1ー4 鑑定と暗雲

いや、ほんとに何これ?


 ちっちゃい袋にどうやってこんなたくさん突っ込んでたんだ?

 何?無色透明の丸い玉って。


 もうわけわからん。



 あ、そうだ鑑定の魔術具あったんだ。


「っていうか、魔術具ってどうやって使うんだ?」


 スキル判定のやつは手を置いたら起動してたけどな。



「鑑定?」


 つぶやきと共に身体の中で何かが蠢く気配がした。

 おそらくこれが魔力なんだろう。

 ……もしかして魔力の感覚掴むために魔術具配ったのかな?

 もしそうならすごいけど。


 視界が変化する。

 窓を見ると自分の姿が映っており緑の魔法陣らしきものが目にかかっていた。



「おお〜」


 前の世界ではあり得ない光景に歓喜の声を上げる。


「え〜と?これで見ればいいのか?」


 取り出したブツに目を向けると横に説明が書かれていた。




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 エルリア王国大銀貨


 エルリア王国内でのみ使える硬貨

 日本円にして一枚大体10万円


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「1、2、3、4、5、6、…15枚か。」


 羽振いいなぁ。

 150万でしょ?

 この上で最低限の衣食住は国持ちでしょ?

 めっちゃ高待遇じゃん。

 遊んで暮らせるじゃん。



 なんてことは流石に考えてない。

 どうせこれで武器と防具でも買えってことだろう。

 この金で遊ばせてくれる、なんてことはないだろう。




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 防御魔法陣付き衣服 品質C


 防御魔法陣が描かれている服

 普通の衣服よりは頑丈だが安心はできない

 なぜなら古くなって魔法陣が弱くなってるから

 訓練用に使うと良い

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 訓練用ねぇ〜。

 まあ陣があるだけマシか。




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 魔術師の正装 品質A


 魔術師の正装

 今はただのローブだが、魔法陣を刻める特殊な素材でできている

 陣がないのにこの品質、陣があったら…?

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 とどのつまり、この服は強いってことね。

 まあ、今はスキル弱いから陣を刻むのはまだ先になると思うからしばらくはしまっとこうかな。


 ちなみにランクは最低がE、最高がOverらしい。

 下から

 E

 D

 C

 B

 A

 AA

 AAA

 S

 SS

 SSS

 EX

 Over

 となっている(王女様情報)。


 EXとOverは王女様も見たことないらしくってOverは大陸に一つあるかどうかってくらいでEXは国に数個あるかどうかってくらいに珍しいようだ。

 つまり、お目にかかることはないだろうってこと。




 気を取り直して。



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 イルテンクロム 品質 EX


 意思のある石(笑)

 持ち主が完全に魔力で染めることで主人を定め、主人の意思を汲んで自由に形を変える金属

 密度、質量は共に不明

 硬度は上位に入る

 破壊はされるが消滅はしない

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 フラグ回収。



 ツッコミどころが多すぎる。

 ……とりあえずとんでもないのはわかった。


「でもなぁ、あの王族がこんな国宝級を人柄もわからん勇者にホイホイ渡すもんかな。王族の印象は悪くないけど……」


 印象操作もあり得なくはないんだけど、可能性は低いと思う。

 となると、ランダムでアイテムを与えられてて王族も中身を知らないのか?

 だったらこの皮袋、本人にしか開けられないとかいう便利防犯機能付いてたりすんのかな。

 でも多分EX入ってたのって僕だけだよね。


 ……うん、黙っとこ。魔術師の正装も黙ってた方がいいかもな。


 ちなみにもう一つの服と短剣はただの服と短剣だった。

 やっと普通がきてちょっと安心した。




 最後に魔術師のローブ。


 黒地に青と金の模様が描かれている。フードはなく、袖は想像以上にヒラヒラしていて、えりは大きく、ん〜中学校の男子制服の襟みたいな感じ?

 肩のやや下あたりには群青色で半透明の石…宝石かな?に金色の装飾が施された留め具があった。



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 魔術師のローブ  品質 AAA


 対物理防御魔法陣が組み込まれているローブ。

 物理攻撃のダメージを約10%カットする

 装飾は魔力経路の役割も果たしていて、魔力の循環効率がわずかに上昇する。

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 もはや何もいうまい。

 さっきのイル…なんとかクロムが凄すぎて大して驚かない。


 これも封印かな?





 さて僕も疲れて来たからそろそろ休もうか。

 あ、僕と相部屋なのは蓮斗だよ。


 蓮斗ーー本名は古宮蓮斗ーーは今、他の男子のところでスキルとスターターセットの見せ合いに行っている。

 僕も誘われたんだけどやっぱりこーゆうのって1人の方が落ち着くよね。



 おっと危ない。

 陰キャのようなことを口走ってしまった。


 …別に僕に友達が少ないわけではない。断じてない。


「それにしても今日は疲れたな」


 疲労が溜まっていたようでベッドに潜り込むとすぐに睡魔が襲って来た。

 睡魔に抗わず僕は静かに眠りに落ちた。










 王都の郊外にある森の中、城の出来事をずっと『彼』は爛々と輝く目を一度閉じ、再びゆっくりと瞼を上げる。

 そこには不敵な笑みが浮かんでいた。

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