第39話 プロポーズ
「この国って何歳になったら結婚できるの?」
「はい?」
わたくしはアルトに頼まれてソウタに仕事を教えていた。
だが、突然全く関係のない質問を受けていた。
執務室で、ソウタと書類を見ていた時の事だ。
「確か16歳だったと思いますが…急にどうしたのですか?」
「そうなんだ。エミリアさん変なこと聞いてごめん」
ソウタは確かもうすぐ16歳になるって言ってたっけ。
結婚したい相手でも居るのだろうか。
まさか女神とか?
まさかね。
女神だよ?
「誰か、結婚したいお相手がいらっしゃるのですか?」
「うん。この屋敷に一緒に居るコルネットなんだけど…」
まさかの相手だった。
だって女神と結婚しても、途中で寿命が尽きて死に別れだよ?
わたくしが目を見開いていると。
「驚かせてごめんなさい。でも僕も長寿になってしまったから良いかなって思って」
「長寿って…ソウタって人間ですよね?」
「一応人間なのかな?訳あって1000年?寿命があるらしいけど…」
「え?本当ですか?じゃあ、わたくしも結婚相手として立候補してもいい?」
思わずソウタの顔面スレスレまで迫って、わたくしは彼の手を握った。
「な、なんで…」
ソウタは後ずさっている。
「だって、天使族の寿命に釣り合う方なんてそうそう居ないんですもの。その点ソウタさんだったら申し分ないかなって思って」
バタン!
突然ドアが開かれた。
見ると、慌てた様子の
『駄目―——!ソウタは絶対渡さないんだから!!』
見えないはずなのだが、様子を察知していたのだろうか。
「あら、今はお仕事中ですよ?」
『それは…申し訳ないです…じゃなくてエミリアさんソウタに迫ってましたよね?』
「何の事かしら。お仕事のお話はしていましたけども」
女神が来た時に、彼の手は離したので見られてはいないはずだ。
「コルネット、後で話があるから取り合えず戻っていてもらえる?」
『え?ソウタ…はい。分かりました…』
しょんぼりとして帰っていく女神。
後で叱られるのかな?
わたくしはもう少し、彼にアプローチしてみようかしら。
何せ今まで出来た恋人は、母の前に行くと何故か不思議と続かないのだ。
その点ソウタなら大丈夫。
アルトとも仲が良いみたいだし、男爵で申し分ないわ。
*
「ソウタ…先ほどはごめんなさい。居てもたっても居られなくなってしまって…」
自室で僕はコルネットと向かい合って座っていた。
「どうして?」
「えっと、ずっとあの女性と一緒に居るでしょう?仕事だって解ってはいるけど、不安で堪らなくなってしまって…」
「もしかして、それでえっちしよって…」
コルネットは頷いた。
「そうだったんだ…ごめんね。気が付かなくて…それで良かったら僕と結婚してほしいかな、なんて…ステータスを見たら、あと一か月で16歳になるみたいで」
全然しまらないプロポーズになってしまった。
コルネットはキョトンとした顔をしている。
『け、結婚?してくれるの?』
「どうかな?」
『よろしくおねがいします』
コルネットは僕をぎゅっと抱きしめた。
僕も彼女を優しく包み込む。
「良かった」
僕の胸に、ほんわかと温かい気持ちがいっぱいに広がっていった。
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