のほほん短歌作り
津麦縞居
1
※以下はブログに載せたものを再編集しています。
〈1〉秋っぽい短歌を詠む
初案は次の通りだった。
秋空に雲が流れる帆の先に
向かう茜の美しさ
なんだかしっくりこなかった。
〈2〉秋っぽい短歌の過程
秋の空を雲が流れて行くのを見ていると、
『トンボがスイーッと飛んでいくのが綺麗だな~』
と思った。
しかし、なにかがパッとしない。
なんだろうこの文字列は。
そもそも、アキアカネを「綺麗」とか「美しい」とか思わない人もいるのではないだろうか。
トンボといえば、割と簡単に捕まえられる(?)ので、幼い頃、両手にいっぱい捕まえた人もいるだろう。私もその一人だ。
ただ、皆でトンボを捕まえて遊んでいると、時折、痛がる声が聞こえる。当然トンボも生きているので、邪悪な人間たちに反撃するのである。
トンボが怖い、と言っている人は大抵、トンボに噛まれたことがあるのかもしれない。そんな人たちにとって、トンボは美しいものではない。「凶刃の顎」の代名詞に他ならないだろう。我らは命として対等なのだな、と思う(なんの話だ)。
締めの言葉はさておき。
突如、
「体言止めを使えばカッコいい感じになるじゃん!」 という超偏見が発動した。
これにより、 「秋空に」が「秋の空」に変更された。
したがって、「向かう茜」が繋がらなくなる……気がする。
ここで違和感が生まれるべきは、何かが向かう場合は秋空へではないか、とも思った
が。
とりあえず表現方法一つで、私のくだらない歌でも少しはスッキリまとまっていくのではないだろうか。
希望の兆しが見えた(多分)。
続いて雲の描写だ。
今回は雲が発生する高度以下の情景を描きたい。よって、「空に雲が浮いてて~」という細かさはなくて良いので、 「秋! 雲! 風! アキアカネ!」 みたいな感じで言葉を置いても、穏やかな気候は伝わるだろう。それなら、適当な配置を作って……。
秋の空 雲の~~
アカネ~~ 風が~~
「スイーッと空を泳ぐようなアキアカネって超綺麗!」 と思ったのを「泳ぐ茜」に変換すると、空が水に例えられていることになる。
私が想像した雲は小さい。それならば小舟。でも流れは穏やかだから帆が必要。しかし空は広大だ。空を悠々自適に泳ぐトンボは、(遠近法で)雲の舟より速く見える。そこへ、強めの風が吹いたらどうだろう。高い飛行技術を持ってしても強風にはバランスを崩してしまう。
……と想像を続けてもキリがないので、思い切ってここで止めることにする。
ここまでをまとめると、
秋の空雲の帆先を追い越して
泳ぐ茜を追う風かな
字余りだと、(言葉選びが卓越していない限り)綺麗に聞こえないので、
秋の空雲の帆先を追い越して
泳ぐ茜に吹く強風
これでもしっくり来ないので、どうせ思ったことを並べるだけなら言いきっちゃえ、と。
ならば、
~~泳ぐ茜に風は吹く
が良いのでは、と思った。
〈3〉完成形
秋の空 雲の帆の先追い越して泳ぐ茜を風が吹く
のほほん短歌作り 津麦縞居 @38ruhuru_ka
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