる。


友達は気にしない方がいいって慰めてくれたけど、やっぱりつらい。

役に立ちたいのに、頑張ってもなかなか上手くいかない。


でも私は頑張ることしかできないから。もっと頑張らなきゃ。



・・・



x月k日

勘違いしてたみたい。私に友達は、いない。

一人でも、頑張らなきゃ。



・・・



x月n日

私は役立たずだ。何もできない。

死んだ方がいいって声も聞こえた。私のことだろうか。

そうかもしれない。私もそう思う。


みんなも失敗はするけど、私ほどじゃない。

みんなの失敗だって、私のせいで増えてる。

私の価値ってなんなんだろう。


がんばりたいのに。みんなの力になりたいのに。

何をどうがんばったらいいのかわからなくなってきちゃった。



・・・



x月p日

私は、いない方がいいのかな。

人が足りないから追い出されたりしないけど、いてもいみがない。

なんのためにいるのかぜんぜんわからない。


みんなの役に立ちたいのに、ジャマになってる。

いない方が、みんなの足をひっぱらずに済むのかもしれない。

どうしたらいいのかな。


私の命ってなんのためにあるの?



・・・



x月s日

はやくみんなの役に立ちたい。

私のまほう。はやくめざめて。



・・・



x月t日

みんなが。私のせいだ。



・・・



x月u日

私だけが生きている。なんで?

私のせいなのに。せんぱい、なんで?

ともだちも、ともだちじゃないのに、私なんかを、なんで?

私が死んでれば、たすかったのに。

私なんかが。私なんか。



・・・



x月x日

やった!


ついに、やった!


魔法が目覚めた!


私の魔法。私だけの魔法。やっと、ようやく、私の命に価値ができた。

しかも、例がないくらい早い覚醒。私って、もしかしてすごい?


後方基地に哨戒をすり抜けた魔獣たちがたくさんやってきたときは本当に危なかったけど。

私の魔法がみんなを助けたんだ。


この魔法、もしかしたら一回しか使えないのかなって思ったけど、それも大丈夫だった。

復活に三日もかかったけど、何回だって使える。何回だってみんなを助けられる。


よかった、本当によかった。これで私も、めでたく固有魔法持ちだ。やった。


ちょっとテンションが上がりすぎてみんなには引かれちゃってるけど、これで役立たずじゃない。

本部に固有魔法登録はした。私の命の、上手な使い方はきっと大人の人たちが考えてくれる。


どこに所属するんだろうな、楽しみだな。激戦区に行けるかな?

三日に一回ってのがネックだけど、それでも効果は絶大だ。すごい人たちの役に立てる。


よし!頑張ろう!!



・・・



x月z日

配属、変わらなかった。


なんで?


なんか色々言われたけど、よくわからなかった。

もういいや、勝手に行こう。ここじゃ私は役に立たないから。


私は死なないし、私は死なせない。

みんなを助けるんだ。


頑張るぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る