第42話 暇つぶし

コルネットの水魔法で僕は冷静になった。

どうやら怒りで我を忘れていたらしい。



「申し訳なかった…」


青い髪の男は語り始めた。

どうやら茶髪の男に脅されてコルネットを攫ったらしい。

茶髪の男はドア近くで何故か倒れていたので縄で縛っておいた。

一応、回復魔法をかけておいたから命に別状はないだろう。


「彼女は、俺があげたお菓子を食べたら眠り込んでしまって…起きなかったんだ」


「薬物が入っていたのか?」


「いや…毒などない、ただ酒が入っているものだが」


『あ…お酒かぁ。だから寝ちゃったんだ』


お酒はコルネットの体質に合わないらしい。

昏睡状態になってしまうとか。


「もう…心配させんなよ」


『起きたら火の海なんだもん。びっくりしたよ~。ソウタって怒ると魔法が暴走しちゃうんだね…怒らせないようにしよ』


そういえば目の前の男は青い髪だけど…。


「まさか、ナダルって名前じゃないだろうな?」


「え?何で俺の名前を知っている?」


どうやらキャシーさんが言っていた息子のようだった。


「君の母親が、しばらく顔を見ていないと心配していたよ」




ガヤガヤ・・・。

外が騒がしくなった。


「何だ?」


「そりゃ、火事になれば町中が騒ぐだろう」


鎮火したけど、木の壁は黒焦げで凄い事になっている。

室内は水浸しだし。


「「誰か居るんですか?うわっ!」」


町の自衛団が数人駆け付けていた。

ドア近くにいる男を踏んづけてしまったようだ。

僕が事情を話すと、ナダルと転がっていた男は自衛団に連れて行かれた。

ナダルはやらされたとはいえ、誘拐をしたのだから。

   

転がっていた男はダグラスと言って、複数の冒険者に金を貸して高金利で取り立てていたらしい。

ナダルも被害者だったようだ。

とはいえ、軽率にお金を借りるのはお勧めできないけど。


後日、ナダルは脅されていたため釈放されたが、ダグラスは何らかの刑が下されるらしい。




   *




屋敷に戻った。

体がびしょ濡れだったので、お風呂に入って落ち着いてから…僕は彼女に尋ねる。


「それでコルネット、これは一体どういうことかな?」


『え?何のこと?』


「わざわざ誘拐されて、結局何がしたかったのかな?って」


『えっと…青い髪の人が居たから、ソウタに教えようと思ってて…』


「だったら連れてくるだけで良かっただろ?転移出来るんだし」


『…最近退屈だったから、ソウタのカッコいいところ見れるかなって思っちゃって…そしたらお菓子食べたら寝ちゃって…』


相変わらず食いしん坊だ。

少しは警戒してほしいな。


「居なくなって心配したんだからな」

『ごめんなさい』


僕はコルネットの金色の髪を軽く叩いた。

ホント彼女といると退屈しないよ。

心臓が幾つあっても足りないくらいだ。


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