純情記

T村

第1話

 何度目だろうか、自分という人間がこれほどまでに情緒が安定しないのは。2回の転職を経て、現在勤めている会社ももうすぐ半年ほどになる。そこは言ってしまえば昭和体質の会社で最後は気合や本人の努力などの精神論を掲げている。令和のこの時代に置き去りにされた企業だと感じている。

 昔付き合っている彼女がいた。彼女と同棲を始めるために転職を通じて東京へ越してきた。しかし、前々から彼女に対して思っていたことを打ち明けたら彼女はいなくなった、いや僕が彼女を唯の知り合いの女に格下げした。転職の目的は気が付いたら失われており、男女の恋愛をよく知る友達からは、初恋は性欲に化けがちなんだと諭されてどこか納得している自分がいた。

 昔に戻れるなら戻りたい。昔好きだった女の子との関係性をやり直したり、もっと長期的な関わりを持てる友人を再構築したり、後悔ばかりである。言っても叶わないことばかりが脳内を支配する。

 資格の勉強を始めた、会社の意向による資格勉強は最初は分からないことだらけで苦痛だった。しかし、参考書を読み進めていくと一部日々こなしている業務と被る内容が出てきて、その瞬間だけは少し気分が良かった。参考書をざっくりと1周読み終えた。気付けば最初は苦痛だった資格勉強もそこまで苦痛を感じず、連日仕事終わりに図書館に通い資格勉強をしている自分がどこか好きで気持ち悪かった。

 次に会う女は上手くいくのだろうか、次に書く小説は面白い作品だろうか、いつかはこんな自分を好きで終われるのだろうか。何度考えても答えは分からないし、出していないような気もする。ひとまずタバコを吸って、自分を落ち着かせる。タバコを吸っている時だけは無心になれる。タバコだけは自分の味方であり続けてくれるのかもしれない。

 

 でも本当の意味で自分の人生を忌み嫌ったことはきっと一度もない。

 

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純情記 T村 @poison116

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