ホロらいふ

@h1229ryo158

最強のマリン船長

海賊と騎士

 ざっぶぅぅーん


 ざっぶぅぅ〜ん


 岸辺に、船があった。


 大きめの船があった。


 船首をもたげ、天高く聳えるマストは、其の背景の星空をこれでもかと言う程に映し出している。


 びゅごうびゅごう


 ただ風の強い何て事ない夜更けに、赤を基調とした衣装や髪の色にオレンジとのオッドアイの船長、宝鍾マリンは、最愛の人物、これまた緑を基調とし、緑髪の小柄な少女みたいな女性、潤羽るしあとイチャついて居た。

 

 立ち入り禁止区域の中でイチャついてる二人を見ると、白を中心とした装備の銀髪の騎士・白銀ノエルは、注意をすべく声を掛けた––––

 

 月明かりも無い宵闇の春。海岸沿いに停められた一つの大きな船から離れた所にほんの少しの灯りが見える。

 

 ザッ ザクッ

 

 白い砂浜を棍棒メイスを腰から下げて歩いているのは、この海岸近くの街、城下町の隣町とでも言うべき現代風のインテリアが窓越しに見える店もチラホラある街中に、異質なローファンタジックな宿屋や飲み屋を何軒も抱える現代風の騎士団、その団長たる白銀ノエルその人であった。

 

 船、其の灯りの辺りからは二人の女性の声が聞こえる。

 

 マリン船長「ねぇ〜。るしあ〜。ちょっと位良いじゃーん。」

 

 片方は少し焦りがみえる昭和風の声に、イチャつく際に変わる高音が特徴だ。

 

 麗羽るしあ「駄目だよマリン〜。もうちょっと離れて。」

 

 もう片方は、元々の声質が天・使・の・様・に・、高く、それでいて落ち着いている。

 

 ノエルは其の二人の声を聞きながら、近づいて行った。

 

 

 

 ノエルは挨拶代わりにと注意勧告した。

 

 白銀ノエル「こら。こんな所で何やってるの。」

「ここは立ち入り禁止だよ。直ぐに出て行って。」

 

 マリン船長「なんだとコラ!ウチの船に許可も無しに勝手に乗って来た挙句、挨拶も無くいきなり何様だ。」

「こちとら海賊だぞ。舐めんな。」

 

 白銀ノエル「初対面で暴れられるのは嫌だけど、どうにもね。こっちの仕事の邪魔しないんなら、考えてやってもいいぞ。」

「それとも、やろうってのかい。」

「それならこちらにも君達を連行する責務があるんでね。」

 

 シュリン

 

 女海賊・マリンが腰に挿してあったチャッカルを抜く。

 

 ジャキン

 

 それを見て、白銀騎士団の団長も同じく腰にぶら下げてあった棍棒メイスを取り出した。

 

 両者、得物を正中に構えては、紅が基調とされる女海賊・マリンが、先に仕掛けた。

 

 マリン「えいやぁっ」

 

 先ずは上段。右上から左下に掛けての袈裟斬りに、

「とぅっ」

 

 大きく水平に斬り結ぶ。

「ほいっ」

 

 三太刀目に、右下から小手を狙う動き。

 

 団長はバックステップで回避しながら、三太刀目に狙いを合わせて上から棍棒メイスで叩く。

 

 ギャリイィン

 

 マリンの太刀筋が団長の先端柔く剛に強い棍棒メイスの柄を捉えた。

 

 大きく接近する両者の顔と肉体。

 

 若干マリンが押され気味になっている。

 

 するとマリンが身を翻して、大きく水平に回し胴を取る。

「ちぇすとぉっ」

 

 団長は其れを棍棒メイスでガードすると、マリンの大きく出た手と足に沿いながら、徐々にマリンに近付いて来る。

 

 団長の棍棒がマリンの柄に触れた。マリンは右手で団長の身体を使って力を抜くと、揺さぶられ離れた団長に渾身の力で低く胴を放つ。防具で弾かれたが、団長に五太刀目が入った。

 

 新月の夜にシルエットが二つ。

 

 すると見回りに来た何処にでもいるが時偶に非凡な少女・ときのそらが遠くから、

「ああっ」

 

 と声を上げては、二人の間にふわりと飛んで、仲裁に入った。

 

「駄目だよ。危ないことしちゃ!!」

 

 しかし二人とも矛を収める気はない。

 

 二人は睨み合いながら、年上と思しきときのそらの忠告を聞いていた。

 

 しかし、業を煮やしたのか、マリンは、これ又、腰に挿してあったピストルを取り出した。

 

 団長は咄嗟に壁際迄、距離を取り、弾が当たらない様にした。


 マリンは撃つ。血の一滴まで絞って、とある理由より弾の無いピストルを連続で撃ち放つ。

 

 すると、ときのそらは意を決した様に時空を歪ませ其処から立ち引くと、数刻の後、白銀騎士団長の愛人、金髪で褐色のエルフ・不知火フレアを連れて来て、事態の打開を図ってしまった。

