星使いの進化の勇者 〜世界最強は平和を望む〜

星宮燦

第零章 声

0ー1 暗闇の囁き





 へ〜




誰かの声が木霊す。


とある洞窟の最深部に広がる地底湖、その中心にある純白の神殿。

壁は螺鈿らでん細工のようにキラキラとしていて、そこに魔力が迸ることで淡い光の波動となり、周囲に畏怖いふの念を放っていた。

観音開きの扉は開いており、荘厳そうごんな神殿の最奥には細かな彫刻が施された無人の玉座ぎょくざがある。







なんとも形容し難い声。

形なき声といえば良いのだろうか。

脳に直接話しかける念話ともまた違っていた。


そこには『声』しか存在しない。


存在も、形も、色も、匂いも。

何一つ存在せず、ただ声がある。




まるで野原の小鳥の鳴き声のような軽やかなリズムで『声』は歌うように言葉を紡ぐ。




私はラツィエル

形なき声

名前なき声

全てをる声


斯くて勇者は召喚された

星に選ばれし28人

彼らの行方ゆくえは神のみぞ知る


誰がここに辿り着くのか

いつか闇にほうむられし

わたしをみつけるのは

誰なのか


今のわたしはただ声ひとつ

それでも今も夢をみる

いつかここに来た人が

わたしを救ってくれる夢




単調な、それでもどこか暖かで穏やかな優しいリズム。

未来に想いを馳せる少女の愛しくも、はかない夢の歌。


『声』が日の目を見る日は遠くないところまで迫って来ていた。


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