鳥籠の鍵は俺の中〜後宮に幽閉された少年Ωは絶対に俺の運命の番なので、どんな手段を使ってでも連れ出して番にしてみせる!〜
鳳 繰納(おおとり くろな)
壱:星眠る夜、輿とゴーストバイ
ミタマ国中央部、ツチノクニ領テビキ村。
「ん……?」
外から聞こえる足音でキンは目を覚ました。
「なんだよ、こんな夜更けにゾロゾロと……」
神秘文明が栄える北部アメノクニ領と機械文明が栄える南部ツチノクニ領の境目に位置するセキ山脈沿いのこの村は、しばしば亡命者の逃走ルートとして使われる。それだけなら構わないが、彼らはしばしば倉の蓄えを
「ヤロー、とっちめてやる」
足音を亡命者だと思い込んだキンは布団から抜け出し、
「やいやい、ここが誰の家だ、と……」
眼前に広がる光景に、キンは鍬を取り落とした。
「キレイだ……」
キンが松明で照らされた輿に見惚れていると、突如一陣の風が吹いた。
風にあおられて幕が
輿の中には、アメミカド式の装いに身を包んだ少年が座っていた。歳は十六そこらだろうか。
「あっ……」
オレンジ色の少年の瞳がキンを見つめる。
その瞬間、キンの世界に色がついた。あの少年こそが自分の運命だ。キンはそう確信した。
行列がゆっくりと遠ざかっていく。
「待って!」
キンが追いつこうと走るが、その距離は縮まらない。まるで
「ああ、くそっ」
このままでは
「頼むぞ、ユウガ」
キンが撫でたのは、エンジンに式神を組み込み動力とする
輿を連れた行列は険しい山道を軽々と下っていく。
(この
そんな事を考えながら、キンは深夜の山道をゴーストバイでひた走る。
無我夢中で走っていると、気づけば一行はツチノクニ領のミヤコを走っていた。
高層ビルの合間を通るスザク・ハイウェイ。普段は左右合わせて十車線を大量の
「なんだ?あの馬は」
ビル風に乗って話し声が聞こえてくる。松明を持った
「人払いは済んでいるのではなかったのか」
「どこぞの
「しかしあの馬、
「ううむ、ならば
同一の言語を話しているはずなのだが、どうもアメノクニ領の言葉はツチノクニ領の人間からすると古めかしい言い回しに聞こえる。
「
従者の一人が背中に背負った弓に手をかける。
(やべっ⁉︎)
キンが急ハンドルを切ろうとした寸前で、もう一人の従者が弓を持つ手を制止した。
「やめよ。セイ様のツチノミカドへの御渡りは公にはしておらぬ。ここで揉め事を起こすな」
(セイって……、さっきのあの子の事?)
キンの
(何者なんだろう、彼は)
輿はスザク・ハイウェイの終点、ミカドパレスへと向かっている。
(え、ミカドに会いにいくの?マジで?)
ミカドはツチノクニ領のトップ、いわば国王である。そのミカドを深夜に訪ねるとは、一体この一行は何者なのだろうか。
「ん?」
「なんだよ、急にっ」
自分の手元すら見えないほどの
「うっ⁉︎」
霧が次第に晴れてくると、ハイウェイのフェンスに一本黒い線が走っていた。車体がフェンスに接触したまま走り続けた結果車体は大きく
「ヤバい!」
キンはとっさにハンドルを離して運転席から飛び降りる。
次の瞬間、ゴーストバイは盛大に爆発した。
「うわーっ!」
爆風に煽られ路面に叩きつけられる。そのままキンは意識を失い、アスファルトに力無く項垂れた。
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