 

 連れて来られたフレアは早速、船長に向かって矢を引き絞っては放った。マリンは其れを上手く躱すと、団長に向かってピストルを撃ち放った。団長は向かって銃口に棍棒を夢中に振り回すと、弾を弾いて行く。

 

 するとフレアは二本、三本と矢を番え、マリンに向けて放った。

 

 流石に其れを躱し切れず、マリンは肩口に矢を受けてしまった。

 

 ノエルは隙を見て近付くと、大きくスイングをしてマリンをメイスで吹っ飛ばした。

 

 最年長のときのそらがそれ以上の追撃はしない様に忠告をして、事態は収束した。

 

 るしあ「マリン〜」

 

 るしあが近付く。

 

 マリンが肩から血を流しているのを知ると、咄嗟に、船室から包帯と化膿止めを持って来てマリンの肩口をグルグル巻きにした。

 

 マリンとるしあは船室に入り込むと、一連の音で驚いて出て来た一味に声を掛け、白と褐色、青色の青女達を囲う様に指示を出した。

 一味「アイアイ!包囲っすね。任してください。」

 

 一味に囲われてしまったノエルとフレアは背中越しに距離を取りながら、中央のときのそらを護っていた。

 

 一味「へっへっへ。逃げられると思うなよ。痛くされたくなかったら、大人しくしておきな。」

 

 しかし、

 

 ノエル「今だっ!!!」

「とおぅりゃぁぁぁーー!!!」

 

 団長が、屈強そうな一味の副棟梁に向けて、棍棒メイスを思いっきり振るった。

 

 ガンッ ドカッ バキッ

 

 三連撃。腹と腿と頭に鉄製の打撃を受けて倒れる屈強な船夫。

 

 ノ「一旦退こう。フレア。」

 

 その後、一旦、引き返したノエルは同じく大砲を持って行く様に騎士団員に指示を出して、戦争をおっぱじめた。


 ドン ドン ドン

 

 花火だった。一撃一撃を丁寧にマリンの船に横付けして来る。あっとう言う間に起爆した花火が、其の雷の代わりに窒素固定を行う大きな針達が、無造作に火花を散らしながら船に襲い掛かる。

 

 マリン「おいお前ら!あそこの大砲を撃っている連中を皆殺しにして来い!」


 余りにも無造作に言い放ったので、一味の中には隠れたものも居た。だが、残った仲間で白銀騎士団に向けて、突撃する。


 乱闘騒ぎだ。


 噂を駆け付けて、大空警察までもが出動したと言うそれは、今まさに剣を傾けて、銃と共に重装備の相手に立ち向かっている一味とそれをばったばったと薙ぎ倒す白銀の騎士団の優位だった。


 明らかに劣勢。しかも船は既に相当焼けている。幾ら頑丈なガラス質を溶け込ませた木材であろうとも、いつかは穴が空きそうな位だ。


 マリン「テメェら!もう良い。後はこっちで、何とかやっておくから、船を押して、大砲を用意しろ。」


 マリンはそう言うと、一味を組み伏せている白銀の騎士達に銃口を向け、弾のない一撃一撃が大砲かと言わんばかりの銃撃を与えて行く。


 一人一人吹っ飛ばされて行く白銀の騎士団。そして、そこに現れたるは、騎士団長のノエルだった。


 ノ「おいたはそこまでだ。覚悟しろ。」


 ノエルはそう言うと、全力で棍棒メイスを振るう。マリンもこれに応じて、刀剣チャッカルで、無造作に切り付けて行く。


 ガキン、ギャリン


衝突する棍棒メイス刀剣チャッカル。互いに鍔迫り合いながら、違いに別のタイミングを見計らっている。


 マリンは船の用意、大砲の用意。ノエルは大空警察の到着。互い違いの思惑を跳ね除けるが如く、あっという間に大砲の用意が整った。


 一味「船長〜。」


 マリンを呼ぶ声が聞こえる。


 マリンは、思いっきりケツからノエルを押すと、下半身の力が勝ったマリンは倒れ伏すノエルに剣を突き付け、こう言い放った。


マリン「今日の所は見逃してやる。だがな、次会った時には、どうなるか分からんぞ。」


 だが、事ここに至って、タフネスさで上回る白銀騎士団の大砲が再稼働した。

 

 大砲と大砲。浜辺に大きな跡を付けて、戦争をする両者共に、掲げる正義の為に、一歩も譲らない。


 其の戦争は一夜明けて、マリンの船を撤退させる事に成功した。と言うより、海賊が浜辺を離れ、沖に。盗賊としての粋をこれから行うーそんな悪い予感が走る悪い終わり方だった。

 

 宝鍾の一味は、肩に傷を負った船長の怪我を治す為に、其の海岸を後にした。


 ある程度は、奪ったポーションで何とかなるが、その矢には、内側から人体を焼く特殊な紋様が描かれていたのだ。

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