37.Philosophy
縦んば 私の思考が曲論に侵されているのだとしても
「それは断片的にであろう」と結論を出したいものだ
しかしながら 私の誕生以来 示唆されてはいただろう答は
関係を持たない様に 言い換えれば 遠ざけようとして
没我の意識が芽生え始めた頃 容易に自らの気管に押し込めた一つの仮説を
人体構造への反発か 反射的にとは言えど無理に吐き出した血塊と
夥しい量の思想の惹起が この球体内に蔓延し始め
その原因であると言っても良い私自身までもが 遍く
合理的概念の隷属化に瀕している 専ら 古人の伝えんとする「恍惚」が
この種の現状を表していると言うならば なるほど頷けもしよう だからと言って
つい今し方 私の体内に残存していたものが 蛮勇を振るって
声帯に依存したいと 渇望し得なくもない今しは
平時の消化活動が 意念の下に再開されてしまい それはご存じの通り
私の取る行動全てが欺瞞に満ちているからだと 私はそう思っている
無邪気に正義を振り翳した 小さな独裁者
そう言うと 幼かったあの頃の私を思い出す
結局 賢者にも 大愚にもなれなかった私は
本当は 嬌艶な人物に憧れていたのだけれど
何時からか その二つの者のどちらかにならなければと 焦燥し 奔走した
その挙句 孤独な裁定者の道を歩み始めた私は
賢くもあり 愚かでもある私の影法師と 深く 長く対立するようになり
その実 同じ様な正義を高高と掲げてみては
「不滅こそその頂なり」と 無恥のそれとしか思えない哮りで 自らを誇示する
さりとて これが大愚のあるべき姿かと申せば それは違う
甲斐甲斐しくも 不安定に悩まされた意思無能力者に対しては
誰であっても 悪徳者でしかいられないのだし
真の「正義」を探し続ける私でさえ それを裁く事は決して許されないと
何を隠し損ねたのか 私と 私の持ち得る「正義」を真剣で貫いてくれる者は
いつか対立した あの影法師一人きりだったのかも知れないのに
もう 彼が一体どの独裁者の下に付いたのか 又 その者の「正義」が
皆の考え得るそれ自体であるかも知れない事を 私は永久に知れない
絶えず「愛」などと言うものを信じている者が この何にもない私を
ああ 本に何もないと言うのに この私を愛せるのだろうか
「誠に申し訳ない」と言うだけでは許されはしないだろう
誰かに愛してもらおうと考え 求めるだけなら未だしも
「愛」と言うその言葉を口にしては 本当にいけなかった
でも 形のある人に この身のない それでも 醜悪としか言い様のない私を
一度でも愛していただけるのなら 喜んでその人の「愛」に従い
何処までも付いて行きましょう 遥かなる地に果てがあると知った今
汚れた手で指差すのは 未だ見え得ない未来なのです
あなたにも見えるでしょうか それならば 共に朽ちてくれますか
「でも その前に私を包んで欲しい」 もし そう言ってもよいのなら
あなたのその形に ない身を置く事を先ず以て承諾していただきたい
そして 何もかも理解できた暁には あなたのこの口で
「愛」 その言葉を呟くだろう
これらの勝手過ぎる私の言動の数数に
その人が怒りと憤りを感じ それで傷付ける事ができれば
私は「愛」と言うものを 本当に信じる事のできる身になれる ああ その筈なのに…
似て非なるもののもう一つを「善」だとし 初めの一つはさて何か?
多くの人が口にする かの有名な「偽善」などが 例えば「人」の前に付いたとして
「不愉快極まりない」と公言される度
「私には面白可笑しく聴こえてなりません」と吹聴す
すると何故だか理由を聞かれ 不思議に思われたけれども
それはとても笑える事と思われて 詰まりながらも答を申す
「偽善者は皆 正直者でしかありゃしない」 さらに私は言葉を続け
「――偽っているのは その「多く」ではないか?」などと言っても物足りず
「どうして 皆 かの者たちに嘘を吐くのです?」と まだ笑っているのはこの私
似て非なるもののもう一つを「善」だとし 初めの一つはさて何か?
別れの果てに 友情と知るこの悲哀
名など申すこともなく また 尋ねることもしないその二人
「友情」と「律」とを両儀的に扱おうとしてもそれは誤謬
全てが二人の肉体を引き千切らんと襲い懸る今
そして 今が「今」であることなど もう 意味を成さなくなった今
あの「律」に包み込まれて行った一人を遠くに観た私は 独り
名を聞こう 私も言うから …(無音)
何か失っても 何も止まないことを感覚しなければならないこの感覚器官
もっと 黒い人生を謳歌したかったと私の喉笛
「友情」の名の下に両の手を合わせ そうして満たそうとする自己満足
不愉快極まりなくとも 私の事を改めて知っても 再会の喜びなど有りはしない無情
私には降り懸らないのか?「律」…(轟)
剥がれかかっている世界の法則と非合理
旗はためき陣が吹く 二人の為 誰の為
剥がれ落ちた世界の法則と非合理
新たなる陣があの「友情」に吹き荒み もう一度 私の中に灯った「友情」と「律」
全てが私一人の精神を引き離さんと襲い懸る今
最期 死人となるか 生者となるかを決めるのは 徒らに此れきり
願わくは 終わりなき友情を …(心音・第1音 合せ 第2音)
「詩集 永劫」(2008~2009) 舞原 帝 @kotobauri
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