チートクリエイター転生~地獄で身に余る罰を受けた俺はチート作成能力を与えられて人生やり直し!今生は天国目指して徳積みます!~
竜田揚げゆたか
第1話罪と地獄
俺は死んだ……彼女に刺されて。
性格も見た目も全てが好みだった。
彼女の好みを把握し、その理想に近づこうと努力した。そしてついに告白に成功し、交際を始めた。
暫くは順風満帆な日々を送っていた。
だがそれは長く続かなかった。何故なら彼女に推しが出来たからだ。
所謂ガチ恋営業をするVtuberにまんまとハマってしまったのだ。
Vtuberオタクになった彼女はグッズやボイス、スパチャなどの推し活に結婚貯金まで使い……その総額は三千万円にも昇った。
挙句、休日に共に過ごす時間さえ推し活に奪われた。
やがて不満が爆発した俺は彼女を取り戻そうと前々から手を出していたチートツール作成……それを使う事にした。
作成したツールは彼女の推しのアンチに販売。FPSのアカウントにチートを付与しBANさせる物だ。
そのVtuberはチーターの烙印を押され炎上。逃げるように休止した。
これで彼女も目が覚めると思った。
だがそうはならなかった。
結果は振るわない上、ある時彼女は俺のいない間に部屋に入り、アンチとのやり取りを見つけて発狂。そのまま帰宅した俺を刺し殺した。
そして今俺は今地獄に居る。
比喩では無い。延々と逆巻く炎に燃やされている。
気がついた時から炎に焼かれていた。気絶しては起き、地獄の苦しみを味わう。その繰り返し。
気を失っては起き、焼かれる。只管。
何十回何百回と繰り返している内に頭は麻痺し、多少痛みに慣れる。こうして思考する事ができる。
と言っても何を考えてもこの苦しみは終わらないので意味は無い。
そしてまたも意識は落ちた。
次に目覚めた時、変化があった。
焼かれる痛みも自分の肉が焼ける臭いも無い。
こんな事は本当に何時ぶりだろうか。
何十年何百年か、逆に一瞬にも感じる時間を過ごした気がする。
「おい、気がついたか?」
不躾な声に振り返ると、そこには人骨の山。その上を見上げると、鬼のような異形。閻魔大王としか形容出来ない者の姿があった。
「もう理解していると思うがここは地獄だ。そして我はこの地獄を統べる神」
厳格な声が簡潔に告げる。
「貴様らはハデス、閻魔大王などと呼んでいるか?」
「その地獄の神様がなんのようですか?」
威嚇するように酷く低い声で俺は問いかける。
「クックックッ……地獄に堕ちたのに随分呑み込みが早いのう?」
気が遠くなる時間を炎に焼かれて過ごしたんだ。もう何が来ても驚きはしない。
「さて、我が貴様を呼び出したのは他でもない……謝罪だ」
「は?」
思ってもみない言葉に俺は素の声が出てしまった。
「地獄は本来罪を犯した者に罰を与える場所。お主が生前した罪は……えーと、不正ツールの製造販売か」
そうだ。俺は不正ツール……所謂ゲームのチートツールを製造販売し生計を立てていた。
「本来の罰はもう少し軽い地獄だったのだが……手違いで焦熱地獄に堕ちてしまった。すまなかったな」
「は、はあぁぁぁ!?」
あの無限にも思えた苦しみが手違いで……? 確かに罪を犯した俺。それに対して釣り合わない罰。それは流石に……馬鹿げている!
「ふざけるな……ふざけんなよ!あれが、手違いで? マジでありえねぇ!」
「まあ落ち着け、我も鬼では無い……神だ。補填をしよう」
俺の怒りを予想していたように神は言う。面白いジョークを言うなこのクソは。
「なんだよ補填って! 内容によっちゃただじゃおかねぇからね!」
「元気な奴め……地獄は生前の罪に見合った罰を与え、罪を雪ぐのが役割だ。そしてその地獄の刑期を終えた者は魂を様々な世界に転生せしめるのだ」
地獄とか天国の仕組みだろうか? まるでフィクションだ。
「故にお主は今すぐに転生させてやる……幾つか力を与えてな」
「力……?」
あれか? Web小説発祥アニメによくある転生特典とか言う奴か?
馬鹿馬鹿しいと信じていなかったが、事実は小説よりも奇なりって事か。
「一つ目は前世の記憶を持ち越す力、二つ目は言語……慣れ親しんだ認識になる力。そしてもう一つはお主の気質にあったものにしよう……ふむ、チート作成能力とでも名付けようか?」
「チート……?」
「文字通り、お主が作って売っていたような能力を生み出し現実にする力だ。まあ、制限はあるが……使ってのお楽しみだ」
なるほど……どうやら地獄の苦しみの補填として人生やり直し、強くてニューゲームらしい。
「さて、もう一つお主に真実を話す」
「真実?」
「この世界は徳を重視する。人が死んだ時、生前の功績や罪を秤にかけるのだ。そうして転生までの待ち時間を天国で過ごすか地獄で刑期として過ごすかが決まる」
世界のシステム。そんなものがあったのか。
「お主にはその数値が可視化するようにしてやる。精々その徳の数に振り回されるがいい」
嘲るように言い放つ。随分性格の悪い神様だ。
「さて、お主の転生する世界は……ふむ、空想が好きな人間には持ってこいの世界だろう」
俺の体が白く光る。いよいよ転生の時らしい。
「では次の人生の終わりにまた会おう」
地獄なんて二度とごめんだ。遠のく意識の中、心底そう思うのだった。
目覚めた時、そこは木の香りのする家の中だった。
目の前には散らばった積み木。そして金髪を緩く三つ編みにして左肩から垂らした女性がいた。
漫画とかで見たような、ヨーロッパとかなんかその辺の昔ながら服に身を包んでいる。
一目でこの世界の俺の母と認識した。
ここから俺の異世界で第二の人生が始まったのだった。
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