【試作】才能の園 〜婚約破棄された令嬢と芸術家集団の絆~
キョウキョウ
第1話 発端
王家の所有する壮麗な建物の大広間では、新たな花園の完成を祝うパーティーが開催されていた。
この花園は、王家からエリュシオンのメンバーに依頼されて建築したものである。
エリュシオンとは、音楽や絵画、彫刻、建築、そして最新技術の知識や発明など、様々な分野で才能を発揮して成果を出している集団のことだ。そのエリュシオンは、私の実家であるアシュフォード伯爵家が抱える集団でもあった。
今回の新たな花園のプロジェクト。エリュシオンと関わりのある私にとっても大変意義深いものだった。無事にプロジェクトが成功してくれて本当に嬉しい。
会場には、色とりどりの美しい花々が飾られ、美しいメロディーが流れている。
パーティーに参加をする貴族たちは華やかな衣装に身を包み、シャンパンを片手に歓談していた。
私の知り合いであるエリュシオンのメンバーが、花園の設計図を前でパーティーの参加者たちに説明していた。その光景は素晴らしくて、誇らしかった。
そのとき、婚約相手であるペトルス王子が近づいてきた。彼の表情は硬く、怒りに震えているようだった。その怒りは、私に向けられていることを感じる。何か粗相をしてしまったのかと不安になった。
せっかく、エリュシオンの晴れの舞台なのに。そう思っていたら、彼の口から予想していなかった話が飛び出してきた。
「エレナ、君に話しておくことがある!」
ペトルス様が低い声で言った。嫌な予感がする。だけど、聞かないわけにはいかない。
「ペトルス様、話しておくこととは何でしょうか?」
周りにはパーティーの参加者たちが居る。こちらを見ている人も何人か居る。私は周囲に配慮しながら声を小さくして、ペトルス様も刺激しないように気をつけながら問いかけた。
だけどペトルス様は、怒りに任せて言った。
「君との婚約を破棄する!」
「え?」
唐突な宣言に、意味がわからなくなる。婚約を破棄? どういうことでしょう?
「君が浮気したという証拠を掴んでいるぞ!」
「浮気? 何のことでしょうか?」
「とぼけるな! お前は、エリュシオンの男と怪しい関係にあるそうじゃないか!」
「……えぇ?」
ペトルス様の目は怒りに燃えて、私を責め立てる。状況が飲み込めず、言葉を失っていた。本当に思い当たることがない。私がエリュシオンの誰かと浮気? あり得ないこと。
会場が静まり返っていた。周りの人たちが私とペトルス様のやり取りを見ている。新たに完成した花園について説明していたエリュシオンのメンバーである彼も止まって、心配そうに私のことを見ている。彼の邪魔をしてしまって、本当に申し訳ない。
「私は、浮気などしておりません」
「だが、こちらには証拠がある! お前がエリュシオンの男と何回も隠れて会っていたという証言も複数あるんだ」
「誤解です。彼らとは普通にお話をしたりしただけで、何もしていません」
「言い訳するな! お前が何を言っても事実が全てなんだ。お前は浮気をした、卑しい女なんだ!」
誤解を解こうと話をするけれど、ペトルス様の耳にはもう何も入らなかった。彼の心は、石のように頑なになっていた。そして、私が浮気をしたという事実を信じている。この誤解を解くことは非常に困難でしょう。
「没落寸前だったアシュフォード伯爵家の娘と婚約なんかしたのは、エリュシオンという素晴らしい彼らを見出し、出資し、育て上げたからだ。それなのに、その家の娘が婚約相手に隠れて浮気していたなんて。愚かな行為で全てを台無しにしたんだ」
「ですから、それは誤解だと申しております。私はエリュシオンの方々とは、純粋に芸術について語り合っていただけなのです。きっと見間違えたのでしょう」
私は必死に説明しようとしたが、ペトルス様は聞く耳を持たなかった。
「だから俺は、お前との婚約を破棄する!」
「……」
もう一度、彼はそう叫ぶと、その場を去っていった。その宣告は、多くの貴族たちに聞かれてしまった。ペトルス様が婚約破棄を宣告した。これを覆すことは無理でしょう。
私とペトルス様の婚約は、この場で破棄することが確定してしまった。
せっかくの大切な日、大切な場所でこんな事態が起きてしまうなんて。私は信じられなかった。どうして、こんな事になってしまったのかしら。
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