転生したらヤバい秘密結社の生体AIでした。奴隷扱いされるのが嫌で、同期と一緒に逃亡した

浜彦

第一章 閉ざされし世界

第1話 プロローグ 黒胎

目が覚めると、目の前は真っ暗だった。


え、どういうこと?


手足を動かそうとするが、全く感覚がない。


目、耳、鼻、舌、体。五感が全く正常に反応しない。例えるなら、まるで自分が「混沌」という名の泥の中に浸かっているかのようだ。上下左右もわからず、自分が生きているのか死んでいるのかもわからない。呼吸も感じられず、緊張で心臓が高鳴ることもない。


ああ、これはやばい。悪寒が意識をよぎる。皮膚も汗腺もないはずだが、普通の状況なら全身に冷や汗をかいていただろう。


まさか。


この状況、以前に聞いたことがある。これはいわゆる閉じ込め症候群か、それとも潜水鐘と蝶みたいな状況か。確か、患者が自身の体験を本にしていた。読んだことはないけど、名著だったはず。


あれ。


そういえば、昔のことを思い出してみると、俺って誰だっけ?


だめだ、思い出せない。


名前、経歴、生まれた街。両親や友人の顔。昨日食べた夕食。すべてが霧のようにぼんやりしている。ただ、かすかな記憶が、俺がかつて男性で、普通のサラリーマンだったかもしれないと告げている。趣味はゲームとライトノベル。


でも、どんなに思い返しても、今の状況には結びつかない。


それじゃあ、事故が原因なのか?この状況は事故によって引き起こされたものなのか?


くそ、やっぱり思い出せない。


何かに遭遇した記憶がない。車に轢かれたとか?それとも脳卒中か?


焦りが募り、神経を総動員して、俺はこの暗闇の中で必死に抗った。何の反応もないが、それでも俺はもがき続けた。


そしてついに。


暗闇の中で、俺は「光」を「感知」した。


いや、「光」という表現は少し漠然としすぎているかもしれない。


それは文字のようだった。


ルーン文字のような、そんな符号。


青白く、温かく、「触れる」と電流が走るようなその文字たちが、俺の感覚範囲内に漂ってきた。俺は必死にそれらを掴もうとしたが、「力を入れる」とそれらはふっと遠ざかった。


違う、そうじゃない。それらを引き寄せなければならない。


さらにしばらくの間格闘を続けた後、俺はようやく今の「体」を操作できるようになった。


手足はないが、意識を使って動かすと、水を波立たせるように、それらの文字を自分の方に流れ込ませることができた。


そして、俺は成功した。


漂っていたものが俺の意識の中に「吸い込まれた」。俺はようやくその形を明確に感じることができた。


自分がまだ外界に影響を与えられることに安堵し、意識が牢獄に閉じ込められたわけではないと感じた矢先、電流のような感覚が俺の意識を駆け巡った。


え、どういうこと。


突然、喜びの感情が俺に押し寄せてきた。まるで長い間痛んでいたツボが押され、じんわりとした快感が次々と湧き上がってくるような感覚だった。


そうだ。


これが「喜び」であり「満足感」だ。俺の恐怖を塗りつぶすかのように、そのような感情の波が俺を包み込んだ。


そして、ふっと、その波が突然止まった。


失った感覚に浸りながら、俺は数秒間呆然としていた。


ああ。


突然、俺は悟った。まるで閃いたかのように。まるで天の声を聞いたかのように。俺は自分の状況について一つの仮説を立てた。


おそらく俺は、フラスコの中に浸かっている大脳か何かで、外部の誰かが、あの青白い光符号を吸収する行為に対して「報酬」を与えたのだろう。

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