良い告白へ

おくとりょう

いつかどこかで

 いらっしゃいませ、はじめまして。ようこそ、私の取調室へ。Take it easy♪容疑者さん。

 お疲れみたいね、昨日は眠れた?ひょっとしたら、髪伸びた?

 あらあら、そんな顔をしないで。ニッコリ笑って、ダンスして。踊る気分でないのなら、さては南京玉すだれ。

 あらら、知らない?残念、無念、石の上こそ三年峠。転がり落ちれば、その肌に残る熱は観覧車。

 楽しいことがないならば、来年のことでも話しましょうよ。まだ早い?もう遅い?だけど、今年はすぐ暮れますし、あとで良いもの差しあげましょう。だから、話して。マメな私が笑って門に来ますから。


 それはさておき。突然ですが。あとで重ねて聞きますが。これはあなたの罪で間違いない?黙ってないで。詰まってないで。包み隠さず、さぁ、言って?

 金の罪か、銀の罪。あなたが犯したのはどちらです?

 正直者には両方あげます。豪華に輝く金の罪?静かに煌めく銀の罪?今ならおまけのカツ丼をタマゴで包み、木の葉丼。



 『身に覚えがない』?本当に?嘘なら罪はあげません。ピカピカの罪もカツ丼も。こんなに綺麗に光っていても。どんなに美味しいものだとしても。


 まぁ。知らないのなら、信じましょう。カツ丼はすでに頼んでます。美味しいお肉の高いヤツ。


 とはいえ、ここでは誰も『覚えてない』。たくさんの人が言うけれど、挨拶みたいなものかしら。それなら、私はどう返すべき?


『それなら、身体に聞いたろか?ぐへへへへ』

 やっぱりこれが定番かしら。嘘か本当かすぐわかるもの。

『そうか、そうか。身体は正直者やのう』

 だけど、だけど。身体も忘れん坊だったなら、私は一体どうしましょ。

 だって、身体も忘れてしまっているなら、『身に覚えがなく』とも当然ですもの。なので、私はお手上げです。両手をあげて万々歳。三唱するほど元気はなくて、


 ここで、取り出す目撃者!あなたを見ていた、ONE!TWO!THREE!

 壁のお耳に障子のお目々、掃除のときは大変ですね。世界は狭くて広いけれども。埃はどこにも溜まるから。あなたがすべて忘れていても、世界はあなたを包んでいます。


 それはともかく。よかったですね、忘れん坊さん。これで綺麗に輝く罪も、あなたが本当に犯した罪も、タマゴで包んだ高級カツも。みんなみんなあなたのものです。


 重ねて重ねて、おめでとさん♪さん♪さぁ、召し上がれ、頬張って。美味しく輝く金の罪。ずっと忘れる銀の罪。黙っていればわからない。カツの味すらわからない。


 だから、あなたはそこにいて。

 積みあげた香りを知らぬまま。あたたかな湯気は見えぬまま。

 きっとすぐに忘れちゃうから。どうせいつも覚えてないから。頬張るそれに骨がついてたことなんて。


 それでも。それでも、いつか覚えているなら。私はあなたの側で笑いましょう。

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