創世のベイン・トレヴァー
みさと
4光年の宇宙
00.漂う意識、宇宙船
ルファルト・アムテルは、金属製の棺桶に手を置き、最後の別れをしていた。
中に入っているのは、唯一の肉親にして、最愛の妹。
そして、大罪人である。
――お兄ちゃん
「うん?」
――お兄ちゃん
「ここにいるよ」
――私のこと
「うん」
――嫌いだった?
中で横たわる妹は、虚ろな目で兄を見つめていた。
ルファルトは、口を開くが、言葉が出てこなかった。
「時間です」
傍にいた船員がそう言うと、ルファルトはゆっくりと棺桶から離れた。
そして船員は、扉を締め、レバーを引き下げた。
小さな窓から事の一部始終が見える。
妹が入った棺桶は、暗い宇宙の海に放り出され、遠くに見えるブラックホールへ吸い込まれていく。
ゆっくりと、ゆっくりと、回転しながら棺桶は小さくなっていく。
これが、彼らの星における大罪人の処刑法である。
「それでは戻りましょう、ルファルト艦長。目的のビーコンまで4光年、これから長い旅路の始まりです」
「……ああ」
力なく答えるルファルトを気遣い、船員は言った。
「……大丈夫ですよ、誰も貴方を犯罪者の身内なんて責めたりしません。同情的です」
船員は先に部屋を出て行った。
ルファルトは再び小さな窓から外を見た。
際限なく広がる黒と、小さな点。
しかし、ルファルトが見ていたのはそれらではない。
薄っすらと窓に写った自分の顔を見ていた。
俺は、妹を送り出した時――
どんな顔をしていたのだろうか――
そのことが、頭の中からずっと離れなかった。
ずっと。
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