ピンチの魔法少女たちを怪人から助けていたらいつの間にかヤンデレハーレムになっていた件
taki
第1話
ウゥウウウウウウウ!!!!
『怪人警報!怪人警報!怪人が出現しました!!!付近の住人は退避してください。繰り返します!!怪人が出現しました!急いで避難してください!!!』
駅前の広場に突如として警報が響き渡った。
怪人出現を警告するアナウンスが爆音で周囲に流れ、人でごった返していた駅前の噴水広場が大混乱に陥る。
「きゃああああああああ」
「怪人が出たぞぉおおおおお」
「逃げろ!!逃げろぉおおおおおお」
人々は悲鳴をあげて逃げ惑う。
『クハハハハ!!刮目せよ!!!怪人ベノム様の登場だ!!人間ども、覚悟するがいい!!この街を破壊して全ての住人を血祭りにあげてくれるわ!!!!』
頭上から低くしゃがれていて不快な声が辺りに響きわたる。
逃げ惑う人々の頭上に、紫色の怪物が浮かんでいた。
邪悪なオーラを常に発散しているその怪物は、怪人と呼ばれている。
怪人は等しく人類の敵であり倒さなければならない害悪だ。
だが、怪人はさまざまな超能力を持っているため、普通の人間や通常の兵器では倒せない。
唯一の彼らへの対抗手段はただ一つ。
「あれをみて!!」
「魔法少女よ!!」
誰かが叫んだ。
遠くの空から怪人へと向かって猛スピードで飛行物体が接近する。
『早速きたか…!魔法少女どもめ…!!』
怪人が空を飛んで飛来した二つの飛行物体に構えをとる。
飛行物体の正体は、カラフルな衣装をみにまとった少女だった。
彼女たちは魔法少女と呼ばれている存在だ。
魔法少女はその名の通り魔法を使える少女のことであり、彼女たちこそが怪人に対する人類の持ち得る唯一の対抗手段。
科学では説明のつかない魔法という手段を駆使して、怪人と戦い人々の暮らしを守る。
そう、魔法少女は正義の味方なのだ。
「覚悟しなさい怪人ベノム!!」
「私たちが来た以上、あなたの好きにはさせないわ!!」
「「「わぁああああああ!!!」」」
「「「頑張れ魔法少女!!!」」」
歓声が上がる。
人々は自らのために戦う救世主の登場に、希望をその目に宿し、拍手を送る。
『クハハハハ!!お前たちが来ることはわかっていた!!だが、この怪人ベノムを今までの雑魚怪人と一緒にしてもらっては困るな…!!私は魔法少女にも対抗できる怪人として“あの方”により作られたのだ!!』
「あの方…?それは誰のこと?」
「黒幕がいるようね。あなたを捉えたら、あなたを作り出した存在についていろいろ聞かせてもらうわ」
『それは不可能だ!なぜならお前らはここで死ぬからだ!!』
「「…!」」
魔法少女と怪人の戦いが始まった。
超能力と魔法による凄まじい戦いだ。
轟音、地鳴り、爆発。
破壊が周囲を支配した。
魔法少女も怪人も、周囲の建物や器物にお構いなしに、やりたい放題に戦っている。
すでにほとんどの人が避難しているので幸いなことに人的被害はないが、被害総額はとんでもないことになるだろう。
だが超法規的存在である魔法少女が器物損害罪などで訴えられることはない。
彼女たちには、地球を守るという使命の代わりに、一般人とは異なった地位と待遇が国家より与えられている。
『ハハハハハ!!魔法少女よ!!貴様らの力はその程度か!!大したことがないな!!』
「くっ…こいつ、強い…」
「今までのやつとは違う…!」
怪人と魔法少女の戦いは佳境に入っていた。
推されているのは魔法少女の方だった。
怪人ベノムはこれまで出現した怪人とは一線を画する強さを有しているようだった。
