第43社 お墓は絶対に壊しちゃいけません!
惨級祟魔を祓った私たちの前に現れたのは、1人の少女だった。
「え……女の子……?」
目の前にいる少女を見て呆然していると、少女がふらっと川へ落ちそうになったので、慌てて腕を掴んで引き寄せて、みんなの方へと向かう。
「どういうことや?」
「さぁな」
熾蓮たちの元へ戻ると、ひとまず少女を近くの岩場に寝かせた。
んー、この子の意識が戻るまでは様子見かな。にしても、細いな……。後、着物を纏ってるけど、ところどころ他の布で繋いである。時代的には江戸生まれの子なのかな?
「この子、もしかして惨級祟魔に憑りつかれてたんじゃない?」
「多分、そうだと思います。それに、この子人間ではなく気配からして祟魔ですね」
「祟魔が祟魔に憑りつくなんてことあるんですか?」
薫がそう織部先生に質問する。
確かにそうだ。人間に悪霊が憑りつくなんて話は昔からよく聞くけど、祟魔が祟魔に憑りつくなんて聞いたことがない。
「たまにあるでそういうの。人間と同じで、祟魔にも良いやつと悪いやつがおるし。んで、見たところ、この子は拙とちゃうか? 多分、知らんうちに悪い祟魔に憑りつかれてたんかもしれんな」
「……なるほど。取り敢えず、起きるまで待つしかねぇな」
「せやな。祈李、結界解いてええで。秋葉も同じくや」
「分かりました」
「了解だ」
私は先生にそう言われると、祓式を解く。祈李も結界を解き終わったようで、この子が目覚めるまで、待つことになった。
そして、30分後。
『……あれ、ここは……?』
「あ、起きたみたい。ども~」
「おはようさん」
『……えーっと?』
私と熾蓮が声をかけると、少女は不思議そうな目でこちらを見てきた。私たちがそれぞれ自己紹介をすると、少女は話し始める。
『わたしは
「ふむふむ。ところで、小春はなんでここに?」
『それがわたしにも分からなくて……。卯月に入ったころ。昼間に法輪寺から渡月橋まで歩いていたのは覚えてるんですが……それ以降の記憶が一切なくて……』
卯月――今でいう4月の初めごろか。ってなると、行方不明事件が起こった時期とタイミングが重なるな……。にしても、なんでそんなところを歩いてたんだろ?
疑問に思っていることを小春に訊いてみる。すると、神妙な面持ちで答え始めた。
『実は生前、13歳を迎える前に流行り病で亡くなったんです』
「……13歳といえば十三参りを思い浮かべるな」
熾蓮は小春の話を聞くと、そう呟いた。すると、小春がその言葉に反応する。
『あ、はい。当時、十三参りを迎えるということは成人を意味していました。わたしは十三参りで晴れ着を着るのが夢だったんです。そのために髪も長く伸ばしてきたんですが、流行り病にかかってしまってそのまま……』
うーん。当時の子供たちにとって、成人することは大きな意味を持ってたらしいからね。多分、小春の今の容姿を見るに家が貧しかったんだろうな。それで、まともに食事もできないまま、死んじゃったってわけか。
小春の過去を察しながら話を聞く。小春は続けてこう言った。
『それから幽霊になったわたしは、十三参りの時期になると法輪寺に行って、その様子を見ていました。最初は見るだけだったんですけど、だんだん羨ましくなっちゃって、髪飾りを触ったりしてました。ですが、弥生月の末ぐらいに、わたしを弔って建てられたお墓が観光客の方たちに謝って壊されてしまって。建てられたのが、江戸時代なのでかなり劣化していたのもあると思うんですけど……。それで数日経ったある日、渡月橋を歩いていたら意識が急に途絶えてしまったんです』
んー、なるほど。ってことは、お墓が壊されてから異変が起こったんだ。この子が起きる前に、先生がこの嵐山は元々邪気や祟魔が多いって言ってたから、多分お墓が壊された際、小春の身体にそういったものが入っちゃって凶暴化しちゃったのかな? それで、渡月橋にいた人たちを攫い始めた……。
私は小春が惨級祟魔になるまでの過程を頭の中で思い浮かべる。
「なるほど。事情は分かったよ。答えてくれてありがとうね」
『いえ、こちらこそ助けてくれてありがとうございます』
お礼を言うと、小春も頭を下げながらお礼を述べた。
それで、問題はここからになるわけだけど……。この子をどうやって成仏すればいいんだろ。
「んー、どうします?」
「そうやな……」
「んー、それならさ、小春に十三参りを経験させてあげたらいいんじゃない?」
「おっ、ナイス薫! ってな訳で、どうかな?」
小春に問いかけると、彼女は考える素振りを見せてからこう答えた。
『皆さんがそれでいいなら体験してみたいです』
「なら決まりですね。でも、体験すると言ってもどうすればいいんでしょう……」
あー、そっか。色々と準備とか必要だもんね。んー、どうしよ。今の時間は流石に法輪寺空いてないしな……。
袖に忍ばせておいた時計を取り出すと、今の時刻を確認する。時計の針は深夜2時を指していた。
「んー、そうだね。……あ、そうだ」
「おっ、秋葉なんか思いついたん?」
「うん。でも、まだ許可取ってるわけじゃないから、決まったらみんなに知らせるよ。取り敢えず、朝になったら分かると思うし」
私がそう言うと、話を聞いていた先生が口を開いた。
「なら、一旦神社の方に戻ろか」
「ですね」
「それじゃあ、朝の7時半にここでも良い?」
『はい、わたしは大丈夫ですよ』
「よし、そしたら一旦帰りますか~」
私たちは小春に別れを告げると、一旦神社の方へ戻ることに。
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