魔法少女は二人がかりで破壊力のある魔法を駆使して必死に戦っているが、明らかに押されていた。
『捕まえたぞ!!魔法少女!!』
「きゃっ!?」
「千代!?」
そしてついに魔法少女に絶体絶命のピンチが訪れた。
魔法少女たちの背後に瞬間移動した怪人ベノムが、魔法少女の首を掴んで持ち上げた。
魔法少女の一人が苦しげにうめき、もう一人が悲鳴のような声をあげる。
『動くんじゃないぞ、魔法少女よ!お友達がどうなってもいいのか?』
「くっ…」
怪人が下卑た笑みを浮かべる。
魔法少女は、仲間を人質に取られて悔しげな表情を浮かべる。
『少しでも動いたらこいつを殺すぞ…!』
「やめなさい…お願い、動かないから…」
魔法少女の顔が悲痛に歪み、動きを止めてしまう。
『ククク…そうだ。それでいい。動くなよ…』
怪人は人質をとって二人の魔法少女の動きを封じてしまうと、攻撃の準備をし始めた。
邪悪なエネルギーが怪人の手の中に集まる。
それは魔法少女を二人まとめて吹き飛ばすための攻撃なのだろう。
魔法少女は、人質を取られて動くこともできずに、ただ怪人ベノムの攻撃準備が終わるのを眺めていることしかできない。
「美柑…私のことはいいから…こいつを殺して…」
「だめだよ千代…そしたらあなたが…」
「いいから……このままじゃ…共倒れだよ…」
「…っ」
人質に取られた魔法少女が自らの命を顧みずに、仲間に攻撃を要求する。
だが美柑と呼ばれた魔法少女は、狼狽しており、仲間を見捨ててまで攻撃する覚悟が決められないようだった。
そうこうしているうちに怪人ベノムの攻撃準備が整ってしまう。
『さあ、魔法少女よ!もう終わりだ!!二人まとめて殺してくれる!!』
怪人ベノムが攻撃動作に入った。
魔法少女は助けを求めるように周囲を見渡す。
だが、すでに人々は避難してしまっており辺りには誰もいない。
「もうだめっ…」
全てを諦めたかのように魔法少女が目を瞑った。
『死ねぇええええええええええ!!!』
怪人オロチが邪悪なエネルギーを纏った光線を放った。
「美柑!逃げてぇええええええええ」
魔法少女の悲鳴が響き渡る。
次の瞬間…
バァアアアアアアアアアアン!!!
「え…?」
『なんだと…!?』
凄まじい衝突音が鳴り響いた。
絶体絶命だった魔法少女の前に突如として光の壁が出現したのだ。
光の壁は、魔法少女を守るように展開され、怪人ベノムの放った邪悪な光線を全て跳ね返してしまった。
『アバァアアアアアアアアアアアアアア!?!?』
跳ね返った光線が自分に当たってしまい、怪人ベノムは悲鳴をあげる。
そのまま怪人ベノムは自らの攻撃の威力に耐えられず、塵となって消えてしまった。
「う…助かったわ…」
「一体誰が…」
二人の魔法少女は、自分たちを守った人間を探すべく辺りを見渡す。
「あれ…!」
「え、どういうこと…!?」
彼女たちの目に、現場から逃げるように走っていく人物の姿が見えた。
周囲にその人物以外に人の気配はなかった。
つまりその人物が、自分たちを怪人から守ってくれた張本人なのだ。
「さっきの魔法はあの人が…」
「あの人も魔法少女なの…?」
「でも…こんなことって…」
「嘘でしょ…」
魔法少女たちは互いの顔を見て困惑した表情を浮かべる。
この世界において魔法を使えるのは魔法少女のみだ。
つまり先ほどの人物もまた魔法少女の一員なのだろう。
…けれど二人が目にしたその人物は、どこからどう見ても“少女”ではなく“男”に見えたのだった。
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